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#童話

蝸牛【短編小説/1600字】

蝸牛【短編小説/1600字】

 その蝸牛は、自分の生まれた時のことをよく覚えていない。いつともなしに、木の上で暮らしていた。背中の殻はいつ背負ったものであろうか。それもまたこの蝸牛にとっては茫漠たる記憶の彼方の出来事であった。自己を自己とする自覚。それが芽生えた時には殻は蝸牛の分かちがたい一部としてその地位を確立していた。ある時はその中で眠り、ある時は背に乗せながら歩く。殻は薄い褐色に縦縞を浮かべ、軽快な旅の道づれとしてその役

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