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算数は作業じゃない。世の中を解き明かす計算に挑戦!〜経営コンサルタント(おしごと算数#13)〜

小学生向け、アウトプット型・探究学習プログラム「なりきりラボ」「おしごと算数」(2019年度グッドデザイン賞受賞)。子どもたちの探究心や創造性を刺激する、数十の職業が詰め込まれています。マガジン「なりきりラボ・おしごと算数の世界」では、その一つひとつのタイトルの魅力をご紹介します。第二弾となる今回は、経営コンサルタント(おしごと算数)です。


<プログラム開発者、いわたく&すぎちゃんに聞きました!>

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いわたく(岩田拓真):
株式会社a.school(エイスクール)代表取締役校長。京都大学総合人間学部卒、東京大学大学院工学系研究科修了(専門分野は、脳科学とイノベーション)。大学院在学中に、ひとり親家庭に対して動機づけ教育を行うNPO法人Motivation Makerを仲間とともに創業し、理事に就任。Boston Consulting Groupにて経営コンサルタントとして勤務した後、a.schoolを創業。探究学習の塾「a.school」を運営するとともに、様々な創造的な教育コンテンツの開発に携わる。自分自身も新しいことを学ぶのが大好き。一児の父。

すぎちゃん(杉野 亮介):
慶応義塾大学経済学部卒業。学生時代に学習指導やテニスコーチの仕事を通じて「人に何かを教えること」に没頭。一方、日頃から思考ゲームや数学パズルなどに高じる、根っからのロジカルシンカー。大人の教育を手掛ける企業に7年勤務し、子どもの教育分野へ転身し、算数・数学の魅力を伝えるべく活動中。a.schoolではラーニングデザイナーとして、「おしごと算数」の企画開発に携わるほか、2017年3月〜2019年7月は柏の葉T-site校の同名クラス講師も務めた。


ー まず、「経営コンサルタント(おしごと算数)」はどんなプログラムですか?

いわたく:シンプルにいうと、経営者の課題を解決するのが経営コンサルタントという仕事です。子どもたちにはわかりやすいように、社長の困りごとを解決するよ、と伝えたりもします。解決の仕方は様々で、そこで使われる技も幅広くあるのですが、このプログラムではなかでも「推定と統計」という算数領域に焦点をあてています。算数というより、数学に近いかもしれませんね。

自分で計算式をつくって論理的に推定すること数字データの裏に隠された意味を見出すこと、この2つが大きな目的です。

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ー 推定と統計・・・大人でもちょっと身構えてしまう領域ですが、そもそもなぜ、小学生向けのプログラムとしてこれらを選んだんですか?

すぎちゃん:「推定」については、自分の言葉で式を作れるようになってほしい、と思ったことがきっかけなんです。長年小中学生に算数・数学を教えていて、式を組み立てる力が課題だなぁと感じることがとても多くて。

例えば、「一つ30円のみかんが5つある時、みかんは合計いくらですか」というお題があるとするじゃないですか。いきなり30×5=150、と計算する子がいるんだけれど、よくよく聞いてみると、「今は掛け算の単元をやっているから、とりあえず掛け算をしてみた」と話すんですね。単価×個数=合計金額、という根本的な理解がないまま、計算という作業だけをこなしてしまうんです。

学校で教わる算数が、筆算という処理や手続きに集中しすぎなきらいがあるのだと思うのですが、そこから脱却して今一度、まずは計算につながるストーリーを言葉で示すことに挑戦してもらおうという狙いです。

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ー なるほど、意味がわからないけれど計算はできちゃう、なんてことがあるんですね。これって最近の傾向なんでしょうか?

すぎちゃん:そうですね、昔からあった課題だとは思いますが、最近は特に生活のアナログ度合いが下がったことで、普段計算する機会が減ったのも一因かもしれませんね。例えば、ちょっとコンビニで買い物をするのに、足し算や掛け算を組み合わせて自分なりに暗算をする前に、電子マネーで払っちゃうとか。

いわたく:早く正確に計算できることよりも、計算の意味を理解できることのほうが大事ですよね。特にエントリークラス(小1〜3年生対象)では、正確に推定できることはさておき、まずは一つひとつの論理をふまえて式を積み上げられるようになるのが目標です。「利益とは、売上と費用の差分のことだから、引き算をする」というようにね。

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すぎちゃん:あとは、作業からの脱却にもつながるんですけれど、まずは自分の頭で考えてみてほしくて。今は誰もがパソコンやスマホを持っているから、知らない数値があったらすぐに検索できちゃうじゃないですか。日本には小学校がどのくらいあるだろう、とか、小学生は何人いるだろう、とか。でも実は多くのことって、これまでの経験値や知識をいかして概算することができるんですよね。もちろん、小学生はまだまだ知識ベースが足りないこともあるのだけれども、想像して仮説をたてる訓練はきっといずれ役に立つはず。日頃から、頭を使うことから逃げないでほしいんです。

ー 「頭を使うことから逃げない」ぐさっと来ますね(笑)。統計のほうはどうでしょう?

いわたく:数字データの裏に隠された意味を見出すことが目的なのですが、要するにデータの正しい読み取り方を掴み取ってほしいんです。データってとっても便利なのだけれど、読み方を誤ると害悪のほうが大きくなる場合もあって。今はSNSでプロもアマチュアも自由に発信・拡散できる時代だからこそ、間違った自己流の解釈を流布したり、他人の根拠なき分析を鵜呑みにしたりしないでほしくて。しっかりデータを読み取ることに加えて、それを第三者に説明することで、論理で納得を勝ち取るのも大事。

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そもそも、統計って文系理系問わず、研究やビジネスで一番使われるツール(考え方)なのに、中高数学では傍流扱いで(笑)。数学の他の単元に影響がなくて独立した存在だからか、学年年度末のぎりぎりになって雑に扱われる傾向があるんですよね。でも、理系研究をしていた身としても、元経営コンサルとしても、この考え方だけは絶対伝授したい!と思って組み込みました(笑)。

ちなみに、統計はさすに低学年には難易度が高すぎるので、ベーシッククラス(小4〜6年生対象)向けの内容です。

ー 最後に、プログラム開発者・いわたく&すぎちゃんから子どもたちやご家庭へ向けたメッセージをお願いします!

いわたく:算数嫌いってとにかく、算数がなんの役に立つのか実感が持てない人が多いので、計算式を使いこなすとこんなことがわかって便利なんだ、それを仕事にいかして武器にする人がいるんだ、ということに気がついてほしいです。

すぎちゃん:推定というと難しく聞こえるけれど、日常生活で使える場面はたくさんあります。家族でレストランに行ったら、色々な推定で遊んでほしい。今日のお会計はどのくらいか、とか、このお店はどのくらい儲かっているか、とか。ゲーム感覚で、大人も一緒にやってみてください!

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グッドデザイン賞受賞の小学生むけ・アウトプット型探究学習プログラム「なりきりラボ」「おしごと算数」は、東京は本郷・池上の直営校のほか、全国のパートナー校で受講できます!(2020年4月からは、オンライン受講も可能に!)くわしくはエイスクールのホームページをご覧ください。


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