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『おせんべいくんとぷりんちゃん』

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すべてを破壊し、再生へと導くための、方舟。とにかく生と死、はいはい、生と死ゆうときゃいいんでしょ。
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2015年1月の記事一覧

『おせんべいくんとぷりんちゃん』5話

『おせんべいくんとぷりんちゃん』5話

5話

おせんべいくんは、ある日、園での運動会の片付けのとき、倉庫に用具をしまおうと、倉庫の扉を開けました。

片付け時間が押していたので、おせんべいくんは、焦っていました。

すると、そこに、運動場に白線を引くために使用する、石灰がびっしりついたスコップを持った年長組の男の子が立っており、勢いよく倉庫に入ろうとしたおせんべいくんと、衝突してしまいました。

その時、年長組の男の子がも

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『おせんべいくんとぷりんちゃん』四話

『おせんべいくんとぷりんちゃん』四話

四話

おせんべいくんは、幼稚園のころ、プールの時間が苦手でした。

母親が、お風呂を嫌がるおせんべいくんを、無理やりお風呂に入れようと、顔から力任せに、湯船につけさせたり、熱湯のシャワーを泣き叫ぶおせんべいくんの身体に、かけたりしていたからです。

その時の母親の顔は、悪鬼のように歪んでおり、おせんべいくんのことが、憎くて憎くて仕方ない、というような表情をしていました。

また、おせ

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『おせんべいくんとぷりんちゃん』3話

『おせんべいくんとぷりんちゃん』3話

3話

ある夜、おせんべいくんは、テスト勉強をしていました。

一人で、部屋にこもって、ひたすら、勉強に打ち込んでいると、いやなことをなにもかも忘れることができました。

学校のクラスメートのこと、先生のこと、両親のこと、自分を追い詰める人間たちのことを、頭から切り離せるということは、なんて素晴らしいんだ、と、おせんべいくんは思いました。

歴史、古文、英語、数学、どれも魅力的で、暗記

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『おせんべいくんとぷりんちゃん』2話

『おせんべいくんとぷりんちゃん』2話

二話

おせんべいくんは思いました。

じぶんとたにんは、どこかが決定的に違うのかもしれない。

なにか致命的な、人として、一番だいじななにかが、ごっそりと、ケツラクしているのかもしれない。

だから、じぶんは、まわりとうまく馴染めないのかもしれない、と。

それをたしかめるために、おせんべいくんは、同じ園の友達と一緒に砂山を作っているときに、わざとに、砂山を手で崩してみました。

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『おせんべいくんとぷりんちゃん』

『おせんべいくんとぷりんちゃん』

『おせんべいくんとぷりんちゃん』 一話

昔々、あるところに、おせんべいくんとぷりんちゃんという男の子と女の子がいました。

おせんべいくんは小さい頃から、ひとと接するのが苦手で、うまく他人と喋ったり、遊んだりすることができず、幼稚園や学校でも、みんなの輪の中に入れず、ひとといると、ひどく消耗し、つかれてしまいました。

ぷりんちゃんは、反対に、誰とでも簡単に打ち解け、すぐに仲良くなれる

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