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マリンバの響き


最近同じオフィスで働いているひとと、学生時代にどう過ごしたかという話を少しして、彼がアメリカの大学で音楽を勉強していたことを知った。
専門はパーカッションだったという。
朴訥な感じの控えめな彼で、とてもそんなイメージじゃないと言ったら失礼なのかもしれないが、そのギャップがかえってわたしには素敵に思えた。

マリンバなんて、すごく楽しいですよ。

と微笑んだあと、でも今はなんの役にもたってませんけどね。と微笑みをくずさず、少しつぶやくように言った。

そんなことない。
たとえプロのミュージシャンにならなくても、日常的に演奏ができなくても、一所懸命に練習したときの、セッションしたときの、みんなの前でライブしたときのその音は身体の中に残っている。いつまでも。

なにをするときも、その音は彼の身体の中にある。
これは音楽に限った話ではないが、そういうことが、人生を彩り豊かなものにしているのではないかと思う。


眠りに落ちながら、わたしの中でピアノの音色が鳴っていることがある。
自分で弾いているときのものか、それとも誰かの演奏が聞こえているのかわからない。
でも懐かしい音。

ひとりで暮らす彼。
たとえば、ワンプレートの簡素な夕餉を食べながら、ベランダの向こうの夕焼けを見て、彼の中にもマリンバの弾む音が響いているかもしれない。



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