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特急わかしおの旅


今から四年前の夏休み、ママ友たちと一緒に鴨川の海に一泊で出かけた。

大人4名と子ども10人(子どもは0歳児から小学3年生まで)

大勢での行動が苦手で出不精の私としては、自分史上最大の決断をし、結果としてそれが良かったというお話。


◇◇◇◇◇◇
長男が在園中に知り合い、下の子もまた同じ幼稚園で引き続き顔を合わせ、降園後も子ども同士が遊ぶのを見守りながら雑談するママ友たちがいた。

私よりずいぶんと若い方々だったが、いつもおしゃれで、ユーモアがあって、さりげない気遣いができる方々で、とても楽しい時間を過ごせていた。

毎年夏休みの始まりの頃に、ママ達と子ども達とで鴨川の海に遊びに行くという話は何回か聞いて知っていた。

有難いことに毎年お誘いの声をかけてくれていたのだが、私には乗り越えなきゃいけないハードルが多過ぎで、「ありがとう、また来年行けるといいな」とふわっと返事をさせてもらっていた。

海→水着
日焼け→私は日光湿疹ができやすく、日焼けは要注意
ママ&子→夫がいないので全部私が面倒をみる
一泊→お風呂は宿の大浴場に一緒に入るのか
旅行→ずっと一緒

……高い。ハードルが高すぎる。彼女たちはいい人達なのだけど、一緒にお風呂だけは無理。お見苦しいものを見せたくない……。

この年は、夫の母から頼まれ事があった日が旅行日と重なっていたのもあり、早々に「ごめんね、夫の家の用事があって」と断りの返事をしていた。

が、夫の母から、突然のキャンセルの知らせ。
空いてしまった。


当時3年生の長男が言った。
「ねぇお母さん、オレも〇〇くんたちと一緒に鴨川行きたいよ。面白いから、一緒に行こうって今日学校で言われたんだ」

長男と○○くんは電車好き仲間。
同じ幼稚園で、今も同じ小学校のクラスメイト。
くだんの鴨川海旅のメンバー。
○○くんは道中に乗る「特急わかしお」の魅力を話してくれたらしい。

そうか、「特急わかしお」で行くんだったね。
わかしお…、わかしお……お母さんも乗ってみたい!!!


◇◇◇◇◇◇

その日、私は道で○○くんと偶然会った。
「ねぇねぇ、○○くんたちが海で泊るホテルの名前ってなんだっけ?」

「えーとね、ちんこホテル

「そっか、ちんこホテルか。で、ちんこホテルの本当の名前わかる?」

「たしか、□□□□□□ホテルだったような…」

○○くんに御礼を言って、ネットで空室状況を調べたところ、まだその日に空きがあった。
すぐ夫にメールすると「どうぞいってらっしゃい」と快諾してもらえ、すぐ宿泊の予約を入れた。

○○くんのママにメールする。
「直前になってしまいましたが、鴨川の日が大丈夫になったので、ご一緒させてもらってもいいでしょうか?今日○○君から泊るホテルの名前を聞いて、今予約入れました」

すぐに返信がきた。
「一緒に行けるの嬉しいです。ちんこホテル、すごくいいですよ!!スタッフさんが子どもにやさしくて。以下、旅行に持っていくといいものリストです。………」

やさしい彼女は、初めて参加の私達家族に必要なものをリスト化して送ってきてくれた。本当に助かった。
息子くんがママに私と道で会ったことを話してくれたのだろう。

◇◇◇◇◇◇

東京駅から「特急わかしお」で安房鴨川駅まで約2時間。
2時間電車中で静かに出来るのは、電車好きな○○くんとうちの長男だけ。
ふたりは黙々とデジカメで車窓からの景色や停車駅を撮影していた。

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「うるさいよ」
「静かにしなさい」
を言い過ぎた大人達は、途中から家族ごとに離れて座る作戦に出た。
効果抜群。
席が子ども同士で固まると、どうしてもうるさくなってしまう。
離れれば静かになる。ラッキーなら寝てくれたりもする。
一緒の車内に乗り合わせた方々に本当に申し訳なかったです。


鴨川の駅にはホテルの送迎バスが迎えに来てくれていて、ホテルに到着するやいなや、水着に着替えて準備をし、海に向かった。

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まずは磯遊び。

岩場に隠れているカニを探す。
もちろんカニのほうがすばしっこいので、なかなか捕まえられない。
軍手をいつの間にか外して、素手でカニをつかめるようになったり。
小さな魚が見えた。
波に打上げられたウニ。

潮風を身体いっぱいに感じながら、うちの兄弟は磯遊びを初体験。
カニって触れるの?触っていいの?と言っていた兄も夢中になった。

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さあ、海。
兄弟には初めての海で、打ち寄せる波に腰が引けながらもきゃあきゃあと歓声をあげて、進んでいく。
「海、初めてなのにこわくないんだね。すごい!うちなんて波を怖がって
入らなかったよ、初めて来た時」
お友達が一緒だからじゃないかなぁと返事をしながら、私も心配していた「海をこわがらないかな?」の不安がいつの間にか消えていた。

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宿泊ホテルにはホテルのプールもあって、海の後はそこでも遊んだ。
ほぼ水の中にいるので、大人も子どももふやけ気味。
プールサイドで食べるラーメンの美味しさは格別。
寒くなった身体はすぐに温かくなる。


私自身、はしゃいで浮かれていた。
楽しい、すごく楽しい。
子ども達と一緒の笑顔で笑っている。
気を遣ってしまい、くたびれるだろうなぁ。
相手に気を遣わせてわるいだろうなぁ。


来る前に想像していた不安は、海とプールに溶けてしまったようだった。

◇◇◇◇◇◇

当たり前のような流れでみんなと一緒に入った大浴場も、恥ずかしいというよりも爽快だった。

私でも、こんなふうに楽しめるんだな……
あまり深く考えすぎないで、流れに身をゆだねるのもわるくないな

自分の中の変化がとても嬉しかった。

いい方々に出会えて、恵まれたのだと感じた。

毎年誘ってくれたことや
「特急わかしお」に乗ることがなかったら、
おそらく体験しなかった思い。

「行きたい」と言ってくれた長男、
長男を誘ってくれた○○くん、ありがとう。

きっと君が〝ちんこホテル”って教えてくれたときから、私の心は大きく動いていたのだと思います。


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「他県への移動を控えましょう」の二年目の夏がくる。

いつかまた「特急わかしお」で向かうから、待っていてね。

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