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直観に規定される人と社会について

 僕という存在は、今確かにここにある。存在の内なる部分に核があり、核は直観を持つ。それが脳の機能の何と呼ばれるかはわからず。ややもすると、脳という機能を超えて存在を既定するための引力斥力が働いているのかもしれない。僕が何をして喜び、何をどのように感じているかを明確に、無限の画素をもってありのまま感じる機能がある。そこへいかにアクセスするか、その感覚にどれだけ近づくことができるかが、感覚的能力なのではないかと思索している。それはかつてイデアと呼ばれたかもしれない。

 人間は一度、情による連帯を目指したかのように思える。然し乍ら、このところの世相に鑑みれば、分断がますます進むばかり。分断は心の圧迫によって、人間の解釈の幅が狭まること、ならびに圧迫への復讐心によるものだと僕は解している。

友も民も、追われるように生き、感覚の忘却に浸るか、勤勉な者は直観の解釈を辻褄が合うように書き換えていく作業に没頭しているかのようだ。人間はそれを目指しただろうか。生物として子の連鎖を繋げていくこと以外に、言葉をもって思考を紡ぎ、形而の上下を分け、表現の様式を生み出してきたことは、唯の余剰だろうか。種の繁栄を遥かに超えた感覚の数々をもっていないだろうか。サルの一群であることとは別に、自己を規定する特権を、僕たちは持っている。

これらの感覚をもって交歓し、意義を目指して研鑽する社会が到来すべきだ。自己をひとたび規定すれば邁進できるような社会が。その障壁となるものは2つある。1つは貨幣流通による資源配分という仕組みであり、1つは悪意である。

生まれながらにして生きる権利があり、自己実現を指向することが是とされるならば、資源の配分が貨幣を介在する必要性はない。資源が存在し、配分する仕組みを構築すればよいだけだ。その中で、新たな利便性を世に発信したい者がいるならば邁進すればよいし、人間が残した空想の所産を調べながら新たな空想を読み物として生み出したい者がいれば邁進すればよい。(資源の算出は、資源の算出に邁進したい者がいなければ技術の投入により人手を補わねばならないだろう。これについては現時点では推し量れない。)僕は、資源の面では不自由をしなかった。そのことに怒る者の血の叫びを、いつもどこかに感じながら生きている。然し乍ら、資源を得られなくなることの恐怖により自らを規定し、本来あるべき姿でないところのものとして歩もうとしてしまった経緯がある。その結果が、今このよるべない体たらくとしてここにある。そのことに諦観を抱けという「大人」の命令は、進化の途上としてあり得ないと理解しながら、しかし解釈を書き換えて紡ぐことがやめられないでいる。

自戒。直観による自己の支配を諦めないこと。僕の感じる矛盾はどう足掻いても僕の矛盾であるし、僕は僕の語彙でしか物事を整理できない。その整理が異なる様式であったとしても、公に伝えるという以外では、そうでしかあれないものとして享受すべきだ。

労働対価を得ることの不安から解放され、明日の安堵を得ることができれば。全人類が自己の実現を指向できる。直観を諦めさせられ、自己の規定を歪めることで応対している同朋の真の姿を僕は見てみたい。そうして一方、その過程が苦しかったことを理由に人を咎める性質のついてしまった人間の棘を削りたい。彼らは努力家であるが、直観の情を捨てているかのように思えるからだ。

もう1つ。断固として許さずにおかねばならないものは悪意だ。悪意と、悪意によって何かを為すことができる環境を削がねばならない。傷つけること、欺くこと、与えた悲しみを放置すること、それを人為として行い認識しながら生きる者が、そのような悪意を持った者が、まだ存在する。悪行を受けた者は、悪行を受けなかった世界との乖離に悩み、時に直観を切り離すことすらある。そんなことがまかり通ってはならない。これまで人の人たるを弄したすべての行いを、価値観として許すわけにはいかない。魂の正義に従い生きてきた者同士が直観により交流し自己実現の歓びに向かって邁進できる社会を、悪意により汚されるようなことがあってはならない。

社会は契約によって為る。法なかりせば、自然状態としての野蛮がまかり通れば、社会はその姿を保つことができない。であるからして、社会の形を歪めてしまう者については統一の暴力によって隔離されている。今後の社会が人間の直観を指向するものに変貌するならば、当然にその社会形態を歪める者を隔離しなければならないだろう。
 
 ここに書いたことは抽象的な社会のコンセプトであって、その具体化はどのような構造によって成るかを確かめるために僕は邁進しなければならないと感じている。そのはずが解釈の書き換えと遊蕩と惰眠に費やされていることについては、日々の怠惰に痛み入るばかりだ。自室で思索していたときに反省にたどり着き、今この文章を書いた。

超人を目指して。2021/7/22

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