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【絵本レビュー】 『すてきな三にんぐみ』

作者/絵:トミー・アンゲラー
訳:いまえよしとも
出版社:偕成社
発行日:1969年12月

『すてきな三にんぐみ』のあらすじ:


黒いマントに黒い帽子の、こわーいどろぼう三人組。ある夜、馬車を襲ったら、みなしごのティファニーちゃんだけが乗っていました。なんとティファニーちゃんは、誰もが恐れる三人組と一緒に隠れ家に行って…。

『すてきな三にんぐみ』を読んだ感想:

この不気味感のある表紙の絵と題名の「すてきな」に興味を惹かれ手にしました。原題は『The Three Robbers』、三にんのどろぼうなので「すてき」と訳した翻訳者の今江さんに拍手です。

さてその内容ですが、イラストに負けないぐらいシュールです。息子を見ている限り怖いという印象はないようですが、どろぼうなので人を襲って金銀財宝を奪いますよね。しかもティファニーちゃんを連れて行ってしまうのは、もしや誘拐?でも誰も探しにも来ないし。でもティファニーちゃんはこのすてきなおじさんたちによくされているし。一体このおじさんたちは悪者なのかヒーローなのか。

でもね、善悪ってなんなのでしょう。誰が一体決めるのでしょう。ある日、電車で我先に乗ってきたおばさんは、さっさと座った後横にどかっとバッグを置きました。電車はそれなりに混んでるし、後から来た人は座りたそうだけどおばさんは知らん顔。「図々しいおばさん」という言葉が一瞬頭をよぎった途端、少し歩きづらそうにゆっくりと女の人がやって来ました。先のおばさんは「○○さん!」と女性に手招きをし、バッグをどけて座らせてあげました。そう、「図々しい」おばさんは足の不自由なお友達のために我先に電車に滑り込み、席を確保してあげたのです。

押しのけて入るのは良くない。確かに良くない。混んでいるのにバッグで場所取りをしたのもよくないかもしれない。でもこのおばさんは悪い人なのか。そう言われると私には悪いと断言できかねます。

こういう状況ってありますよね。泥棒を正当化するつもりはないけれど、一体何のためにしているのかという目的も大切な気がします。私たちも同じですよね。毎日ストレスをためて一生懸命働いているけれど、ふと気がつくとなんのために働いていたのか忘れてしまっています。誰かに質問されて、ふっと我に帰ることありますね。

このすてきな三人に色々考えさせられてしまいました。皆さんはなんのために仕事をしていますか。


『すてきな三にんぐみ』の作者紹介:

トミー・アンゲラー(Tomi Ungerer)
1931年フランスのストラスブール生まれ。1956年にアメリカに移住し、画家・漫画家・絵本作家や広告美術など幅広く活躍。ヘラルド・トリビューン賞、国際アンデルセン賞画家賞等を受賞。主な絵本に、『すてきな三にんぐみ』(偕成社)、『ぺちゃんこスタンレー』(あすなろ書房)、『へびのクリクター』(文化出版局)、『ゼラルダと人喰い鬼』(評論社)などがある。


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