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プロeスポーツチームの資金調達を独自に分析してみた【Vol.1 FENNEL】

プロeスポーツチーム「ZETADIVISION」の世界大会での活躍などが、TVニュースでも取り上げられるなど更なる盛り上がりをみせる『eスポーツ』

そんなeスポーツ業界において、最近、国内eスポーツチームの資金調達に関するリリースが増えていることもあり、個人的に気になったのでいくつか紹介するとともに、個人的に分析してみたいと思い、その記録としてnoteに記載したいと思いました。
※あくまでも個人の分析によるまとめですその点ご了承ください。


さて、記念すべき第1回のチームは「FENNEL」です。

「FENNEL」は、ストリーマー「仏」こと堀田マキシムアレキサンダー氏が共同代表を務めていることで有名なプロeスポーツチームです。


その「FENNEL」は2022年3月2日、国内投資家を引き受け先とする第三者割当増資により約2億円の資金調達を行いました。

このnoteでは、その資金調達の内容や内訳について、法務局から取得したFENNELの会社登記情報を元に個人的に考察してみました。


1.起業時の出資規模について

FENNELの会社設立時の情報は

会社設立     令和1年10月16日
発行済株式の総数 999株
資本金      999万円

と記載されております。
一般的に出資金の50%を資本金として計上する場合が多いので、設立時の出資金額は想定で1,998万円1株当たり2万円の株価で会社設立をされているものと思われます。

2.FENNEL前期決算状況

一方、FENNELの第2期の決算状況が令和4年3月11日に決算公告を行っております。

決算公告によると、純損失が▲2,635万円と前期赤字を計上しており、その結果、株主資本が▲1,392万円と、いわゆる「債務超過」と呼ばれる状態となっております。
この「債務超過」をいち早く解消する上でも今回の資金調達が必要であったのではないかと想定されます。

3.増資のスキームと資金調達額

資金調達のプレスリリース前の令和4年2月22日に、発行済株式の総数が「999万株」と10,000倍になってます。
これはおそらく「株式分割」という手法を使い、既存の株式を分割して増やしたものと思われます。

これにより、1株当たりの株価が1/10,000、「2円/株」となっていると思われます。


その後、令和4年2月28日、発行済み株式の総数が「1,151万370株」となっておりますので、999万株を差し引いた「150万370株」が第三者割当で発行された株式と思われます。

また、同日、資本金が1億1,261万4,975円になっておりますので、当初の資本金、999万円を差し引いた「1億264万4,975円」が増加した資本金となっております。
通常、会社の増資の際には、出資額の50%を資本金に、残りの50%を資本準備金として計上することが一般的です。(会社法で定められている「増資額の1/2を超えない範囲で資本金に計上しない」ことができるため)

つまり、「1億264万4,975円」の2倍の「2億524万9,950円」が今回資金調達された金額かと推定されます。

プレスリリースでも記載されている「約2億円の資金調達」という文章とも合致しますね。

4.資金調達時の株価と企業価値

今回の資金調達の際に発行した株式の設定株価を算定(資金調達額÷発行済み株式数)すると、

 2億524万9,950円 ÷ 150万370株 = 135円/株

が今回投資家が引き受けた株価となると想定されます。

つまり、1株2円相当で2年半前に設立したFENNELの企業価値を67.5倍の価値で投資家に認めさせて資金調達した、ということですね。
すごいですね。創業時から67.5倍ですから、1,998万円×67.5倍=約13.5億円相当の株式を、創業時のFENNELの株主は保有していることとなりました。

資金調達時のFENNELの企業価値の設定額も、

 1,151万370株 × 135円/株 = 約15.5億円

となり、前期赤字の企業でありながらのこの設定株価は、他のプロeスポーツチームと比較しても国内では相当強気の価格設定ではないかと思われます。

5.株式議決権割合と種類株

さて、増資に伴い重要になるのが、会社を動かす権利「株式の議決権」の割合です。

増資に伴い、株式の議決権割合も以下のとおりになっていると想定されます。

創業時株主 ・・・  999万株(86.8%)
新株主   ・・・ 約150万株(13.2%)

ということで、会社の支配権も創業時株主が持ちながら、多額の資金を調達することができた、というベンチャー企業としては理想的な資金調達を実現できたのではないかと感じてます。

ただ、気になる点が、通常、このようなベンチャー企業への出資を投資家が行う場合は、優先株式で設定するのが一般的かなと思ってましたので、今回のような普通株でかつ株価を高額に設定した形で出資しているのが意外な感じです。

6.今後の展開

さて、資金を調達したFENNELですが、プレスリリースでは以下の3点に力を入れると宣言してます。

1.選手等の採用・育成
2.大会運営のバージョンアップ
3.オリジナルブランドの本格展開

FENNELはCUP戦の開催などで有名ですが、
プロeスポーツ競技シーンでは、あまり目立った成績は残せておりません。
今後調達した資金で、選手の引き抜きなど、より強いチームづくりなどを行い大会での成績を残せるか期待したいですね。

まとめ

盛り上がりをみせつつあるプロeスポーツですが、企業の業績などを見ても、まだまだ投資フェーズであり、今後の更なる成長のためにも、企業の資金力が重要であると今回の分析で改めて感じました。

もし、この記事がご好評をいただければ、次回第2回を執筆してみたいと思いますので、よろしければスキいただけますとモチベーション保てますのでよろしくお願いいたします

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