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実は正解のない、パターン化もできない栄養指導 私が“リアルな症例を通した学び”を推奨する理由


Ascenders Collegeに関わるスポーツ専門職の人へ、その職種をめざしたきっかけや現在の仕事内容についてインタビューする新コーナー。第2回ではスポーツ栄養士としてJリーガーや東京オリンピックにも携わった佐藤彩香さんのインタビュー後編をお届けします。

佐藤さんが栄養指導をはじめたきっかけなどお話いただいた前半の記事はこちら
https://note.com/ascendersinc/n/ne889642390d8

なりたい姿になれた瞬間を目の前で味わえる醍醐味


今はいくつかのスポーツ現場でそれぞれ選手・チームの栄養管理を担う佐藤さん。そもそもサポートする現場とはどのように繋がっていくのでしょうか?
「私が長く関わっている強化指定の部活でいうと、紹介がきっかけでした。そちらで活動されているトレーナーさんから、『栄養士がいない』という話をもらって。いざ選手に話を聞きに伺うと、栄養が十分に入っていない様子が見えましたし、トレーニングだけだと限界がある風にも思えました。」
そして始まった、佐藤さんと選手の二人三脚。具体的にはどういった働きかけをするのでしょう?
「オンラインミーティングを月に1回しています。あと特に最初の頃は、その日の食事を写真で送ってもらって、それを踏まえたアドバイスもしていました。さらにそこで得た情報をもってスタッフミーティングも行って。栄養士だけが知っていればいい、というわけではないですからね。」
そう思うと仕事は尽きないようにも感じられ、現に佐藤さんからも日々仕事に奔走する様子が見受けられました。ただ、それを超えるやりがいもあると当人は胸を張ります。
「食事って毎日口にするものですよね。そうやって食べるものを通して選手を後押しできるし、いざ夢がかなう瞬間や、なりたい姿になれた瞬間に居合わせることもできる。現場にいるのが好きだからというのもありますが、“その場で味わえる”というのは何にも代えがたい喜びです。」


栄養士として、何より“佐藤彩香”という一人の人間として


では、そうした喜びに至る過程で、大変だったこととはどのような瞬間なのでしょうか?
「現場に出たての時が特にそうだったのですが、栄養の知識だけを詰め込んで出かけていて。『糖質がどれくらい、脂質がどれくらい』って選手に伝えようとするんですが、当然そのままじゃ伝わらないんです。相手のわかるような表現や伝え方に変換して、理解してもらえて、初めて行動変容が期待できる。そういう意味で伝え方も勉強しないといけないと痛感しましたし、“栄養士”とはいっても様々学問に触れないといけないんだと気が付きました。」
他の分野を学ぶ必要を感じてから佐藤さんは、トレーナーが行く講習会に連れてってもらうこともあったそう。別の職種がどういった視点を持っているか学ぶには、いい機会だったと話します。さらに話を進めると、「同時に一人の人間として大事に思っていること」についても教えてくれました。
「管理栄養士として、というのと併せて、“佐藤彩香”という人間をちゃんと理解して受け入れてもらうことも大事かなと考えています。私は極論、『佐藤さんがいると現場が明るくなるよね』という立ち位置でもいいと思っていて。やっぱり知ってもらいたいですし、私も選手や競技のことを知りたい。ですから栄養士である以前に“その場をつくる一員”として、現場では一緒に運動したり、ジムにも行ってみたりと、自分なりの関わりを持つようにしています。」

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栄養指導に正解は無いからこそ、授業で一緒に考えたい


さてそんなアクティブな佐藤さんは、現在Ascenders Collegeでスポーツ栄養指導を担当しています。具体的に授業ではどのようなことをされているのか、普段は受講しないとわからないだけに聞いてみました。
「Ascenders Collegeでは同じ科目でも初級・中級・上級とクラスが分かれているのですが、スポーツ栄養指導においても、『スポーツ栄養とは』というところを皮切りに、徐々に実践に近い学習ができるように構成しています。中級、上級では、私が担当しているアスリートから事前に許可をもらって、実際に送ってもらった食事の写真、抱えている課題などを情報として共有します。どうしても現場に出るまではそういったリアルなケースをなかなか見られないと思いますし、そこから着眼点やアドバイスを一緒に考えていくことこそ大事だと思っているんです。」
そう力強く述べる理由には、スポーツ栄養士という仕事の面白さと難しさが詰まっているのかもしれません。佐藤さんはこう話します。
「栄養指導に正解は無いですし、仮にマニュアルはあってもそれ通りにいくとは限らない。型にはまりすぎずに考えることで、引き出しを増やしていくことが一緒にできたらというのが私の願いです。現場に出ても、選手は一人ひとり違いますから、ワンパターンしか持っていないと対応できません。感覚的な人もいれば論理的に考える人もいますし。実際のところが現場に出ないと感じられないからこそ、授業では症例を扱うようにしているんです。」


では最後に、佐藤さんが思い描く今後の目標を教えてもらおう。


「実業団や大学の部活動などにも今は携わっていますが、最終的にはジュニア・育成年代に関わりたいと思っています。というのも、今でも食育が行き届いていなかったり、共働きの家庭が増えて食事が思うようにいかなかったりする実情があると捉えていて。まずはSNSや公式LINEで親御さんに知識を共有するなど発信を続けていきたいですし、ゆくゆくは簡単にできるミールキットも企業さんと一緒に開発できたらと夢を描いています。」
こんな夢を語れるのも、もしかしたら早くから現場での肌実感を積んだ佐藤さんだからこそなのかもしれない。そう思っていたときに、「現場で話せるようになりたい!って人は是非」と門戸を叩くことを勧めてくれた彼女。栄養士という職種の可能性を広げる上でも、大きな一歩となる学び舎が、すぐそこにあるのかもしれない―。

佐藤さんがスポーツ栄養をはじめたきっかけや想いを語った前半の記事はこちら
https://note.com/ascendersinc/n/ne889642390d8

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