『本好きの下剋上』感想

※『本好きの下剋上』最終巻までのネタバレが含まれます


2023年の11月の後半ぐらいから『本好きの下剋上』を一気読みしました。

年内に読み切ろうと頑張っていましたが、steamのクリスマスセールで『CupHead』と『Detroit』を買ってしまい、最終巻を読んだのは一日オーバーの2024/1/1でした。



大雑把なあらすじ

  • 本に埋もれて死ぬほど本が好きだった女性が、魔法や身分差が存在するファンタジー異世界に転生する。

  • 平民でかつとても虚弱な少女・マインに転生した。周りには本もなく、身の回りの識字率もほぼゼロに近かった。

  • 身の回りに本がなくても、彼女の内側には本を読みたいという欲求が前世から消えず残っていた。

  • マインは本のために奮闘して、出来ることや仲間を増やしていく。

  • 平民から神殿の子、そして貴族から領主へとタイトル通りの下剋上を繰り返す。

  • 立場が変わる毎に大きく変わる常識の乖離に悩まされながらも、新しい思考を身に着けて変化と成長を繰り返す物語。


好きだった点

  • [1章]身の回りに本がなかったから、紙を作るところから試行錯誤をする。その紙を作るためにまず体力づくりなど、とにかく遠回りをする。その一歩下がって二歩下がる試行錯誤のフェイズは読んでいて主人公の応援をしたくなるものだった。

  • [1章]商会との繋がりができて一気にマインの世界が広がる。商会などの大人の世界の価値観が入り込むと、今までとは違う主人公の姿やキャラクターが現れる。1章だけに限らず、この先はこの面白さがずっと続く。それが一番おもしろかった。

  • [2章]神殿編。平民のマインに職業とも言える立場が出来る。大事な家族と少しずつ離れた隙間に、新しいキャラクターが入ってくる。フラン、ギル、デリアが服をもらって喜ぶシーンは5章まで読んでも一番好きなシーンかもしれない。

  • [3章]貴族になって、また貴族としての常識に呑み込まれるマイン。その中で微かな繋がりとしてトゥーリやルッツたちとの会話が癒しだった。

  • [3章]ヴィルフリートが白の塔に入った関連で、アンゲリカがヴィルフリートを組み伏せたシーンは流石に「いやすごいな」と思った。無敵か?と思ってたら無敵だった。アンゲリカはいい臣下。
    白の塔に入った関連で主要メンバーが集まって会議するシーンはよかった。貴族対平民の対立を読むことが多かったから、貴族対貴族でしかも沙汰を振りたくない親心も混じった会話は読み応えあった。

  • [4章]貴族院編。一生貴族院編やってて欲しいぐらいには面白かった。6年生編までプロットあるんだろ?出してくれくださいませ。

  • [4章]国内の他領の常識などが入ってきて、一気にガヤガヤし出す。1年生編の「王族の古代魔術具の取り扱いをかけたディッター」とかそれだけで面白いじゃん。そういうの6年間やってくれよ!!!

  • [4章]自領の特産物をどうするかなどの会話から内政モノが読みたくなった。マインが自分の前世から引き継いだ記憶をはっきり「手札」って言うの割と好きだった。

  • [4章]後方彼氏面マン(フェルディナンド)が好きではないから、とにかくしっちゃかめっちゃかにするマインと、国内で気をもむ大人組という構図が大好きだった。そういうの6年(略)

  • [5章]いい挿絵が多かった。最終巻最後の挿絵は全世界の人が望んでたイラストだと思う。口絵じゃなくて最後に表示されるのにくい演出だった。額縁に飾って後世に残してくれ。

  • [all]読みやすい。全体通してつまるところがなかった。


好きじゃなかった点

  • 5章全般

急いで終わらせてるような印象を5章通してずっと感じていた。(感じているだけの個人的な話)

2巻から引っ張ってきたゲオルギーネの話があっさり終わり過ぎてて、フェルディナンド救出とかどうでもいいから引っ張ってきた展開に見合った話の大きさでオチを書いて欲しいと思った。

フェルディナンドが最後まで好きになれなかった。
マインの「本好き」という属性を読者として一番重要視していたため、それを制限したり餌として使ってマインを扱っている姿に好感が得られなかった。
最終巻で家族に対する想いとか知っても変わらなかったし、「この本にそもそも恋愛求めてないけど。。。」みたいな気持ちだったからその反発もある。


総評

長いシリーズだったけれど飽きずに読めた。
出来事の因果関係を説明していなかったことを、後の章で小出しにして読者に気づかせるなど、結構出来上がっている設定が地盤にあるのか話が崩れることがなく、最後まで次の展開への期待を持ちながら読み進められた。

自分がいる場所が変わると常識も変わる。
常識が通じないことを受け入れた上で自分のやりたいことを突き通す姿は、本自体の読みやすい文章と相まって、子供が読むのにいい教材だと思った。


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