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ホラー作品を味わいたくなる気持ちについて考えてみた

不定期にホラー作品を欲して,イヤミスやホラー,胸糞系の小説や映画,ゲームをする。

最近,ホラー欲求を充足させたのはこちら。

イヤミス小説『殺戮にいたる病』

サイケデリックホラーゲーム『Layers of Fear』


ホラー作品を味わいたい衝動に関して,「なんか最近,刺激がたりてないんだよネ!」だけではちょっと言語化てきてない感があって。

ちょっと調べてみた


①山根一郎 (2007) 恐怖の現象学的心理学

楽しまれる恐怖とは,実際には経験しがたい貴重な恐怖のシミュレーション体験である。差し迫った危険から分離されているため,逃避や制止のような緊急の対処行動から解放されることで,恐怖のゾクゾクする興奮だけを思いきり味わえる。

http://web.sugiyama-u.ac.jp/~yamane/kenkyu/2007/fear07.pdf
山根一郎. (2007). 恐怖の現象学的心理学, 椙山女学園大学人間関係学研究, 5, 113-129

確かに。

現実場面における恐怖体験だったら,闘争・逃走反応で,「戦うか!逃げるか!身動きを止めるか!」の高い緊張状態になるよね。

その超ストレス状態を取り除いて,恐怖という感情のみを体験するのは,エンタメ的かも。もはや別物だね。

(恐怖について心理学的にまとめられていて,勉強になります。これは本当に一部。)

②WIRED STAFF (2007)「恐怖」と「快感」の裏腹な魅力:ホラー作品の人気を脳神経科学と心理学から分析

ホラー映画は一種のセラピーなのかもしれない。つまり、戦争や災害、犯罪のニュースが一日中流れ、大気中の粒子には発ガン性物質が含まれているかもしれないというような社会で、自分を取り巻く恐怖に対処する1つの方法なのかもしれない。
「恐怖と向き合って克服すると満足感が得られる」とRappoport氏。「セラピーの多くが曝露療法(Exposure Therapy:PTSDなどを克服するための、認知行動療法のひとつ。安全な状況下で、心的外傷体験を想起させたり、回避している事物に曝露させることを繰り返す)だ。そういった療法は、不安がどんなものであっても、克服したという感覚を患者に与えることができる」

https://wired.jp/2007/11/08/

エンタメにおける恐怖体験が,クソみてえな社会に対処するための術になっているってわけか。

恐ろしい現実に向き合うために,ホラー映画の視聴を完遂することで,恐怖への克服体験を得る。これが成功体験となることに伴って,本人の自己効力感が上がることが気持ちいいのかもね。

以上の論文と記事は,どちらも2007年のものだ。

最近のものも探してみたが,うまく見つけることができず。
2007年に,ホラー研究が流行ったのかな?

考えてみた

私がホラーを欲する時に一番に出る言葉は,「素晴らしい不快感を味わいたい!」だ。

だから,不快感を求めて味わった作品が,ハッピーエンドで終わると,強い違和感を感じる。

(全登場人物の不幸を期待して見ていました…本当にすみません…)

それに,怖がらせるだけのホラーは嫌だ。

芸術性や,テーマがないと,「素晴らしい」に欠ける。

つまり,怖いだけでは辛いから,アートという枠内で,恐怖体験をしたい。というのが私の願望らしい。

以上2つの資料を読んで,自分の体験に落とし込んで考えてみよう。

①山根(2007)で考えてみた

私が,山根 (2007)が述べる,
「差し迫った危険から分離されているため,逃避や制止のような緊急の対処行動から解放」された状態でホラーを楽しんでいるのは,言うまでもないだろう。

それに加えて,アートという枠を設けることで,より現実から分離した状態で,自身の安全を保とうしているとも考えられる。

私,めっちゃ怖がりやん。

②WIRED STAFF (2007)で考えて見た

「恐怖と向き合って克服すると満足感が得られる」という記述について。

私がホラーを味わいたくなる時って,健やかで前向きな状態とは言えない時が多い。つまり,何かしらの困難や葛藤を抱えている時が多いと思う。

困難や葛藤に向き合うことから逃れて,ホラーを味わうことで,擬似的な達成に満足感を味わっているのかもしれない。

まとめ

突如ホラーを味わいたくなるの,なあぜなあぜ?的なところを考えていくと,自身の行動の癖や,特性が見えてきて面白かった。

引用させていただいた論文と記事の文章は,本当に一部だから,もしこんな自分よがりな記事を見て興味を持たれた方がいるならば,ぜひ見てほしい。

今後,ホラーを味わいたくなったら,「何かから逃げているのではないか?」と,自身に問うてみようと思う。


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