鳴神山登山記録
1 鳴神山について
鳴神山は標高980mの低山。群馬県桐生市に位置し、桐生岳と仁田山岳から構成されている。つまりは山頂は双耳峰となっており、吾妻山(標高481m)との縦走が可能。群馬百名山や関東百名山にも選ばれている。
鳴神山は古くからの山岳信仰の対象であり、山頂の肩には「雷神嶽(なるかみだけ)神社」が建てられている。字面がかっこいい。読んで字のごとく「雷神様」を祭る神社であり、その昔雷神上人が住んでいたとされていることが由来となったそう。
雷神とは雷を神格化したもの。水神かつ火神として、天と地を繋ぐ媒介者とみなされていたほか、神の示現をも意味していた。それに加えて、雷は稲妻、稲光と言われるように稲の豊作をもたらす神様ともみなされていた。役割多いな。きっと神様の絶対的な威光が顕現したように見えたのだろう。化学の証明を免れていた時代に、雷を恐れ、敬うようになったのは、自然なことのように思える。
鳴神山へは桐生市を起点に考え、群馬県道338号駒形大間々線を直進するのがいいだろう(道すがら、日本遺産「かかあ天下-ぐんまの絹物語-」の構成文化財の一つである白瀧神社が見える)。東西の334号線や66号線と間違わないように。駒形登山口の駐車場は8台ほどが無料で駐車可能。
2 道中の景色
沢沿いを上るので清涼な空気を吸い込むことができた。道自体はそれほど急でもなく、装備を求められるような難所もない。ゆったりと森林と同化しながら登ることができるような山だ。桜の花びらが地面に散らばり、苔むした岩石の上に載っていた。また、こういうものに共感があるかはわからないけれど倒木に個人的なロマンを感じていた。人間社会から一歩離れ、一息つくにはちょうどいい。GWだけど人も多くなかったから、穴場な良いスポットだと思った。
3 カッコソウについて
鳴神山の目玉は何といってもカッコソウだろう。
カッコソウとはサクラソウ科の多年草であり、鳴神山周辺にしか咲いていない花だ。かつては谷間が一面ピンク色に染まるほど普通に見られていた花らしいが、現在ではその数を減らし、いまや絶滅危惧IA種(環境省第4次レッドリスト)とされ、平成24年度には国内希少野生動植物種に指定された。絶滅危惧IA種とは、ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもののことだ。サクラソウの名のとおり桜に似た色合いをしているが、カッコソウは色合いが濃く、紫がかっているのが特徴だ。小さいながらも存在感があり、妖艶な魅力のある花だった。
このカッコソウを保護しようとする試みにはNPO法人が設立され、「鳴神の自然を守る会」として様々な活動がなされている。登山口ではカッコソウに関するチラシを配り、啓蒙活動を行っていた。無許可で採集する輩も絶えないらしい。とても熱意のある人だった。また、シカの被害も深刻で、寄付金によりネットを張るなどの対応もしている。カッコソウだけではなく、鳴神山を本当に大事に思っているようで、有志の方々の情熱を感じた。