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Withコロナ時代のアジアビジネス入門⑩「インドeコマースの成功はコスパと差別化」@ONLINE講座インド編(3)

   IT先進国・インドは魅力のあるeコマース市場なのか。eコマースのプレーヤーはどんな企業か。中国や東南アジアと比べて心理的にも遠く感じるインドは果たして日本と相性はいいのだろうか。

 毎日アジアビジネス研究所は(YouTube→)「Withコロナ時代のアジアビジネス入門ONLINE講座」を開設しました。中国編に続く、シリーズ第2弾「荒木英仁のインド・ビジネス<デリーからの最新報告>(3)オンライン市場が熱い」を6月12日に開催しました。
日本と同規模の140兆円の小売市場 
 荒木氏によると、インドの小売市場が2016年度の70兆円から2020年度には140兆円を超え、日本と同規模になるといわれます。ただし、小売店のうち、伝統的な小規模店が89%を占め、大型スーパーマーケットなどのモダン・リテールは8%に過ぎないのが現状です。こうした状況の中で、モディ政権の「デジタル・インディア」政策も一因となってインターネット革命が起きてeコマース消費が現出しています。
 eコマースのインフラとして、インターネットとスマホの普及があげられますが、インドのFacebookユーザーは3.2億人、WhatsAppユーザーは4億人にのぼります。2016年にインド最大級の財閥リアイランス・グループの4G通信事業者「リアイランス・ジオ」が誕生し、2019年8月には契約者が3億4千万人に到達しました。同時に1GBあたりのデータコストは2015年の172.2円から2019年には21円に下がる価格破壊が起きました。2019年度の1GBあたりのデータコストが韓国1,630円、中国1,069円、日本896円であることと比べれば、インドの低価格ぶりが顕著になっています。
中国スマホが7割 コロナ禍で反中感情から一部で不買運動も
 2019年のスマホ市場のシェアは、Xiaomi(シャオミ)、Vivo(ヴィーヴォ)が1、2位を占めるなど中国メーカーが7割を占めています。韓国のSamsung(サムスン)は3位に甘んじています。中国製スマホの人気の理由は低価格であることに加え、SIMカード(シムカード)が2枚使えることだと言います。しかし、インドではコロナ禍で最初に感染が拡大した中国へ反感で強まっており、一部で中国製品の不買運動も起きているそうです。
eコマース市場規模は6.7兆円
 2020年度のeコマース市場規模は6.7兆円市場で、カデゴリー別では家電・携帯が48%、ファッション29%です。荒木氏はeコマースの成長要因について①「デジタル・インディア」政策②固有商品識別子(UPI)導入による金融サービスと情報技術の融合(FINTEC)の普及③高額紙幣の廃止――などをあげています。
 eコマースのプレーヤーとして、2019年度の市場シェアではAmazon が34%、Flipkartが27%、Snapdealが11%で全体の72%を占めています。Flipkartは米小売大手Walmartに買収され、 Snapdealには中国のアリババ、日本のソフトバンクが投資しています。
モンスターアプリpaytmに出資のソフトバンク 日本でPayPayを展開
 荒木氏によると、eコマースのモンスターアプリpaytmは3.5億人ユーザーを持ち、同社にも投資したソフクバンクがその技術的裏付けを持ってスマホ決済アプリPayPayを日本で展開したといわれています。日本企業によるインドのスタートアップとの連携として、ロート製薬、リクルート、豊田通商、HIS、ニチレイを例にあげました。
 最後に、インドはITとソフトウェアが強いデジタル先進国で若者が過半数の人口増加国であるが金利が高く資金が足りないと指摘。これに対し、日本はデバイスとハードが強いがデジタル後進国で高齢化の進む人口減少国であるものの金利が安く余剰資金が多いと言及したうえで、「互いの長所と欠点を補い合えるので相性は抜群だ」と強調しました。
eコマース成功の秘訣はコスパと差別化
 ONLINE講座で、参加者から次の質問がありました。
――インドのスマホの普及の早さとコストダウンは素晴らしいが、スピードのクオリティーは悪い。日本並みになるのはいつごろになるのか。
 「おっしゃる通り、4Gといっても、日本のように常時、ストレスを感ぜず、ストリーミングをできる状態になっていない。実際は3G以下の状態のところもある。ただ、都市部を中心にテレビよりもAmazonプライムやネットフリックスを見る傾向があるのでストリーミングは改善されると思う。リアイランス・ジオは(改善のため)中継地点を増やしていくでしょう」
――中国の越境eコマースは成功しているケースがあるが、インドの場合は日本企業の参入の可能性はあるのか。
 「中国の場合は東京とか大阪に行ってそこで商品を大量購入し、それならeコマースでもいいのではないかとeコマースが始まっている。中国や東南アジアは日本へのあこがれがある。しかし、インドにとって日本は遠い国であり、日本製品に触れたことがない人が多い。何が売れるかの検証は必要でしょう。インド人はコスパを重視する。インドにない商品、競合の少ない商品を、インドに合った価格で販売することを考えれば可能性はある。(コロナ禍で)中国製品を買いたくないという人が増えているので、そういう意味でも日本製品にチャンスがある。ただし、くれぐれも日本製品は高くても売れると思わないように」

■荒木英仁(あらき・ひでひと)
毎日アジアビジネス研究所シニアフェロー/インドビジネス・コンサルタント
 長年、大手広告代理店「アサツー・ディ・ケイ」の海外事業に従事し、2005年から9年間、同社インド法人社長。2014年春ニューデリー郊外の新興都市グルガオンにて「Casa Blanka Consulting」社を設立、日本企業との提携を求めるインド企業を支援。 また、同年監査法人「Udyen Jain & Associates」と業務提携し、日本企業のインド進出や現地でのコンプライアンスを支援。インド最大手私銀「ICICI Bank」のアドバイザーや、JETROの「中小企業海外展開現地支援プラットフォーム」コーディネーターも務める在印15年強のインド通

■シリーズ3 ベトナム・ビジネスONLINE講座がスタート
NOTEに告知をアップしています。
https://note.com/asia_business01/n/n423f006376af
【アジアビジネス入門シリーズ3「古田元夫のベトナム・ビジネス」】
①6月19日(金)19:00~20:30 
驚異のコロナ感染「死者数ゼロ」 ベトナムの国家と社会、交通、住宅、出稼ぎ

https://viet-biz1.peatix.com/view
②6月26日(金)19:00~20:30 
中国から生産拠点移転へ ベトナムの外資と裾野産業

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③7月3日(金)19:00~20:30 
ベトナムの高度人材とは?アジア屈指の人材育成目指す日越大学

https://viet-biz3.peatix.com/view
もし、ご関心があれば、お申し込みください。


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