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連れはアボカド

スーパーで食料品を買うと、ほとんどのものを買い物用エコバッグに詰めるのだが、壊れやすいものや押しキズがついて欲しくないものは肩掛けバッグに入れる。
肩掛けバッグの色はグレー。内側がレモン色。
素材はなんだか分からないのだが、やわらかい。
自立せず、ぐにゃっとしているところが気に入っている。
財布、ハンカチ、ティッシュ、スマホ、Suica、常備薬、老眼鏡、予備のマスク、ボールペンなど、これを持っていれば外出は安心という選ばれしモノたちが入っている。

肩掛けバッグに入れる食材は、卵、ポテトチップス、ミニシュークリーム、アボカドなど。
本当は豆腐も入れたいところだが、万が一の水漏れが怖くて入れたことがない。

買い物から帰宅し、卵やシュークリームは冷蔵庫へ、ポテトチップスはおやつ箱にすぐ入れるのだが、アボカドをそのままにして忘れてしまう率が非常に高い。
あの大きさと黒みがかった色で、バックの中に潜むのが上手なのだ。

うっかり入れっぱなしにしたまま気がつかず、次の日の用事に出かけてしまう。
出先で財布を出そうと中をごそごそしている最中に気づき、ギョッとなる。

一度や二度ではない。両手くらいしている。
先週もそうだった。

◇◇◇◇◇◇

婦人科系のことで気になることがあったので、かかりつけの産婦人科を受診した。
住宅地の中にポツンとたたずむ一軒家のクリニック。

数年前にネットで見つけて、院長先生の丁寧で穏やかな雰囲気が気に入り、婦人科系検診や何が心配事があればお世話になっている。


何度受けても、内診は緊張するし、苦手。
内診やエコーで診た限りは特に異常はないですねと言ってもらえたが、その時点で受けられる検査をしてもらう。
年齢的に更年期に入る時期だから血液検査もしてみましょうか、ホルモンの値がわかりますのでと提案され、採血する。

その結果を聞きに行ったのが先週。
私の肩掛けバックのなかにはアボカドが入っていた。
前日のスーパーで買ったアボカド。


臆病者なので、病院での検査や検査結果を聞くのがすこぶる苦手だ。
健康診断を受けるのでさえも、かなりの勇気を要するビビりである。

この日、私は朝いちばんの予約で、院長先生より早くクリニックに到着していた。
「おはようございます。今すぐ準備しますね」
玄関から駆け込んできた先生に軽く会釈をして、待合で待つ。
膝上のバックの中にはアボカドが入っている。

なかなか呼ばれない…………

検査結果が良くないのだろうか。
先生はどうやって私に伝えるか、言葉を選んでいるのかもしれない。


呼ばれないこの時間がつらい、とスマホをチラッと見ると、noteの通知がきている。
読みたい、でも、ここでは読みたくない。
すきなことは後にとっておきたい。
頑張った後のおたのしみにしたい。


ようやく呼ばれた。
診察室に入る。アボカドも一緒だ。

今、検査結果が出ているものに関しては異常はないこと。
ホルモン値からは、更年期の入り口に立っている状態だということ。
完全に更年期と言い切れる数値ではなく、ややその傾向が見られる程度だということ。
もし症状がつらいようなら、当院で漢方も処方できますとの提案。


まだ受けた結果が届いていないものもあるけれど(居住区のクーポン券を使用して受けた検査は、結果通知到着まで日にちを要する)まずはホッとしよう。

ごく軽いホットフラッシュのようなもの
感情の浮き沈み(落ち込むことが多い)
生理周期が短くなってきたこと

検査結果を見ながら先生とお話して、安心した。
つらいときはまた受診します、そのとき漢方の相談をさせてくださいとクリニックを後にした。

◇◇◇◇◇◇

スーパーに寄って帰ろうかとも思ったけれど、バッグのなかのアボカドを思うと早く家に帰ろうと思った。

今日はついて来てくれてありがとう、と思いながら冷蔵庫にしまった。

そうだ、noteの通知を読んでいなかった。
おたのしみ、とっておいて良かった。
通知やタイムラインに流れてくるたくさんの記事を読んでいるうちに、お腹が空いてきた。

クリニックに行けた。
検査もして、結果も聞いてきた。
よく行ってきた、えらいぞ私、と自分を褒めながら、冷蔵庫を開けて何を作ろうか考える。
アボカドはまだ食べないでおこう。



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