さよならのラブソング

さよならのラブソング - episode 6

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今日は会議が多い。参加者3〜4人程度の小さなものは僕が主体で行うものもあるし、それ以上の大きなものは出席するだけで議事録は後輩がとる。会議を開催したからって何が進捗するわけじゃない。マネジャー陣だったり、他部署の人々だったりが抵抗勢力になって判を押したように「反対意見」という名の心配事をモゴモゴつぶやいて時間切れ。僕の同僚たちはこれにウンザリしている。僕の上司も、たまにランチや飲み会で愚痴をこぼしてしまう。

トイレの壁には「そのミーティング!必要ですか?生産性を上げましょう!」なんてスローガンのポスターが貼ってある。生産性って一体何なんだ。誰がそれで幸せになるのだろう。

「思い通りにいかないもんだな。」
根本が席に戻ってきた。僕に愚痴を言いたそうにチラリとこちらを見ている。無視しようかと思ったが、今手を動かす気にもなれなかったので
「何が?」
と声をかけた。

いつもの、愚痴。まるで見えない力に押しつぶされているかのように、何も前に進まない。こんなプロジェクト、協力し合えばすぐに終わるはずなのに、当初の計画を半年もオーバーしている。それはおろか、さらに半年延長するための交渉も始まっている。根本はその交渉の資料作成を手伝っている。

あっという間に日は暮れて、同僚たちがパラパラと帰り始める。僕も区切りをつけて会社を後にした。

電車の中で中吊りをボーッと眺めながらつり革につかまっていた。電車は昨日の橋の上を走っている。今日は、女の子は来ない。いや、そもそも昨日は夢を見ていたはずなんだ。

そのとき。僕のスマホにメッセージが届いた。すぐに確認すると、あのメッセージ。

忘れないで。
誇り高き時代があったことを。
温かく優しい世界を。

昨日のを開いているのだと思って着信時間を確認すると、今この時間。僕はドギマギしながら一応周りを確認した。彼女がもしかしたら近くにいるかもしれない、と思ったからだ。
そのとき、もう1通のメッセージが届いた。

今の世界でつなぐよ。
結びだよ。
さよならは終わりだよ。
この話、まだしてなかったね。

全く意味がわからない。僕はきっと疲れている。疲れ切っているんだ、毎日に。無視してスマホをしまおうとした。その時。

「ちゃーおー!」

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