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マロナの幻想的な物語りの話がしたい

これは幸せについての物語だと思う。

「マロナ」という1匹の犬が死の間際に自分の一生を振り返るところから始まる。
「マロナ」というのもあくまで最後の名前で、それまでに「ナイン」「アナ」「サラ」と変わっている。いつも拾われて、名付けられるから一貫した名前はない。

私は完全にマロナの気持ちで観た。
マロナは人間の都合に振り回され、転々としている。たしかに状況は不幸。やっと落ち着いたと思ったらお別れ。
それでもマロナは出会った人を信じて好きになる。それこそ何度も。
マロナは自分を選んでくれなかったことを恨んでいない。
マノーレはもちろんイシュトヴァンのことも。だって愛していたから。
自分が枷になるのは悲しいし、どうにもならないことはあるから。
たとえそれぞれの別れが悲しいものだったとしても、それに至るまでの時間のすべてが悲しいわけじゃない。「完璧な瞬間」はあった。
一生を一枚の絵とするならこれは悲しい物語だけど、たくさんの絵を並べたものを一生とするなら、その一枚一枚すべてが不幸ではなかった。

名前をもらって自分の家をもらって、寝顔を見守ることができた。それはたしかに幸せだったのだと思う。

この映画のレビューを観ると、かわいそうというのをよく見かける。
正直びっくりした。
当然、動物がこのような扱いを受けていいとは思っていないけど、私はマロナがどう考えているかに焦点をあてていると思っていたので、愛すること・幸せについての感想が多いと考えていた。
私がマロナでも同じようなことをすると思っていたので、
あぁ、私の愛し方は他人から見るとかわいそうなのか
と思ってしまった。

幸福は点。
幸福な瞬間のあとは、連続線の不安。
だから今、幸せと感じたときはそのことに集中する。
その後先を考えるとあっという間に手元から離れていってしまう。

だれか、だれか同じ見方をしている人はいないだろうかと思ってレビューを読み漁ったら、ひとりいました。解釈一致。
その人のほかのレビューも読んで、鑑賞したらやっぱり良かったので一方的に感覚が近いのだと思いを寄せています。
いつかお話ししてみたい。

いつもは字幕で観ることが多いのですが、この作品に関しては吹き替えが良いです。のんさんの話し方がとても合っている。

監督のインタビューも興味深いので、映画のあとに観るとより良いと思います。


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