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わたしの夜

「ヨーグルト食べたら寒くなってきちゃった」

半ズボンじゃなくて長いのを履いたら?というアドバイスは無視され、私のベッドに入ってくる次男。

夕飯は終わり、寝る前まで、それぞれが好きに過ごす時間。

洗い物は残っている。
明日のお米を研がなくちゃいけない。
給食のランチョンマットにアイロンしなきゃ。

やる事はあれど、お腹もいっぱい、あとは今日が終わるだけという時間帯が大好きだ。

たいてい私は、自分のベッドにだらんと半身を起こして入りながら、スマホをいじって過ごす。
 noteを読んだり、スマホ内に入れた「テトリス」のゲームをしたり、PTA関係のメールを読み返す。

手にタブレットを持った次男が

「ちょっと入れておくれ〜」

と来るので、シングルのベッドに彼のスペースをつくる。

「お母さん、俺、お風呂入ってから勉強するから」

廊下から長男が大きな声で言い、浴室へ行く音がする。

さてそろそろ、食器を洗うか。
重い体を引きずり、ベッドから出る。
めんどくさ。

「お父さん、今日、遅い?」

「うん、今日は遅い。でも明日は何もないはずだよ」

次男の「魚を飼う」計画は、日々、夫と相談しながらゆるりゆるり進んでいる。

"〇〇くんにばったり会い、飲みに誘われました。ごはん要りません、ごめんなさい"

夕方、夫から届くメールには、よっしゃ!らく出来るぞという嬉しさと、いいなぁ、ひと言で予定変更出来て……という羨ましさが入り混じる。

夫の分は明日の昼ごはんにすればいい。
切り替えが大事。
(夫は朝と早めの昼ごはんを食べて出勤する)


「お父さんとは明日、相談したら」

「うん、そうする。一匹だと寂しそうだから二匹でもいい?」

「もっといていいと思うよ。水槽の大きさを決めてから何匹くらいがいいか、お店の人にも聞いてみるといいよね」


食器を洗い終わり、明朝のお米をセットすると、長男が冷凍庫からアイスを出して食べ始めている。
うちの男性陣は一年中アイスを食べる。
(私は滅多に食べない)

「お母さん、10時からやるわ、勉強」

10時っっっ!!!!!!

裏返った私の声にたじろぎ、

「はいぃぃ〜〜、食べ終わったらやりますぅ〜」

逃げるように去る中2。
10時からやるな、このぶんだと。
知らんけど。

子ども部屋をのぞくと次男はもう寝ている。
かわいい寝顔に今日もお疲れさまとおやすみなさい。

いちばん嫌いな家事、ザ・アイロンかけに取り掛かる。

10時過ぎ長男の様子を見に行くと、勉強してるのかどうか微妙なシュチュエーション。

テスト前後には毎回大量の提出物、早めに着手し「提出日は厳守」としつこく伝える。

「何で『平家物語』なんてやらなきゃいけないんだよぉ〜、まじ、うぜぇ、チッチッチッ」

「舌打ちはやめなさい」

「だって塾長も学校の先生もやってるから」

「あなたはやめなさい。くせになるから。もうなってるから」

「出た、昭和、舌打ち禁止」

「あとさ、これ、この英語のプリント、thinkとthing、意味を反対にしてない?」

「似たようなもんじゃん。知らんがな」

「ちがーう!!!!!」

喧嘩混じりの会話の途中、夫が帰宅する。

「えらいなぁ、こんな時間まで勉強か」

「始める時間が遅いの。遅すぎるのよ」

私の言葉は宙を漂い、長男は英語プリントに向かい、夫は浴室に向かう。

お酒のにおいをさせた湯上がりの夫に、今日の出来事を矢継ぎ早に話す。

子ども達のこと。
母のこと。


夫が寝室に行き、長男は私のベッドの近くに来る。

「お母さん、ちょっとここに居てもいい?」

今日学校であったこと。(主にクラスメイト男子のおバカ話。下ネタ率96%)

生徒会のこと。

塾のこと。(塾長のことを大好きな長男)

話を聞きながら26.5サイズの足裏を揉む。

「イテテテテ、そこ、どこのツボ?」

「目と、あたま」

「そこ、いつも押されると痛いわ」

お母さん、知ってるよ。これから真っ暗な部屋でスタンドの小さな灯りで絵を描くのでしょう。

戦車、戦闘機。

セーラー服の女の子。

吹奏楽部に頼まれた楽器の絵。
楽器の本、学校の図書館から借りたのよね。返却するの、忘れないで。

「お母さん、ありがとう。おやすみなさい」

「おやすみ。早く寝なよ」

真っ暗な部屋、ひとりベッドの中で目を閉じて、明日の夕飯を考える。

よし、豚肉の味噌漬けがあるな。焼けばいいだけ。

近々うちにやってくるであろう魚たちが、半分眠りに落ちている意識のなかを泳ぐ。

たのしげに、ゆらゆらと。





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