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国道376号旧道群②~周南市大道理地区

旧道区間2

旧道区間2に入っていく。
この区間については、地理院地図では道自体が描かれていない。上のGoogleマップと下の地理院地図を見比べてみてほしい。

田舎とはいえ、それなりに民家もある集落内で、自動車交通も十分に可能な舗装道が一切描かれていないという事実はなかなかに衝撃的だった。僻地の山道や廃道化した道が描かれていないことは割りとあるけれど、ここまでのものは珍しい。

黄色ガードレールに沿う道が旧道

こんなに立派な道だよ?道に面して建てられた民家も多く、生活に密着した旧道らしい旧道なのだが、なぜか現道ができた際に地図からもれてしまった。それならば私が拾って道の存在を証明してやらないと。

旧道に入るとすぐに、富田川(とんだがわ)を跨ぐ桁橋が目につく。旧道側はガードレールが塞いでおり、現在は利用されなていない廃橋と思われる。橋桁からはサビの浮いた薄い鉄板などが垂れ下がっている。その意味は分からない。
この橋は、過去の地形図にも描かれていないが、現道が出現する以前は、対岸の集落や田畑を短絡する通路として利用されていたものと思う。

なお、帰宅後に過去の地形図と航空写真を調べたところ、この小さな橋は地形図に記載されたことはないが、1960年代からの航空写真には写っており、対岸の田への通り道となっていたことが確認できた。

1970年代航空写真。白黒だった60年代にも同じ位置に橋を確認。

橋を横目に、先へ。

旧道は、現道より3mほど低い位置を並走するように伸びている。右側には民家が軒を連ねる。旧道から現道へは、この写真手前左側に写っているスロープや、奥に見える黄色ガードレールのスロープを使って進入できる。

これが奥の方のスロープ。
なお、ちょうど軽自動車が停まっているところに橋と、右方向へ延びる築堤が確認できるが、これらは国道376号の現道ではない。現道は、スロープの上からゆるやかに左にカーブして続いていく。

スロープ周りを撮影してみた。田舎で交通量も多いとは言えない現道に通じる施設としては、なんとも立派というか、自動車専用道路へのインターチェンジのような規模感。旧道を跨ぐ橋があるから余計に構造物が複雑化して、かっこいい見た目になっている。さすがは国道。

スロープを過ぎ、橋をくぐると、いよいよ旧道は現道との隔絶を深くしていく。先程まで3m程度の高低差ですぐ脇にいると思っていた現道は、富田川の対岸にあって、手の届かない高みへと去ってしまったようだ。
しかし、再び現道と見えることを諦めきれない旧道は、左にカーブして水平方向の距離を縮めていく。
現道が渡る橋と、その先のトンネルが既に見えているが、私がいる旧道は橋の下をくぐっている。この高低差では、あそこで現道と平面交差することはもはや絶望的なのだ。

これで地理院地図の誤りが確定してしまったが、道にとってはどこ吹く風。橋をくぐってその先へ。

旧道区間3

橋の前後にある、錆びてボロボロになったゲートと標識。
何かおかしくないだろうか?
ゲート状の構造物があること自体は、高さ制限の視覚化のためだと思われる。橋桁に頭をぶつける前に、このゲートで確認せよと。
私が妙だと思ったのは標識の内容。高さ制限2.5mは分かる。何の問題もない。
「小型車」。これは分からない。どういう意味で記載されているのかまったく分からない。小型車(排気量が2000cc以下で、サイズが全長4m70cm、全幅1m70cm、全高が2m以下の自動車。軽自動車を含まない。)のみを対象にした標識などではないだろう。また、この道路が小型車専用とも思えない。さっぱり分からない。
矢印標識も分からない。この矢印は、正確には「指定方向外進行禁止」という標識で、要は右左折できないのである。ところが、いくら注意して観察しても、私がいるこの旧道に、右左折する道などどこにも存在していない。これは明らかにおかしい。「指定方向外進行禁止」は、平面交差点でなければ存在価値のない標識のはずである。まさか自動車が立体交差する現道に飛んで右左折できるはずがない。

私は、眼の前の道路の状況と、この標識の内容とを何とか整合的に説明できないものかと現地で頭を悩ませたが、寒いわ雪で足が冷えるわ、立ち止まっているわけにもいかなくなり撤退した。今、レポート執筆中にも考えてはいるが、答えは出ていない。

ゲートを過ぎれば、富田川の流れに沿ってカーブする旧道は徐々に高度を上げて現道との合流に備える。雪の路面にはくっきりとした轍が残っており、この道が車道としてまだまだ現役であることを教えてくれる。

雪と旧道の景観をながめつつ、凍った轍で滑らぬようわざと雪が深い箇所を歩いていけば、そこには現道。3枚目の写真には川を渡る小橋が写っているが、対岸には植林地がある。

轍が途切れるところがこの旧道のゴール地点。右に見えているのが現道の大道理トンネルだ。

大道理トンネルと旧道を同時に撮影。ここだけ見ると、地理院地図が違っているとは夢にも思わないだろう。

大道理トンネル西坑口

大道理トンネルは、1990年11月竣工。坑門に飾られたホタルのレリーフは、なんとも平成のトンネルっぽい。

帰りは旧道を通らず、現道の大道理トンネルを抜けてきた。東坑口を振り返って撮影。東坑口にもホタル。私が今立っているのが、これも1990年竣工の大道理橋である。

余談だが、私は大道理橋が渡っている川を地理院地図やGoogleマップの表記に従って富田川と呼んできたが、大道理橋の親柱には旭川とある。富田川の支流であろうか。

橋上から見下ろした旧道。撮影位置は、地理院地図で現道と旧道が接続しているとされる辺りである。不思議な標識の載ったゲートが見える。光の具合で意図せず虹っぽいのが写っていて、なんとなく旧道が神秘的に見えている。ともあれ、この高低差であるから、大道理トンネル東坑口付近のこの位置で現道と旧道が平面的に交わることはあり得ないと改めて納得した。

以上で、大道理地区の国道376号旧道区間の紹介と地理院地図の間違いの件は、一応完結なのだが。

少し時間を戻して、大道理トンネル西坑口へ。

旧道を一通り辿り終えて、一息ついたところでこの後ろへ振り返ると。

知らない子がいたんだよ。
今度の子は地理院地図にもGoogleマップにも記載がないぞ。
正直道の雰囲気で先の想像がつくのだが、行けるところまで行ってみないと気持ちが悪いので、行く。
次回は国道の旧道とは関係ない番外編のミニレポートだ。

続く

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