さよならのラブソング

さよならのラブソング - episode 7

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>> episode 6

後ろから女の子に話しかけられて不意を衝かれた僕はビクッとした。
「今日はちゃんと駅で降りるよ!学習した。」
やはり、あの女の子だった。
「学習?」
「電車って、駅で止まるんだね。知らなかったからこの間は自分のタイミングで移動したの。」
無邪気に言っているこの話が、何を言っているのか、おおよそ僕にはわからなかった。彼女は一体どこの住人なのか。

「でね、この人なんだけど、たいちゃんていうの。」
「ああ、未来から。」
「そうよ。」
「み、未来って?」

そういえば、未来ってどういうことだったのだろうか。彼女の住んでいる世界というのは、そもそも今の時代ではないのか。電車を知らない。いや、電車のない国の人かもしれない。
「ねえ、未来って?昨日話してた…。」
駅までの間、彼女との話の種にもそのことを訊いてみた。
「ああ、ダリアンのとこで話してたこと?それね…」
その瞬間、電車は駅に着いた。彼女は僕の手を引いて電車を降りた。すると、あたり一面が光に覆われた。

眩しくて身体が透明になってしまいそうだった。苦しいほどの光にふっと安らぎを感じた。遠くから歌が聞こえる。

…忘れないで。
…誇り高き時代があったことを。
…温かく優しい世界を。

蛍の光のようなメロディ。なんだか懐かしい響きの知らない言語。だけど、そんな意味を感じる。水の中に沈んでいく感覚とともに、全身を覆う鉛のようなものが剥がれて落ちていく。赤ちゃんよりも無防備になる。今攻撃を受ければひとたまりもない。なのに、どうしてだろう?何一つ怖くない。そこに希望すら感じる。

僕はやはり、死んでいたのかな。そう思った瞬間、スッと手を引かれた。
「ごーめんごめん!着いたよー!寝ちゃった?」
目を覚ますと、草原に横になっていた。サラがいつもの調子で僕に声をかけていた。

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