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Think about tradition / 伝統という考え方を考える(第1話)

前回、創刊号を発行した時、次号のテーマは決まってなかった。まぁ、ゆっくり決めたらいい…と思っていたところに予想通り締め切りが迫ってくる。私の人生、この過ちを何百回繰り返してきたことか。ホント学習しない。さらに厄介なのは、締め切りという恐怖が近づけば近づくほど妙に落ち着きが増してくる。「まぁ珈琲を一杯飲んでから」とか言い出して書かないこと何日も。本当のダメ人間とは私。

と言いつつも、テーマが決まりだせば原稿も流れ出す。
今回のお題は"伝統"。朝倉には"甘木絞り"という絞り染めの技法を用いた伝統工芸が存在する。その名の通り朝倉市の甘木地区で生まれた絞り染めのことで、かつては日本一の生産高を誇っていた。江戸時代末期から昭和初期にかけては博多絞りと共に"筑前絞り"として関西・関東方面へ多く出荷されている。その産業を盛んにした要因の一つに、小石原川の水質が木綿を晒すのに適していたからだと言う。歴史や文化が作られたものにはいつも偶然的何かが存在し、それが後に必然となってたりして面白い。甘木絞りとは、染色前に布地の所々を糸で固く縛って、白い染め残しと藍色の濃淡で模様を描く。それがなんともいえない淡い雰囲気を醸し出し、私たちの心までも穏やかにしてくれる。

私も先日、7歳の息子と絞り染めの体験教室に参加させてもらった。この絞った箇所のバランスがとても難しく、さすが職人芸だと感じながらも完成したものにはとても満足した。そして何より子どもの反応がとてもイイ。"日ノ目スタヂオ"では作品だけでなく今後、体験の場を増やしていく予定だという。

ただその甘木絞りの伝統も今、途絶えようとしている。まず後継者がいない。いや、そもそもこれまで産業としてやっている前任者もいなかった。だって食べていけないから。時代の流れだから。その辺りについて今回、伝統をテーマに甘木絞り職人の西村氏に話を聞いてみた。彼は2年前、"伝統"についての絵本「せめろ!でんとう!」を出版している。

つづく


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