助けてくれたもの (もう。いいんだよ。)
もう。いいんだよ。
解離が始まるなあ、という前兆、なにかお持ちでしょうか。
それが分かっているとちょっと楽ですよね、あー、「楽」ていうのは語弊があるかしら、「マシ」?
私は…最近は逆によく分からなくなってきました。気がついたら、「お、ちょっと…離れてるな」と思う。怪我しないように、変な事しないように、安心安全にさせなきゃな。と思ってちょっと小さく過ごします。
不安なんだね、何がいやだったんかなぁ。そう呟いて、とりあえず自分で自分をひとりぼっちにしないようにする…そうやってやり過ごせるようになってきています。
冒頭の一言は、解離を使って自分の現実との距離を取ることもままならなくなっていた頃…虐待被害の自覚を持ったばかりの頃の、私を助けてくれた言葉です。
もう最近は私の骨肉に沁み渡っていてあまり取り出すこともなくなってきましたが、ものすごく命を助けてもらいました。私の唯一のカウンセラー、Kさんがくれた言葉です。
想像はしないでくださいね。
見つめてもしょうがないなぁってものを見つめてしまうその時に、Kさんが教えてくれたのは、
パン!て手を叩くこと。そして、「もー、いいんだよ!」って、心の底から言うこと、でした。
ね、とってもシンプル。そしてこれこそ、シンプル・イズ・ザ・ベスト。
だって、もー。いいんですよ。見つめたって何も出てこない。
何も出てこないって、分かってる、もう分かりきってるって、
ちゃんと知ってる程度には、
見つめてきたじゃないですか。
私はそうです。
あなただってきっと、そうだと思う。
だからね、もういいんですよ。
もういいんですよ。
世界がそう言わないなら、私があなたに向けてそう言います。
Kさんがそうしてくれたみたいに、ここから、言います。
もういいんですよ。
大事なことはあなたが今ここに生きてるってことです。
それより大事なことなんて、ないです。
何があったから、とか、
何がなかったから、とか、きっとあるでしょう、
でも もう いいんですよ。
充分ですよ。
だから。
あなたがここに来て、
こんなふうにこの言葉にふれてくれて、うれしい。
私はそう思っています。
そして、あとひとつ言うことを許されるなら、
きっとこういう言葉は
まだ、あるんです。
まだ、しらないだけ。
…すこしずつ、
ふやしてゆけたら…
そう思います。
まずはいっこめ。私の宝物紹介。
「もう、いいんですよ。」 でした。
言いたいことは↑がすべてです。
【 宝物についての前後談 】
ご注意※ フラッシュバックなどの不安のある人はご遠慮ください。
解離とか、解離性障害とかこれだけ並べ立てておきながら、私は心理カウンセリングに通った事が三回しかありません。つまり、診断されたことはないんです。わぁ、信用ならないですね。…ごめんなさい。
理由があります。
近しい身内が、臨床心理職にいるのです。幾ら守秘義務を負うプロ集団であるとしても、狭い世界の…事ですから。世知辛いですがそんなわけです。この点に置いては本当に参考になれないです、申し訳ない。
その身内の名誉のために申し添えます。
受けたことのある三回のカウンセリングは、被害者である自覚を持ったばかりの私がその身内にカミングアウトした際に、その身内自身に説得され、身内自身が一番信頼できるカウンセラーに特別に手配してくれたものでした。
活動名を持とうという判断も、そのあたりの経験からしたことです。私が話したい事を話すのに、他の誰かへの影響を慮るのには限界があります。
この時、私のケアにあたってくれたKさんは、身内にとっては親友と呼べる存在でした。
彼女という優秀な、心優しく、適切な関わりをしっかりと持ってくださる素晴らしい人が、我々の傍にいてくれたことを、本当に、本当に感謝しています。
とりあえず三回と決めたその時間。性虐待被害に初めて真正面から向き合う場に立って。
「もう、いいんだよ。」そのシンプルな一言は、前後関係のお話をしている際にもたらされました。あの時間はとても苦しかったけれど、同時に、Kさんからもらった宝物のような瞬間があったこともまた、現実でした。
無い記憶を辿り、自分の足元にパックリと口を開けている、記憶の空白という闇を覗き込んで…まっしぐらに、そこに落っこちそうになった私に、Kさんは。
パン、と大きく手を打って。
「もう、いいんだよ。大事なことは、あなたが生きて今ここにいるっていうこと。だから、その時のことはね。思い出さなくてもいい。いいんだよ。」
その一瞬、ふいにパックリ口を開く闇、そこへつい、ぐらりと闇の方へ傾ぐ体を。もういいんだよ、と引きとめる声を。
私はこの時にKさんから、もらいました。
それ以降も何度も、何度も、その闇に落っこちるように視界が奪われて。
(闇はふとした瞬間にそこに現れるのです。だから生活自体が恐ろしかった。)
けれどカウンセリングのあの瞬間、現実に戻るためのそのキーワードを、貰えたことで。
「もう。いいんだよ。大事なのは、今生きてここに私がいるってこと。」
はじめは、闇に落っこちそうになってる事を、意識することから始めて。
「もう。いいんだよ。大事なのは、今生きてここに私がいるってこと。」
ちょっとずつ、ちょっとずつ、胸の中にKさんを招いて。
少しずつ、自分でも、自分にそう言い含められるようになっていって。
…ここに、現実に。踏みとどまれるようにしてくれた。
もらっていない言葉は使えない。
けれどもらえたなら、それが必要だと自分で思えたら。それを握りしめて、生きていける。
そういう体験をくれた人、そういう道具になって私を繋いでくれた言葉、です。