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小学生が「カイゼン」に挑戦?!〜工場長(おしごと算数#14)〜

小学生向け、アウトプット型・探究学習プログラム「なりきりラボ」「おしごと算数」(2019年度グッドデザイン賞受賞)。子どもたちの探究心や創造性を刺激する、数十の職業が詰め込まれています。マガジン「なりきりラボ・おしごと算数の世界」では、その一つひとつのタイトルの魅力をご紹介します。第三弾となる今回は、工場長(おしごと算数)です。


<プログラム開発者、いわたく&すぎちゃんに聞きました!>

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いわたく(岩田拓真):
株式会社a.school(エイスクール)代表取締役校長。京都大学総合人間学部卒、東京大学大学院工学系研究科修了(専門分野は、脳科学とイノベーション)。大学院在学中に、ひとり親家庭に対して動機づけ教育を行うNPO法人Motivation Makerを仲間とともに創業し、理事に就任。Boston Consulting Groupにて経営コンサルタントとして勤務した後、a.schoolを創業。探究学習の塾「a.school」を運営するとともに、様々な創造的な教育コンテンツの開発に携わる。自分自身も新しいことを学ぶのが大好き。一児の父。

すぎちゃん(杉野 亮介):
慶応義塾大学経済学部卒業。学生時代に学習指導やテニスコーチの仕事を通じて「人に何かを教えること」に没頭。一方、日頃から思考ゲームや数学パズルなどに高じる、根っからのロジカルシンカー。大人の教育を手掛ける企業に7年勤務し、子どもの教育分野へ転身し、算数・数学の魅力を伝えるべく活動中。a.schoolではラーニングデザイナーとして、「おしごと算数」の企画開発に携わるほか、2017年3月〜2019年7月は柏の葉T-site校の同名クラス講師も務めた。


ー 「工場長」とは、これまた渋い職業を選びましたね!どんなお仕事なんですか?

いわたく:一言でいうと生産管理なんですが、限られた資源を使ってどれだけ効率よく質の高いアウトプットを出すか、という仕事です。資源には人や時間、素材などがありますが、今回は特に時間と素材に着目しています。

「工場長」がほかの(おしごと算数の)職業と違って異色なのは、これという算数領域(単元)に結びついていないところ。様々な算数的見方・思考を総合的に使うというか。あえていうと、時間効率を数字の観点から整理すること、(素材を最大限生かすために)材料効率を図形の観点から整理すること、の二つです。

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すでに13の職業タイトルを扱ってきたおしごと算数なんですが、小学生が学ぶ算数の単元をあらかた網羅してしまっていて。一方で、実生活や仕事で使う算数って単元ごとに整理されていたり、独立したりしているわけではなくて、単元を越えて連関することが多い。であれば、さまざまな単元のワザを駆使しながら、算数の総合力で挑む仕事はなにかな、と考えたんです。

すぎちゃん:「工場長」というタイトルではあるのですが、実は世の中のあらゆる仕事でいかされている見方・考え方を磨く内容なんです。製造現場ではQCDバランス(※)という専門用語を使いますが、それこそオフィスワークや家事にも通じるところがあって。すごーく平たい言葉で表すと、仕事の進め方・生活のやりくりをもっと効率よく!ということですね。

※QCDバランス:Q=Quality(品質)、C=Cost (費用)、D=Delivery(納期)のバランスのこと

ー 生活のやりくりの効率化が気になります・・・!例えばどんなところでいかせるんですか?

すぎちゃん:さきほどの時間効率アップの例ですと、料理ですね。お湯を沸かしている間に野菜を切って、コンロを使う時間帯をずらして複数品目に火入れして・・・というのは、どこのご家庭でも自然とこなしていますが、プロセスの制約(湯沸かしの待ち時間)、機材の制約(コンロの数)などを的確に把握してこそ為せるワザです。対して、材料効率アップに近い例は、整理収納かな。片付け上手な方って、空間の制約にぴたっとはまる収納法を見つけられますよね。

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ー なるほど。「工場長」と聞いて、大分マニアックな印象があったのですけれど、意外と身の回りの暮らしに直結する内容なんですね。

いわたく:そうなんです、ちなみに家事をこなす人々のすごいところは、これを反射的に判断する力があるところで。まず一番にやらなければいけないことを瞬時に見極めて手を動かしながら、次のステップを考えるという。ちなみに僕自身は、熟考して整理する力はそれなりに強いと思うのですが、こういう瞬間的判断力が求められる場面に出くわすとてんでだめ(笑)。

すぎちゃん:だから今回は、頭と身体の両方を使うミッションをたくさん用意したんですよね。

ほっしー:家庭だけでなく街なかに目を向けると、オーナー一人だけで経営している喫茶店で、オーダーが時間差で入ったらどうするか?!なんていうシーンもありますよね。(注:横でインタビューを聞いていたほっしーが飛び入り参加!ほっしーって誰?と思った方はこちらの記事をどうぞ。)

ー 大きなコンセプトは理解できたのですが、もう少し具体的なワークやミッションの中身を知りたいです。どんなことをやるんですか?

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すぎちゃん:いろんな難易度の製造ミッションを用意しているのですが、例えばこれ、おりがみカードケース製造。子ども達2-3人がチームになって生産ラインを組んで、仕様が決まったおりがみカードケースを指定個数つくって、そのスピードを競うというもの。「プロセス図」を描いて、ちゃんと生産計画をたてた上で、実際にかかった時間と比較して予実管理までしちゃいます。計画通りにいかなかったら、何が悪かったんだろう、どこを改善したらもっとスピードアップできるか、仕上がり(質)に影響はでていないかなど、PDCAサイクル(※)もまわすんです。

※PDCAサイクル:P=Plan(計画する)、D=Do(実行する)、C=Check(精査する)、A=Action(改善する)、この4つプロセスを何度もたどること。

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いわたく:子どもたちには、機械になりきってもらうんですよね。立てた生産計画どおりの時間しか稼働できない(笑)。あと、工程ごとに分業して流れ作業にしたほうがいいのか、作業の縦割・横割についても体感してもらったり。

すぎちゃん:折り紙の作業はわかりやすいんですよね、作業効率をあげようとしてまとめて折ったり切ったりすると質が下がりやすくて。

ほっしー:ちなみに、中高日本一の折り紙クラブでは、部長は紙を切るだけなんですよ。折り紙クラブなのに、折らない(笑)。部長は紙を効率的に折るプロフェッショナルで、素材の切り出しを正確かつスピーディにやることが、製作プロセス全体の要となるんです。

ー 笑。かなりイメージアップできてきました!材料効率の話はどうですか?

いわたく:ミッションとして取り組むのは、一枚の板や布を最大限有効活用してパーツを切り出すような課題です。

すぎちゃん:専門用語でいうと、「敷き詰め」もしくは「平面充填」と言われる領域です。小学算数ではやらないんですけれど、これも日常生活に滲み出る、結構大事な概念で。

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ー 確かに、洋服のパーツ裁断なんかもそうですよね。さて、盛り上がってきたところですが、そろそろまとめに入っていただけますか。

すぎちゃん:今回はホームミッションがアツいんで、ぜひ気合を入れてご家庭で取り組んでほしいです!特にいろんな家事のタイムを競うミッションは、普段お子さんに楽しくお手伝いをしてほしいな、と思っていらっしゃる保護者の方々にオススメ。

あと、教室にいながら工場見学ができてしまうのもポイントです。普段モノに囲まれて生活している子どもたちにとって、生産過程って完全にブラックボックスになっているじゃないですか。この鉛筆ってこんなふうに作られているんだよ、というのを映像素材を使って見せていきます。

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ほっしー:オープンキッチンのレストランにご家族で訪れるのもいいですね。オーダーをとるところから調理、配膳まで全てのプロセスを観察できる、ザ・街なか工場!いつか中高生になってファーストフードチェーン店でアルバイトをするようになったら、それまでブラックボックスだった生産過程が目の前に広がるので、それも楽しみですよね。

いわたく:なりきりラボにしてもおしごと算数にしても、0から1を生み出すような企画系のタイトルが多いなか、今回は「カイゼン」に焦点をあてた、比較的地味に見える仕事かもしれません。でも実際は、こういうところで積み重ねられる工夫がイノベーションにつながることもあるんです。 子どもたちには、生活の中で算数的視点から効率化する術を学んで家事に貢献したり、仕事の実務における工夫に興味を持ってほしいですね。

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