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【絵本レビュー】 『きつねのおきゃくさま』

作者:あまんきみこ
絵:二俣英五郎
出版社:サンリード
発行日:1984年8月

『きつねのおきゃくさま』のあらすじ:


お腹のすいたキツネがやせたヒヨコを太らせて食べようとします。
ヒヨコは食べられるとも知らず、キツネのことを親切なお兄ちゃんと他のやせたアヒルとウサギにも教えていきます。
親切だなんて言われた事のないキツネはぼうっとしてうれしくなってしまいました。
4匹で仲良く暮らしていると、狼がヒヨコ達を食べにきますが勇敢にキツネが立ち向かいます。

『きつねのおきゃくさま』を読んだ感想:


読み聞かせのオススメにあったのであまり深く考えずに手に取ったのですが、最後の展開に読みながら喉が詰まりました。全く予期していなかったエンディングは、きつねはずるいやつと決めつけていた私の頭に大きな石が落ちて来たみたいな気持ちでした。最後の「とっぴんぱらりんの ぷう」に少し救われましたが、一人で読んでいたら多分泣いてしまっていたんじゃないかな。

きつねのプランはひよこやアヒルを太らせて食べてしまうこと。でも「やさしい」「しんせつ」「神様」なんて言われるたびにきつねはぼうっとなったりうっとりしたり、どんどん行動もそうなっていった。

そういえばどこかで水に関する研究を読んだことがある。一つの水には悪口を言って、もう一つには感謝の言葉をかける。そうするとその水を凍らせた結晶に大きな違いが出るというものでした。人は生まれながらにして善なのか悪なのか、は教育学でも古くから問われている問題なのですが、この絵本を読んでいると悪口や批判はなんの改善にもならない、という気がしてきます。動あれば反動あり、と言いますもんね。批判ばかりされればやさしい気持ちにはなりづらい。逆に本当はいじわるするつもりでも褒められてしまったら、いじわるもしづらくなるということですか。

ああ、だからうちの反抗期息子もうちの母親とうまくやれるんだ。うちの母親はまさに褒め倒す。息子もいっときは機嫌を損ねても、母の褒め倒しにメロメロでさっさと落ち着く。そういえば、私の書道の先生もそうでした。「ああ、ここいいね!」「こりゃあ大したもんだ!」いつだっていいところから始めました。私はすっかりおだて上げられていますから、そのあと修正しなくちゃいけないところだって、気分良くさっさと仕上げたものです。信じてもらえている気がしたんでしょう。信じてくれる人がいると、私たちは強くなれるのかもしれないですね。


『きつねのおきゃくさま』の作者紹介:


あまんきみこ(阿萬紀美子)
1931年満州に生まれる。坪田譲治主催の童話雑誌「びわの実学校」の同人となり、1968年『車のいろは空のいろ』で第1回日本児童文学者協会新人賞、第6回野間児童文芸推奨作品賞を受賞。作品に『おにたのぼうし』(ポプラ社刊)『きつねのみちは天のみち』(大日本図書刊)『ふうたのはなまつり』(あかね書房刊)他多数。エッセイ集に『空の絵本』(童心社刊)がある。京都府在住。


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