しまなみ誰そ彼の話がしたい
すべてわかったような気になってはいけないけれど、わかろうとすることはやめたくない。
『しまなみ誰そ彼』(著:鎌谷悠希)全4巻
舞台は尾道。
夏休みの2日前、高校生のたすくくんが、ふとしたことで「ホモ」とからかわれ自殺を考えていたときに現れた「誰かさん」。
「誰かさん」を追いかけた先にたどり着いた「談話室」。
そこで出会った人々とたすくくんの1年間の物語です。
たすくん(物語内でそう呼ばれることがあるし、私がいつも心の中で呼ぶときはこうなので、今回はこれでいきます)はゲイであることをずっと隠して生きてきました。談話室に来るまでずっと。
古民家を改装した談話室にはいろんな人が集まってきます。談話室自体は「誰かさん」がオーナーで、尾道空き家再生事業NPO『猫集会』が再生をした場所です。
『猫集会』はトランスジェンダーやレズビアンの人など様々な人がいます。そしてたすくんの想い人である椿くんも談話室に出入りするように。
たすくんが談話室に訪れたときは、ちょうど新しく1軒古民家の再生を始めるタイミングでした。
その古民家の使い道はたすくんに委ねられます。
1年後、この建物はどんな場所になるのか。
この作品を読んでから尾道へ行ける人が羨ましいです。私は行ってから読んだので、ここ行ってなかった!!という場所があって悔しいです。また行けばいいんですけどね!
たすくんの成長物語としてもとても良いです。
2巻はたすくんが人を傷つけてしまうので、実は一番読み返していない巻。苦しい。人との付き合いの中で間違えてしまうことを真正面から描いているので私はけっこう辛かった。
善意、傲慢、タイミング、etc…
でもその問題も最終巻できっちりたすくんが向き合ってくれる。
たすくんのまっすぐさが好きです。
3巻の椿くんへぶつけた気持ちは、たすくんの優しさと強さがよく分かる言葉でした。
たすくん、それはもう好きを通り越してるよ。
君のまっすぐな言葉は必ず相手に届く。
『きみはゲイだからたすくんってわけじゃないでしょう。』
「誰かさん」のこの言葉はカテゴライズする時に思い出します。それは構成するもののひとつであって、すべてではない。カテゴライズは理解の一助にはなるけど、それで全てをわかったような気になってはいけない。
そしてわからなくても、わからないまま同じ船に乗って生きていける世界であってほしい。
まだまだ世界はやさしくない。
理解を諦めないでいこう。
私はいまだに最終巻で「誰かさん」がチャイコさんの背中を押したときの気持ちがよくわかっていないんですよね。
いつかわかるといいな。
わからなくても私は「誰かさん」が好きだけど。
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