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ものが動く仕組みを徹底解剖!〜メカエンジニア(なりきりラボ#3)〜

ボールペンや修正テープ、鍵、自転車・・・私たちは普段からたくさんの道具や機械を使っていますが、ふと「どうしてこんな動きをするんだろう?」「どんな仕組みで動くのかな?」と不思議に思ったことはありませんか?

そんな「ものが動く/ものを動かす仕組み=機械機構」を設計して形にするのが、メカ(機械系)エンジニアという仕事です。エンジニアにとって一番大切なのは、手を動かして試行錯誤を繰り返すこと。このプログラムでは、身の回りの道具や機械を分解・観察したり、段ボールメカ工作キットを組み立てたりしながらさまざまな機構について探究し、その集大成としてオリジナル段ボールメカづくりに挑戦します。

※本記事は、小学生向け探究学習プログラム「なりきりラボ®」「おしごと算数®」(グッドデザイン賞受賞)の各テーマを紹介するシリーズ記事の一つです。

<プログラム開発者、いわたく・きいろちゃん・ほっしーに聞きました!>

いわたく(岩田拓真):
株式会社a.school(エイスクール)代表取締役校長。京都大学総合人間学部卒、東京大学大学院工学系研究科修了(専門分野は、脳科学とイノベーション)。大学院在学中に、ひとり親家庭に対して動機づけ教育を行うNPO法人Motivation Makerを仲間とともに創業し、理事に就任。Boston Consulting Groupにて経営コンサルタントとして勤務した後、a.schoolを創業。探究学習の塾「a.school」を運営するとともに、様々な創造的な教育コンテンツの開発に携わる。自分自身も新しいことを学ぶのが大好き。一児の父。

きいろちゃん(木幡壮真):
a.school講師・プログラム開発・新規事業立ち上げ運営リーダーを務めるマルチプレイヤー。東京大学工学部卒。大学在学中、教育系ベンチャーにて中高生向け進路プログラムの企画・営業・運営のインターンを2年間経験。東京大学アントレプレナーチャレンジ2018では教育系サービスを考案し特別賞を受賞。同年11月よりa.school「なりきりラボ・おしごと算数」メンターを務め、2020年4月新卒でa.schoolへ入社。

ほっしー(星功基):
学び表現作家/a.school研究開発者。慶應義塾大学環境情報学部卒業。佐藤雅彦研究室にて「ピタゴラスイッチ」(NHK Eテレ)や「日常にひそむ数理曲線」(ベネッセコーポレーションとの共同研究)などのプロジェクトに携わる。ベネッセコーポレーション進研ゼミ中学講座にて、12年間、理科や数学の教材編集、デジタル推進を担当。「学びは自分たちでつくる:Cスタ」など、学びと表現の間を探る活動・作品づくりを行う。「文字とことばのデザインユニット・二歩」として2冊の絵本を刊行。

ーーエイスクールの大人気プログラム、「メカエンジニア」が久しぶりに通塾メニュー(2ヶ月プロジェクト)として開講されますね。

いわたく:そうですね、春・夏・冬の季節講習ではほぼ毎回開講しているのですが、2ヶ月間がっつり取り組むのは本当に久しぶりですね。

「メカエンジニア」は、「エレキエンジニア」「プログラマー」とならぶ「なりきりラボ」シリーズの"ものづくり三兄弟"の一つなんですが、子どもたちにとっては一番身近な存在じゃないかな。

ものづくり三兄弟

プログラムは、身の回りの道具や機械の仕組みに関するクイズを投げかけて「そういえば、これってどうしてこんな動きをするんだろう?」と子どもたちの興味関心を引き出すところからスタートします。

例えば洗濯機。どのご家庭でも毎日のように使うこの機械、よく見てみると給水や洗濯槽の回転、脱水などさまざまな機能がありますよね。それぞれがどんな仕組みで動いているのか、一つひとつ細かく観察・分析していくんです。

ーー仕組み・機能・機構・・・似たような意味の言葉がたくさん出てきて、機械音痴の私はすでに混乱し始めています(笑)。

きいろちゃん:例えばさきほどの例だと、洗濯機の目的は「衣服を綺麗にすること」ですよね。これを達成するための役割として「洗浄する」んですが、これを機能といいます。洗浄はさらに「重量計測」「給水」「槽回転」などの細かい機能に要素分解することもできます。

これらの機能を実現させるための仕組みが機構=いわゆる仕組みで、ねじや車輪、歯車などたくさんのパーツ(部品)で構成されています。

機械の仕組み分析


ほっしー:
機構の例としてわかりやすいのは文房具かな。ボールペンの頭を指でノックするとペン先が出る、というのは当たり前のこと。でもこの動きをもっとつぶさに観察すると、「指で押す→ペン先が出てくる→ペン先が少し戻る→止まる」という細かい動作が見えてきてます。

この一連の動きを影で支えているのが、バネ機構なんです。人力で押し出されたペンは筒を通ることで直線運動し、さらにバネ機構による反発力で少し戻るんです。

機構の分析

ちなみにボールペンの場合、機構の動力となるのは人の力=指で頭を押すこと。動力に電気やガソリンなど人力以外のものが使われると、機械と呼ぶことが多いですね(人力の場合は「器械」と表現して区別することも)。

いわたく:言葉の定義はひとまず置いておいて、とにかく身の回りにあるシンプルな動く道具をじっと観察・分解・分析してみるのがメカエンジニアに近づく第一歩になります。これってなんの力で動くのかな(動力)、なかにどんな部品がどのように組み合わさって動くのかな(機構)、と現物を前にして順に見ていくとそんなに難しいことではないのですが、一つひとつを丁寧に深く考察するのがコツです。

子どもたちに「これってどんな仕組みだと思う?」と問いかけると、たまに思考停止して全部投げ出したくなっちゃう子がいるのですが、それは「手を動かして試行錯誤する」ということに慣れていないからなんですね。一つひとつ部品を外して中身をのぞいたら意外と簡単だった、ということも少なくないので、授業ではたくさん手を動かして「まずはやってみる」ことへのハードルを下げ、試行錯誤の姿勢を養います(これが今回プログラムの肝!)。

一度分解したものを組み立て直すのもオススメですよ。

ーーなるほど、「エレキエンジニア」の時もそうでしたね。頭で理解したつもりでも手を動かしてみるとうまくできなかったり、逆に手を動かしたらすっと頭で理解できたり、試行錯誤から学ぶことは大きそうですね。

きいろちゃん:授業では身近なものの分解だけでなく、オリジナルの段ボールメカ工作キットにも取り組むんですよ。これ、実は説明書がないんです・・・!子どもたちは完成品やパーツを観察したり、動きを試したりしながら中の機構を想像して部品を組み立てなきゃいけないんです。まさに頭と手の両方を駆使して試行錯誤するんですが、なかなか一筋縄ではいかないキットに仕上がっているかと(笑)。

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<真剣な眼差しでパーツを組み立てる子どもたち>

季節講習ではディスペンサー(上に置いたものが一つずつ出てくる仕組み)3種を扱うのですが、教室通塾/オンライン通塾ではこれに加えてカウンター(数をカウントする仕組み)づくりにも挑戦できますよ!キットの詳細はまた今度詳しくご紹介しますね。

段ボールキット

ーー工作キットは子どもたちが一番盛り上がるワークですよね。さて、一通り仕組みを探究していくつかの実践ワークをクリアしたら、最後はどんなプロジェクトに取り組むのでしょうか。

いわたく:段ボールを使ったオリジナル・メカ作りに挑戦します!段ボールって簡単に加工できるわりに丈夫なので、手作りメカの素材として最適なんですよね。

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<段ボールで輪ゴム銃をつくった男の子。段ボールの引き金を引くと、輪ゴムが発射される仕組みになっています。>

今回は時間制限もあるなかでの制作なので、全てを完成させることにこだわりよりも、まずは中の機構=動く仕組みの設計・実現を最優先して、外側(筐体、きょうたいともいいます)に取り組むのは最後です。なので、ただ見た目だけメカっぽい作品はNG。

ほっしー:新しいメカを設計するときは、まずはそのメカの目的(=なにをしてくれる?)を考え、その目的を達成するにはどんな機能が必要で、その機能をどんな機構で実現するか、という順序で考えていきます。さきほどの洗濯機の例と同じ流れですね。

ーーここまでお話を聞いて、自分自身は身の回りのメカに関心を持ったことが一度もなかったな、と気がつきました・・・。ロボット工作やプログラミングもそうですが、好きな子は自発的にどんどん学ぶけれど、縁のない子はなかなか学ぶきっかけがないものですよね。

いわたく:身の回りの当たり前を一度は「どうして?」と問い直す質問力・観察力や、まずはいじって中をのぞいてみる好奇心・試行錯誤力があるかどうか、というのは大きいかもしれませんね。工学系の興味関心が育つかどうかは、特に後者の経験値が大切かな。

意外と小さな子ほど、身の回りのおもちゃの部品を外したりつけ直したりと、モノへの関心を"いじくりまわし"(Tinkeringということも)で表現していることが多い気がします。ご家庭でできることがあるとすると、それをNGとせず、例えば分解しても困らないような安価なおもちゃや機械を用意して自由に遊ばせる、というような環境設定でしょうか。あとは、シャーペンが壊れた、修正テープが出てこない・・・といった困りごとに対して、一緒に見てみる・やってみる癖をつけるといいですね。

今回のプログラムは、興味関心を引き出す→まずはやってみる→仕組みの味見方・考え方を習得する→自分で仕組みを考案・制作する、と初心者でもステップ・バイ・ステップで学べるように工夫しているので、メカ好きの子はもちろんのこと、あんまり関心ないな、ちょっと苦手だなという子こそ挑戦いただきたいです!

きいろちゃん:私はそれこそ大学で機械工学を専攻していたのですが、いざ今回のプログラム設計に取り組もうとなると、わからないこと・実践値が足りないなと感じることが結構ありました・・・。かなり試行錯誤した結果、工学部出身者として太鼓判を押せる、メカの"基本のキ"が学べるプログラムに仕上がったと思います(笑)。

改めて感じたのは、身の回りの何気ない文房具一つとっても、その仕組みは相当考え込まれているんだな、ということ。メカとしての文房具探究、オススメです!

ほっしー:そうなんですよね、ものづくりというと最先端技術を駆使したハイテクマシンに目が行きがちなのですが、アナログなものにも人類の英知がたくさん詰まっているんです。

最近流行りのプログラミングも実際に活用するとなるとほとんどの場合、なにかしらの物理的な動きとつなげなければいけません。ロボット教室では比較的、プログラミング、エレキエンジニアリング、メカエンジニアリングという3つの分野を幅広く扱っている印象がありますが、いかんせんロボットに応用できる一部の機構しか扱わず、メカそのものの学びとしてはちょっと物足りなさがあるかな。やっぱりまずは、身近なモノの観察・分解から学べることが大きいんじゃないかなと思いますね。

\お知らせ/
エイスクールが主催する小学生のアウトプットの祭典「小学生探究グランプリ」の今夏のテーマが「メカエンジニア」です!自分がつくった段ボールメカ作品をプロに審査してもらえるチャンス!詳細は小学生探究グランプリHPにて近日公開予定!

\2021年度通塾生募集中/
メカエンジニア(なりきりラボ)は5/31(月)より新規開講!エイスクール直営校(本郷・池上・オンライン)のほか、全国のパートナー校でご受講いただけます。


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