🟨 日本人の9割が知らないタイ飯① 〜なんで油っこくなった⁇〜🟨

2024年6月11日 23:07

驚きの事実！ガパオライスはタイ料理じゃなかった⁉️

屋台メシを食べ歩いてると麺類に限らずやたらと中国由来のメニューが多いことに気がつく｡どれがタイ料理でどれが中国料理か線引きが難しい｡個人的に大好きな麺系のバミーやクイティアオ｡ご飯系だとカオカームー､カオマンガイ､カオモックガイ｡カオモックガイはインドのビリヤニっぽいけど､それ以外はどう考えても中国から来てそう｡

タイ料理の基本６つの調理法

じゃあ中国由来じゃなくてタイのオリジナルメニューってなにがあるんだろう｡こんなことを思いながらYouTubeを見てたら､目からウロコな動画を発見｡

毎回更新を楽しみにしてるYouTubeチャンネルのOTR Food & History｡内容はタイを中心とした東南アジアの料理とその歴史に焦点を当てたもの｡このチャンネルでちょっと前に料理研究家のMcDangさんが出演してた｡その中で氏が言うには現在のタイ料理の調理法は大きくわけて6つ…

①炒める STIR FRY (PAD ผัด)
②煮る STEW (TOON ต้ม)
③蒸す STEAM (NEUNG นึ่ง)
④揚げる DEEP FRY (TOD ทอด)
⑤焼く GRILL (YANG ย่าง)
⑥和える SALAD OR TOSS (YUM ยำ)

このうち①④の調理法は250年くらい前のアユタヤ時代以降に伝わった中国料理由来らしい｡つまりいまあるタイ料理メニューの中から炒め物､揚げ物を除いたメニューが｢本来のタイ料理｣ってことらしい｡

英語版のWikipediaのタイ料理のページを見ると①④以外に③の蒸し物も中国由来の調理法って書かれてたりする｡蒸し物といえばバチャーン(タイ風チマキ)やカノムチープ(シュウマイ)を思い浮かべるけどこの辺はどう見ても中国料理だ｡

つまりアユタヤ時代より昔のタイ料理メニューには炒め物がなかった｡ってことは日本人観光客が大好きなパッタイはもちろんカオパットなどなど､伝統的なタイ料理から弾かれるメニューはいっぱい出てくるはず｡屋台飯に限って言っても半分くらいになってしまうかも｡

こう考えると中国由来の調理法が不要なメニューが土着の｢ルーツ系タイ料理=ジャングルフード｣､炒めるとか揚げると言ったメニューを｢中国系タイ料理｣って分けることができるかも｡

日本国内で異常な大人気の｢ガパオライス｣｡これはタイの国民食パッガパオに由来するメニューだけど､本家のタイでは想像できないタイ人もビックリのガパオなし､ピーマン入り､タマネギ入りなど変態メニューが溢れてる｡
これだって当然炒め物だからアユタヤ時代以前には存在しなかったはず｡たぶん｡

ついでに言えば､揚げるって調理法も元々タイにはなかったわけだからガイトートやトートマンクンみたいな揚げ物も伝統的なというか､アユタヤ時代以前のタイにはなかったってことになる｡

中国と日本もそうだった⁉️

油を使った｢炒める｣｢揚げる｣という2種類の調理法がそれ以外の調理法より後に始まったってことは､中国についても同じようだったらしく文化人類学者の西澤治彦さんが以下のように書いてる｡

漢代の穀物の調理方は、土器製の釜と甑の組み合わせにより、蒸すというのが一般的であった。その後、南北朝時代になって鉄鍋が使用され初め、直火炊きへと移行する。その後、唐宋代になると、さらなる鉄器の普及と竈の改良により、中華鍋が使用されはじめ、それまでの糞など煮物中心の料理から、今日の炒め物、揚げ物中心の料理へと移行していった。

｢食事文化史からみた中国の南北｣

日本でも同様｡揚げ物など油を使う調理方は奈良時代の精進料理が始まり｡その後安土桃山時代に天ぷらなどの油を使う料理が南蛮料理として流通するようになった｡この油を使った調理法が庶民に普及するのは明治時代中期になてからだったと言われてる｡

歴史的に見れば、日本固有の料理法は、油などの脂肪分をあまり用いず、淡白な味を基調としたものだった。油が日本人の食生活に溶け込んだのは、室町時代の後期から安土桃山時代にかけてである。その後江戸時代には中華料理の影響を受けて油が盛んに用いられるようになるが、一般の庶民にまで深く浸透したとはいえない。

日本人と食用油：油料理の歴史

脂肪分をあまり使わない淡白な味が日本固有だったというのは現在のいわゆる｢和食｣を見れば想像はつくけど､やたらと油を使うタイ料理のイメージから油(食用油)を使わないメニューってなんだろうって思うけど｡

そうじゃないタイ料理って⁉️

アユタヤ時代より前からあったタイ料理ってなんだろう｡中国由来の調理法の影響をあまり受けてないと思われるイサーン料理なんかにその面影を残してるかもしれない｡ガイヤーン､ソムタム､ラープ｡確かに中国料理っぽさはゼロ｡

あとはこれもイサーン名物のチムチュム鍋は中国料理の影響はほぼなさそう｡土鍋を使って炒め物や揚げ物なんてかなり無理がある｡アユタヤ時代以前はタイ人の食卓こんなんだったんだろうか｡こうやってみると脂質制限ダイエットしてる人にはいいかも｡塩分は強そうだけど｡

隠れたタイ人のソウルフードナムプリックプラトゥーもネイティブなタイ料理の雰囲気が漂う｡もともとタイ中部発祥のメニューだけど今ではタイ全土で食べられる｡焼きサバと生野菜そしてソムタムに使うクロック(すり鉢)とサーク(すりこぎ)があれば簡単にできるメニュー｡

唐辛子やサバを炙る炭火程度の火力があればじゅうぶん成り立つ料理｡炒め物や揚げ物ほどの強力な火力なんか不用｡もちろんレシピに油なんか入ってこない｡

しかしこのタイ全土で愛されてるナムプリックって世界的にほぼ知名度がない｡タイ料理の原点かもしれないメニューなのにタイ料理を紹介する時に挙がることってまずない｡タイ人の間では超メジャーなのに世界的にはマイナーという悲劇のメニューかも｡

油料理といっしょに伝わったWOK

さっき登場したMcDangさんが炒め物や揚げ物といっしょに中国人がタイに持ち込んだと言及してる調理器具がWOK｡日本語でいう中華鍋｡タイ人の中にはこれがタイオリジナルの調理器具だと思ってる人もいるらしいけど当然中国由来｡

WOKはとても便利な調理器具｡揚げ物も炒め物もこのWOKひとつでOK｡土鍋のように落として割れることもない｡さらにWOKの上に蒸籠を置けば蒸し物も賄えるという優れもの｡当然パッタイ、カオパットやパッガパオ(ガパオライス)が置いてあるタイ飯屋には必須アイテム。

WOKがタイ料理の歴史に革命を起こしたことは間違いないはず｡でもこの革命はタイ料理が大きく中国化したこと｡現在のように油っこいメニューがタイ料理の主流になったキッカケ｡

油はどっからやってきた？

炎の料理と呼ばれる中国料理にとってWOKと同様に必須アイテムは大量の油と強力な火力｡これってさっき紹介したイサーン料理やナムプリックにはあまり必要じゃない要素｡その油と火力はどうしたのかってことも気になる｡特に油ってどっからやって来たんだろう｡

日本の食用油については元々ごま油を使ってたが､ナタネ油を大量生産できるようになり庶民にも食用油が普及していったと言われてる｡

油そのものは無論古代からあった。だがそれは主に灯火用として使われたのである。王朝や貴族の邸宅、社寺の灯明に油を燃やすことは奈良時代以前から行われ、それに必要な油を、ゴマを搾って得ていた。古代においては、油は生産量が限られ、貴重なものだったようだ。

(中略)

江戸時代に入ると、「しめぎ」という道具を用いて、アブラナから菜種油を採取する方法が広まる。それに伴い油の生産量も飛躍的に増えたとされる。需要の殆どは依然灯火用であった。

江戸時代には、長崎を通じて中国風料理が広がり、油を用いた料理が庶民にも普及した。また天麩羅もよく食われるようになったが、やはり日本の食卓にあっては脇役の地位に甘んじていたのである。

日本人と食用油：油料理の歴史

じゃあ､タイの食用油ってどういう経緯で普及していったんだろう｡なんの油使ってたの⁇どうやって油を作ってたの⁇この辺りのことが調べてもなかなか出てこない｡スコータイ時代からアユタヤ時代にかけてどんな変化があったのか｡

残念ながらこのポイントについてはそれっぽい情報がなかったので追々調べていこうってことで｡

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