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【絵本レビュー】 『わたしはあなたをあいしています』

作者/絵:宮西達也
出版社:ポプラ社
発行日:2007年6月

『わたしはあなたをあいしています』のあらすじ:

むかし むかし、おおむかし。きょうりゅうたちは せかいじゅうにすんでいました。
はるか とおくまで やってきたティラノサウルスが であったのは、ことばの つうじない さんびきのホマロケファレでした・・・・・・。

『わたしはあなたをあいしています』を読んだ感想:

このティラノサウルスシリーズが息子のお気に入りになってしまい、このところ次から次へと(ありがたく)読まされています。色々な恐竜が出てきますが、初めて聞く名前も多く、おまけにどれも舌を噛みそうです。うちの母も(やはりありがたく)読まされていますが、「ティ」の発音ができないのでいつも「テラノサウルス」。だから息子も今では「テラノサウルス」になってしまいました。

最近は世界がグローバル化していて、色々な国の人が簡単に知り合えるようになりましたね。外国に住むようになってまず最初にするのは、語学学校に行くことかもしれません。それぞれが違う言葉を話す国から来ていて、唯一の共通語はその国の言葉。休み時間などにたどたどしく会話をして、なんとなく相手のことを知っていく過程が好きです。あまり上手く話せないけどなんとなく気持ちが通じ会う人もいて、人との繋がりって言葉だけじゃないんだなあと実感します。

スペインに移住した時、私はスペイン語がほとんど話せませんでした。到着して一ヶ月後に大学も始まるので、最初の一ヶ月は一日二回違う語学学校に通いましたが、話すのが苦手派な私の言語力はあまり上達しませんでした。しかも大学では、それまであまり触れなかったスペインの歴史を専攻し、話している人物が誰なのか全くわからないことも多かったです。課題で出される読み物の十分の一も終わらず、私はすでに落ち込んでいました。

そんな中、コロンビア人のクラスメイトが課題を手伝ってくれると申し出てくれて、彼の家にランチを兼ねて招待されました。彼とスペイン人の彼女さんは、私があまり話せないにもかかわらずとても温かく受け入れてくれました。彼が私のクラスでの様子を彼女さんに説明していることがわかり、二人はしきりに「すごい、すごい(スペイン語でしたが)」と褒めてくれました。結局その日は課題を何もしなかったような気がします。でも私はとても居心地よくそして楽しい午後を過ごすことができました。クラスが終わってからは会わなくなってしまったけれど、今もし会えたら、きちんとお礼をしたいなといつも思っています。

もう一人は、友人の親友のRです。全然スペイン語ができない私を車であちこち連れ回し、挙げ句の果てには夏の休暇にも連れて行ってくれました。目的地まで七時間のドライブ。スペイン人にしては口数が少ないとはいえ、やはり喋ります。マドリッドを出発した時は「あ〜」とか「へ〜」とか「それで?」くらいしか言えなかったのですが、七時間集中スペイン語講座の後、かなり相手の言うことがわかるようになっていました。

さらに連れて行かれたのは、スペインのガリシア地方。そこではガリシア語も多く話されていますから、スペイン語初心者の私にはまさにチンプンカンプンでした。それでも話し好きなおばあさんに、
「ガリシア語わかる?スペイン語と大して変わらないわよ。ガハハハハ」
と言われ、だいぶ違うような気がしますけど、と思いつつ引きつった笑みを浮かべる私なのでした。

私はRと十日間ガリシア中を車で走り回り、たくさんのバル(バー)でコーヒーを飲みました。諦めずに話しかけてくれたRとその時私を優しく受け入れてくれた人たちには感謝のしようもありません。十日経ってマドリッドに帰って来た時の私のスペイン語は、別の友達がびっくりするほど上達していたのです。

そのRとは今も友達です。その旅行の後も散歩に行ったり、ドライブに行ったりと、妹のように世話してくれました。今でも時々メッセージをし合って、「Cachito(ちっちゃいかけら)」と呼んでくれます。言葉よりも気持ちが大切なことを、身をもって体験しました。言葉では騙せるけど、気持ちでは騙せませんからね。

『わたしはあなたをあいしています』の作者紹介:

宮西達也
1956年静岡県生まれ。日本大学芸術学部美術学科卒業。「きょうはなんてうんがいいんだろう」(鈴木出版刊)で講談社出版文化賞絵本賞を受賞。「パパはウルトラセブン」(学研刊)などでけんぶち絵本の里大賞を受賞。「おとうさんはウルトラマン」(学研刊)などの作品がある。 「ティラノサウルス」シリーズ初の幼年童話!


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