きっかけ 1

きっかけは親友の死。新しい年号に変わった初めの年の秋、彼のLINEを使って御家族から連絡が来た。よく突然嘘を言う人だったので初めは気が病んでいてタチの悪い冗談でも送ってきたのだろうと思った。しかし、続けざまに通夜、葬儀の具体的な日時と場所が送られてきた。その瞬間、心臓と呼吸が早くなり目の前が霞がかって見えた。保育園の迎え帰りで抱いていた子供を支えきれなくなり「ちょっとごめん…」と地面に降ろした。子供は僕の状況なんて察することができるはずもなくふざけて走り回るが、車が通るかもしれない道で「今は…ごめん。」と抱き直し、なんとか家にたどり着いて子供をテレビの前に座らせて夕方の子供番組をつけて見せた。僕は少し離れたところに座り込み何度もLINEの知らせを読み返した。手が震え、呼吸がうまくできず、頭に血が回っていない感覚だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?