異性の左手の薬指を見なくなった
いろいろなことを一人で考えた。
私から逆プロポーズしようかとも考えた。
ちょうど相手の誕生日が近く、お祝いする日にカジュアルな感じで伝えてもいいかもと思ったりした。
早く結婚したい気持ちや焦りは多分ない。
でもなぜか、私は急いでいる。
待つのが嫌いなのだ。
ビルの8階から1階まで降りたくて、いつ来るか分からないエレベーターをじっと待つより、階段を走って降りて行くぐらいには、待つのが性に合わないのだ。
"どうして2人が結婚するのに、女側が待たなきゃいけないのか"
"どうしてプロポーズは男の人からするのか"
そんなことを1人で考えていると、自分からプロポーズしてもいいのではないかと思ったりした。
しかし結局、彼がそういうセッティングをしてくれるということで、急遽考案した逆プロポーズ計画は白紙になった。
彼が予約してくれたレストランを調べると、プロポーズプランや記念日プランなどが充実しており、ものすごく洒落たフレンチレストランだった。
お店のHPを見るだけでニヤニヤと笑ってしまう。
2人でお店にいる様を思い描き、あまりにも想像できなさすぎて、笑ってしまうのだ。
誰かが自分を喜ばせようと、自分のために準備してくれるのは、どうしようもなく嬉しいものだ。
仕事に行っても、自分がその状態であることを周囲に知られていないことは、すごく大きな秘密を持ったような、早く大きな声で言いたいような、そんな気持ち。
そして最近、気付いたのだ。
異性の左手を随分見ていないことに。
婚活をしている間、見知らぬ人の左手の薬指に目がいった。
街ですれ違うサラリーマン、仕事で関わりのある男性、特に同世代の異性が近くを通ると、その左手を、無意識のうちに見ていた。
左手の薬指を確認することに、特に意味はなかった。
ただ見て、この人は結婚してるのか、結婚してないのか、指輪をつけてないけど結婚してるかもな、そんなことを静かに思う、ただそれだけだった。
自分が結婚していないことに引け目があったわけではない。ただ、知らず知らずのうちに、そういう焦りを積み重ねていたのかもしれない。
それは多分、自分と彼の関係がうまくいくだろうと安心しきっているから。
彼を信じ、自分を信じ、そして、その間の関係性を信じているから。
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