マガジンのカバー画像

【恋物語】蝉時雨

8
運営しているクリエイター

2022年7月の記事一覧

【恋物語】蝉時雨/第一章 色恋

【恋物語】蝉時雨/第一章 色恋

駅の裏にある公園の前で、僕は車を停めた。
もう終電は終わっているし、此処は田舎の古い町。
道は細くて辺りの街灯はほとんど無い。

彼女の話が途切れる度に、蝉時雨がタイミングよく降り始めるような、妙な感覚が今日一日付き纏っていた。

窓を開け、運転席で煙草に火を着ける僕の左腕に、彼女の背中がもたれかかった。
「あとちょっと」
文庫本の左側が大分薄くなっているので、
きっとラストシーンを読んでいるとこ

もっとみる