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「ユウキさん」と再会できない

私が小学6年生の頃、つまり1999年、我が家に初めてパソコンがやってきた。

私は目くるめくインターネットの世界に胸躍らせ、週刊少年ジャンプのHPを観たり、Yahoo!ゲームでオセロをしたりして遊んでいた。

中でも一番ハマっていたのは何と言っても「将棋倶楽部24」での将棋対局だ。私は日夜パソコンの前に座り、日本中の将棋好き達と共に将棋に熱中した。

初めてインターネットで知り合いが出来たのも、このサイトだった。

ユウキさんとは将棋の対局で出会った。

ユウキさんは関西に住む4つ年上の高校生。
柔和でユーモアがあって将棋も強く、私はそんなユウキさんが大好きでよく懐いていた。

チャットを通じて将棋の話、HP作りに関する情報交換や匿名掲示板の話、そう言えばユウキさんの失恋話を聞いた事もあった、色々な話をした。
ある日、互いの顔写真を送り合ったことがある。それまで文字でのやりとりを通してそれなりに親睦を深めて来たつもりだったが、初めて写真を見た時は「本当にこの人は実在するんだ」と思い感動した。

インターネットと出会いたての頃、遠く見ず知らずの人とやり取りすることがとても新鮮で楽しくて、毎日のようにドキドキしながらキーボードを叩いていた日々の思い出は、私の人生の「特別」として今も輝きながら残っている。

ただ、ユウキさんとは20年以上疎遠になったままだ。将棋倶楽部24にも出入りしてる様子はないし、広大なネットの海の中、ユウキさんに再び出会うことは、もう出来ないと思う。

インターネットでの出会いは数多あれど、はて、「別れ」はと言うと正直ピンとくるものがない。
いつも次第にグラデーションが薄くなって行くように関係が離れていって、気が付くと連絡する手立ても手掛かりも無くなり音信不通になっている。
ユウキさんの時もそうだったのだが、ちゃんと「さよなら」した事がない。

現実の世界でも「別れ」というのは曖昧な場合が多いが、相手が死んでさえいなければ、何とか人伝を頼りに疎遠になった人と再会することが出来そうな気がする。
だが、ユウキさんの場合、手掛かりはアルファベット6文字のハンドルネームだけ。そもそも名前が本名かどうかも分からないし、今は違う名前を使っている可能性の方が高い。

どうしたって再会は困難なのだが、一言でも礼が言えたら、少年時代の私の面倒を見てくれて、話し相手になってくれて、素敵な思い出をつくってくれたユウキさんに一言でも礼が言えたらと、最近昔の事ばかり振り返ってるせいか、それとも歳のせいなのか分からないが、とても強く思う。

無闇やたらにユウキさんをネット上で探し回るのは野暮ったくて気持ち悪いのでしない。
ただ、もし万が一に「ユウキさん」と思わしき人とネットで出会った時には声を掛けてみようかな、という気持ちはある。

ちなみに、私が「あせかくさん」を名乗り始めたのは2010年頃で、それまではネット上でも本名を名乗っていた。
なのでユウキさんと再会した時には、本名を名乗るつもりなのだが、もしかしたらユウキさん違いの場合も当然ありえる。

全国のユウキさん、見ず知らずの妙な男が「もしかして右四間飛車のユウキさんですか?」などと尋ねて来たら、それ私ですので何卒ご容赦下さい。

「よろしくお願い致します。」

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