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人は隠れているものに夢を見る


マスクが顔の一部となって久しいが、いつかこれを外す日のことを考えると今からじわじわと不安に駆られる。

長引いたマスク生活ですっかりほほや口元の緊張はゆるみ、さらに我々はこの2年分きっちり加齢した。
時は止まらない。すなわち老化も止まることはない。

たとえ化粧品、メイク、マッサージで繕おうと劣化した細胞は再生しないし、できたシワは消えない。
そもそもの細胞が生きた年月分弱っているのでどんなに繕おうと老けの源泉は日々沸々と湧いているのである(?)

30代の女にとってほほ、あごのたるみ、下がり、口周りのゆるみとほうれい線は致命的だ。
さらに30代にとって2年分の加齢は20代のそれと比べ3倍ほどのダメージだっ!!
マスクをすることが日常でなかった時代はそれが意識していても無意識でも、「見られている緊張感」という何よりの美容液が顔中に注がれていたようなものだ。
それが今はどうだろう。皆無だ・・・。この2年ほどで、一部の職業の人を除いた大抵の普通の人は表情筋が退化したに違いない。

しかしこのマスクが好都合な場合もある。というか内心密かに好都合だと思っている人は実は7割くらいいるのではないかと個人的には思っている。
日本人に特に多いであろう性質、そう「人見知り」の性分である。
顔の3分の2を隠すマスク、これが「やらなければいけないこと」として定着した今、何の違和感もなく顔を隠したまま当たり前にコミュニケーションをとれる。
何の疎外感も堂々と顔を出せないことの罪悪感や劣等感もない、だってこれは「やらなきゃいけないこと」なのだから!
「顔が隠れている」ことにある「安心感」「やりやすさ」は実は多くの人が実感していることなのではと思って日々を過ごしている。


しかし、思いませんか。
最近、ちまたに「若く見える美男美女」が増えたと・・・。

とある男性芸能人もテレビで思わずといった感じで言っていた。
「みんな可愛く見える」と・・・。


わかる!と思ったが、これは由々しき事態である。
マスク。
髪、眉、目以外の顔が隠されたこの見た目。大抵の人は若く見えるだろう。冒頭で述べたほほ、あごの緩み、ほうれい線、輪郭、人によってはシミ、歯並びといった個性が顕著な大部分が見えていないんだから。
例えば私の顔でいえば20代の頃に比べフェイスラインの緩みもそうだが、丸顔であごは決して細くない。人より口が小さい。これは目と眉からは想像しづらい。

問題なのは、この「隠れた部分」を、あまり深い知り合いでない人、新たに知り合う人は現時点で見えている部分から「勝手な想像を膨らませる」という部分だ。
イマジネーション。
一部を見ただけでその人が無意識に、理想とする顔、または展開、を頭の中で繰り広げるのである。
頭の中で妄想、想像が繰り広げられがちな各クリエイターの方ならわかる感覚だろうと思う、自らの頭の中で妄想が展開されたのち、目の前に現実として現れた事実の、この何ともかけ離れたことよ・・・。

マスクをした自分の顔、若く見える顔、のその先、これを相手の理想、目や風貌から予想するイメージで顔が相手の中で作られていると思うとこんなに恐ろしいことはない。
ハッキリと言う。そのイメージや期待は、高確率で外れている。たぶん87パーセントくらいの確率。
申し訳ございませんが、この顔面のその先はそのご期待には絶対に添えておりませんのでっ!


マスクを外せる時代がこのあと必ず来る。それは祝うべき新しい時代の到来かもしれないが、自分は人と比べて生まれ持った容姿が特別に良いというわけではないと思っている(努力していることとは別として)我々一般人はこれに向けて、幻滅する、される、このショックから心を守るような構えも今からとっておいた方がいいのではと思っているのである。
人は「隠された部分」「見えないこと」のその先に壮大な夢を見ているものなのだ。
「マスク外したら残念」なんていう言葉を使いその考えを慢延させるのはよそう。「慢延防止」とはここで使われるべき言葉である。

みんな、相手のそのままの姿を尊重しよう・・・。

みんなそれぞれ誰かからそう思われているかもしれないんやで・・・。


追記。
私が今とっているスズメの涙ほどの対策として、「車で1人で運転中はマスクを外す」ということをしている。
日中明るいうちは対向車や歩行者に顔がさらされることになるし、少しはその時に向けた準備ができるのでは(あと「見られている緊張感」という美容液のため)と思った次第だ。





※ここに書いたことは私個人が感じたことをネタにして展開しただけの記事であり、イラストを含め誰かをモデルにしたり、特定の人物や特定の人の思想に対する攻撃を目的としたものではありません。

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