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#23 ジェフボラ時代の思い出

「誰と会ったか、と、誰と合ったか。
もうほとんど人生は“合う人に会う”ってことで良いんじゃないかって思った。」

ナナメの夕暮れ 若林正恭 文芸春秋

今日ほど、この言葉を噛み締める日は無かった。

20代半ば、
自分から
友人無く1人でもやってみたい
と始めたジェフのスタジアムボランティア。
初めての事だったし、ましてや千葉出身でもなく、在住でもなく、
そこまでサッカーに関わってきた経験も無かった私は、
人知れず緊張もしていた。
ただ、ジェフのサッカーのホームゲームの運営に関わる事ができるんだ〜という高揚感が当時の私を支えていた。

面接のようなものをするために尋ねた事務所で初めて会った担当の方はとっても気さくな方で、
世間話をしながらボランティアの仕事の内容を説明してくれ、
初めて踏み込む世界にとても安心感があったのを覚えている。
ボランティアで参加するようになっても、
ボランティアスタッフ1人1人に丁寧に対応してくれているのがよく見えて、
本当に安心感のある存在だった。
私は、知り合いこそ1人も居なかったけれど、試合の都度任される仕事は楽しかった。

しかしながら、1年か2年経った後、配置換えとのことで、違う方に担当が変わることになった。

去る時にも自分がいない後のことにも心を配っている様子がよくわかって
それぞれに言葉をかけてまわっていた。
私も一言二言言葉を交わして
地元千葉のスタッフでもないことから、
その辺りを心配していただいたような記憶が残っている。

もちろん新しい方もきちんと仕事をされる方だったが、
前任者の人程の温かみを感じることは無かった。

そのうちに自分自身も生活の変化があり、
千葉でのボランティアを続けることが出来なくなってしまい、
返却できなかったボランティアのIDカードだけが手元に残った。
最後の辞める際に、その前任者の方とは挨拶が出来なかったことを凄く残念に思っていた。

それから十何年の時を経て、
少年スポーツの現場の課題に向き合う中で、
いつも気かけてくださる父親のような(というには図々しい)存在の方のSNSの中に、
容姿に見覚えのある方が写るのに、胸が静かに鼓動を打つのを感じた。
「もしかして…」

確信の持てない私は、すぐに聞くこともできずにいたが、
たまたまその方とお会いするタイミングが出来、
10月の終わりの日比谷公園の松本楼での昼下がり、
ビールを二人で乾杯した後に、
まさかの気持ちで尋ねてみる事にした。
「先日〇〇さんが投稿していた、○○さんって、ジェフの…」と私が言い終わるのを待たずに、
「え~、そうだよ~。どうして知ってるの~?」とのお返事。
事の顛末を話すと、
「わ~嬉しいな~。それ多分凄く喜ぶよ。
当時、毎日一緒にいたんだよ~。」
と言いながら、
ごそごそとスマホを取り出し、私が〇〇さんでは?と話を切り出して、
5分もたたないうちに、電話での再会の段取りが整っていた。
これで電話が繋がったらなんという奇跡か、とも思った。
そして、まさかの「ちょっと今かわるから~。」とスマホを差し出された私は、既に胸の高鳴りが最大になっていた。
かろうじて挨拶をして、当時の思い出やお礼を伝えようとするも、
涙で言葉に詰まり早々に、父(代わり、のような、方)にスマホを返却した。
当時の思い出や、スポーツに関わっている今の自分のことを考えると、
再び出会えたことに深い感謝の念がじわじわと胸の中に広がって、
不覚にもめそめそと泣いた。

今の自分にとって、当時のジェフとの出会いはとても大きな存在になってしまったし、その時出会った人や出来事との関わりが多いに影響を与えていることや、今日こうしてまたその方へ戻って来て、繋がることが出来たことに、
深く感謝の気持ちが溢れた。

電話を切ったあとよくお話を聞くと、本来は運営畑でなく、育成のスペシャリストだったので、彼にとってはすごく不本意な人事だったはずだよ。と伝えられた。
とてもそんな風には思えない、いつもにこにこしていて、ボランティアのスタッフに常に気を配って、小さなことでも先に声をかけてくれて、凄く楽しく気持ちよく仕事をすることができた。

その日の夜、改めてSNS経由でメッセージを送ると、シンプルだけど心のこもったお返事がきた。
いつかお会いできますように、と書いてあった。

生きていると沢山の人との出会いや別れがあるけれど、
自分にとって感性が合う人に出会えることは、
そう多くはないだろう。
だから、立場や年代や性別は超えて、
そういった人との出会いは、大切にしなければならない。

「誰と会ったか、と、誰と合ったか。
もうほとんど人生は“合う人に会う”ってことで良いんじゃないかって思った。」

合う人に会うっていう人生を送れるよう、
自分の直感は無視しないようにしたい。

勢いでその日の気持ちのまま下書きに残していた出来事だったけど、
2023年の終わりに、
忘れないよう公開しました。




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