旧石器時代式BBQチャレンジ!|よりかね隊長の自然科学ラボ vol.1【テーマ/遠赤外線(電磁波)】
アニメや漫画でよく見る、原始時代の “骨付き肉” 。子ども心に(大人でも?)美味しそう、食べてみたい、と思ったひと、きっとたくさんいるんじゃないでしょうか!
賢い!?小中学生たちと実験してみながら、電磁波「遠赤外線」について、実体験からあれやこれや考えてみたいと思います。
実験予定日:2022年12月10日(土)〜11日(日)パラダイスデー
旧石器時代式BBQチャレンジ:レギュレーション
※残念ながらマンモスの肉は手に入らないし、アフリカゾウも同様😂当時もいただろう獣で美味しいお肉と考えると「鶏肉」になるかな?
【追記】子どもから「旧石器時代なら打製石器も使っていい?」という話が出てきたので、丸鶏を一匹買ってきて、石器を探して&作って、鶏を解体するところからやろうかな?😂
焚き火で焼いたマンモスの肉は美味しいのか問題
よりかね隊長です。アニメや漫画で原始人は、マンモスを追っかけ回し、獲物を仕留めると、焚き火で焼いて美味しそうにかぶりつきます。
じゅるり。
やってみたいですよね!
ところが、お肉を焚き火で焼くというのは、実はすごく大変なことなんです。やってみたらすぐわかりますが、
まっ黒こげ……
まああれです、焚き火じゃなくても、自宅のガスコンロの火で、直接ステーキを焼こうとしてみてください。表面は焦げて、中は生のまま。とても食べられたもんじゃありません。
近年、ソロキャンプ+野営みたいなものが流行って、なぜか焚き火の直火で肉を焼くなどするのが流行っていますが、あれ、けっして美味しくはありません(趣味でやりたくてやるのは全然いいんですけどね)。
それどころか、体にも悪かったりします。薪ストーブの煙突の中って見たことあります? 煤(すす)だらけで真っ黒。プラス、アルデヒドやフェノールなんかの刺激物も入ってます。煙って目にしみますもんね。
要するに、焚き火で黒こげになったお肉っていうのは、炭素やアルデヒドやフェノールまみれってことなんですよね。
果たして焚き火で焼いたマンモスの肉は美味しいのか……ちょっと疑問になってきませんか? そもそも、表面を黒こげにせずに、お肉の中まで火を通すにはどうしたらいいんでしょうか。
なぜ旧石器時代式なのか
旧石器時代=土器のない時代と定義
さて、子どもたちと一緒にチャレンジするのは、旧石器時代式のBBQ
です。
旧石器時代というのは、ここでは、非定住・狩猟採集生活であると共に、土器が登場する以前の時代と定義したいと思います。
(さらに打製石器など単純な石器が使われていたはず)
日本で言うと、縄文時代よりも昔です。縄文時代には縄文式土器がありますから、鍋状の土器を使って煮炊きができたはずと推察されます。
土器のあるなしで炊事は大きく変わる
鍋やフライパンとして使える道具がなかった時代にも、煮炊きは不可能ではありません。
たとえば、岩のくぼみに水を汲んできて、高温に加熱した石を放り込めば、水を沸騰させることができます。
しかし、土やら灰やらたくさん混ざりそうですし、手間もかかりますね。
他にも、食材を土中に埋めて上で焚き火をすればオーブンまたは低温調理器になりますし、葉に包んで蒸すなどもできたかもしれません。熱した石の上で直接焼くのもアリかな。でもどれも大変です。
こうして見るとわかるとおり、土器……つまり鍋になる道具の発明は、まさに革命。食事・炊事・調理の水準は飛躍的に向上したはずです。
土器(鍋やフライパン)があったら、調理は超簡単。なにも頭を捻る必要はなくなってしまうんですね。
よって今回の実験では、土器(鍋やフライパン)を使わない、旧石器時代式というルールにしています。
肉を美味しく焼くために欠かせない「遠赤外線」とは何なのか
BBQが美味しいのは「遠赤外線」のおかげ
鍋やフライパンを使えば、調理は簡単です。しかし、それがないとすると、どうしたらいいのか。
でも、現代の私たちも鍋やフライパンを使わずに、お肉を美味しく焼いて食べていますよね。そう、炭火でのBBQです。しかも炭火BBQは、フライパンで焼くよりも美味しい。
種明かしをしてしまうと、熱されて赤くなった炭は、遠赤外線を豊富に出しているからです。
遠赤外線は、表面をパリッと香ばしく焼き上げつつ、中までじんわり火を通す性質をもった優れものなんですよね。
遠赤外線=電磁波!
そこで次の疑問は、遠赤外線ってなんなの?ってことなんですが。
聞いてびっくりな方もいるかもしれませんね、遠赤外線は電磁波です。携帯電話の通信に使われているアレです。
電磁波は、波長によって様々に名をかえ、その性質も変化します。
たとえば、最も波長の短い電磁波は、エックス線やガンマ線と呼ばれます。エックス線はレントゲン撮影に使われるやつですね。
もう少し波長が長くなると、今度は日焼けの元である紫外線や、色が見える仕組みである可視光線になります。
続いて赤外線になり、さらに波長が長くなると、携帯電話の通信に使われたり、ラジオの電波になったりします。
これら全部、電磁波なんですよね。電磁波というと人工的なもの、機械から出るものというイメージが強いかもしれませんが、実は自然界には電磁波が溢れています。
蛇足:遠赤外線とマイクロ波(電子レンジ)の違い
※この項目は読み飛ばしても問題ありません。気になる方だけどうぞ
遠赤外線と似た性質を持つものに、電子レンジがあります。電子レンジはマイクロ波(やはり電磁波です)を使った加熱装置で、これもやはり、焚き火で焼くときと違って表面を黒こげにすることなく温めてくれます。
遠赤外線が表面で吸収されやすい=表面をパリッとさせてくれるのに比べ、マイクロ波は水(食品なら含まれる水分)にだけ吸収され、熱が発生します。
電子レンジでこんがり焼けないのはこの影響です(チンしすぎてカラカラになることはありますが、これは水分が蒸発しすぎているんですね)。
旧石器時代式BBQを成功させるにはどうしたらいい?ヒント集
遠赤外線を発生させやすいもの/そうでないもの
モノには遠赤外線を吸収しやすいものと、そうでないものがあります。プラスチックやゴム、あるいは食品(炭水化物、脂肪、タンパク質など有機物)は、吸収しやすいそうです。
※逆に吸収しにくいものは金属とのこと
遠赤外線は、モノに吸収されると、分子を振動させて熱を発生させます――なんて聞くと、専門知識のある人以外は「えーっと😅」という感じになると思いますが、私もそうなので安心してください。遠赤外線を吸収しやすいものほど加熱されやすい、という点だけ押さえればOKです。
一方で、遠赤外線を吸収しやすいものは、遠赤外線を放出しやすい性質もあるそうです。つまり炭火のように熱源になりやすい物質が存在します。
現状、熱源として最適なのはセラミックだそうで、セラミックファンヒーターや電気ストーブがそうですが、電気でセラミックを加熱すると、遠赤外線が豊富に出てくれてとてもあたたかい。
セラミックは粘土や珪石その他が原料なので、石焼き芋が美味しくできる原理にも近そう。これは旧石器時代式BBQチャレンジでも、いいヒントになりそうですね。
焚き火やガス火からは遠赤外線があまり出ない
さて、ここまでくれば、焚き火でお肉を焼くのが難しい理由がわかるんじゃないかと思います。
焚き火、そしてガス火もそうですが、放出される遠赤外線が少ないので、中まで火が通る前に表面が焦げてしまうわけなんですね。
ですから、もし模範解答を示すとしたら「遠赤外線が少ない分、時間をかけて焼く」が正解になります。つまり、囲炉裏で焼くイワナみたいなイメージ。
(肉一つ焼くのに数時間かかるそうです😂)
当然ですが、模範解答だけが唯一の正答ではありません。焚き火の熱を使ってどうにかしてお肉の中まで火を通し、食べられるようにすればいいわけです。
子どもたちの瞬発的な発想力や、固定観念に縛られないからこその柔軟さが、「おおすごい!」という発明や、「そんなのあり!?」的な裏技を見つけてくれるかもしれませんね。
体験 × 知識で子どもたちが得るものは?
さて、いろいろと遠赤外線を取り巻く知識について書いてきましたが、「旧石器時代式BBQチャレンジ!」では、子どもたちにこんなに長々と「授業」をするわけではありません。
知りたいと思わないのに教えたって身につきませんし、なにより子どもたちの邪魔です。
まずは、レギュレーションと注意点、いくつかのヒントだけを提示して、自由にやってもらいます。
学校のテストではありませんので、正解する必要はありません。試行錯誤すること、実際にやってみて様々な実感を得ることそのものに無類の価値があります。
うまくいかない、でもどうにかしないとこのお肉を食べられない――こういうときにこそ、私たちの頭はフル回転します。他の子のやり方をみて学ぶこともあれば、反面教師にすることもあるでしょう。大人のアドバイスに真剣に耳を傾けることもあるでしょう。
答え合わせは最後に。失敗したのならそれはなぜか。成功した理由を科学的に説明するとどうなるのか。おまけに関連する雑学も少しだけ学んで帰ってもらえたらと思います。
どんな時間になるのか、こちらとしてもめちゃめちゃ楽しみにしています!
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