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最適な仕事場はいずこ・・・久々の出社で気付いてしまったこと、思い出した篠田君のこと

ものすごく久しぶりに、会社で打合せに出席した。

「会社で」というのは、会社のオフィスに出勤して、その会議室でメンバーとリアルに会って話したという意味だ。

普段はオンラインの部署の定例会。ビデオもオフで、何年前か分からない顔写真アイコンを見つめながら話していたが、都内の感染者減を受けて、リアルに切り替わってしまった。

リアルに会うと(当たり前だが)情報の密度がぜんぜん違った。

いつもマイクオフにしているあの人、気が散りやすくて会議中もカタカタ別件のメールを打ち、会議と全然関係ないタイミングで大きなため息をつく、落ち着きのない若者だったなぁ。

いつも会議を仕切っているあの上司、近くに座るたび「最近どう?」と聞いてくれる、忙しいのに気配りを欠かさない素敵な人だなぁ。

など、印象が補充されていく。

印象なんて、仕事を進めるために不可欠ではないのに、どうして受け取ってしまうのだろう。求めてしまうのだろう。

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ひさしぶりに出勤して、もうひとつ発見したことがある。

オフィスでは、仕事がしづらい。(※私の場合)

すぐに仕事の相談ができるのは良いが、
まわりで他の仕事の話がちらほら聞こえてきて、集中力のない私はその内容が気になってしまう。

近くのカフェに逃げたら、メールも資料作りもさくさく進み始めた。

私は雑音のある環境が好きだが、雑音に意味がありすぎると良くないらしい。

同じカフェでも、静かで人の対流が少ないお店より、雑音があって目の端で人がアクティブに動いているのが見えるようなお店がいい。

私の中で流れる時間は、たいていゆるやかになりがちなので、まわりがちょっと忙しそうなくらいが、つられて自分のテンポも上がるので良いみたい。

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自分のことばかり書いたが、最後に、こうした「最適仕事場」問題に対し、アホ(※1)な実験をしている友人がいるので紹介したい。

大学時代の同級生、篠田君だ。

彼は、社会人で広告代理店に入ってようやく(仕方なく)、人とのコミュニケーションを積極的に取るようになったが、コロナ禍をいいことに再度家に引きこもり、これまで通りPCとスマホの画面の中を主戦場にしている。

それでも、何か足りない。

最も快適であるはずの自室で、求めてしまうものに気づいた彼の考察はこうだ。

同僚との雑談や人とのすれ違い、職場でのざわめきがなくなった分、寂しさのあまりレスのない「LINE」や「Facebook」のチャット画面を何度も眺める無駄な時間が増えるという問題もある。

コミュニケーションの残り香を求め、返信のないSNSを眺め続ける孤独。

まずは返信がこない理由を考えるべき(※2)なのだが、すり替えの達人たる彼は、環境のせいにする。

そこで、プロジェクションマッピングと同僚の3Dモデルを駆使して、自宅でも職場のような雰囲気や同僚がそばを歩く様子を再現すればよいことに気づいた。

それを、ほんとうに実現してしまうのが、
篠田君の篠田君たるゆえんである。

テクノロジーとアートの力を無駄遣いして、彼は解決策を自室に実装した。
(画像は ITmedia より転載)

最適化されたペースで視界に映る同僚、
雰囲気醸成のためだけに作った、行先ボードとホワイトボード。

一縷の寂しさは、
逃れられない自責ではなく、
テクノロジーで解決されうるべき問題だ。

こう都合よくすり替えるための、
あらゆる取り組みが積み重なり、ついに1冊の本になった。

本書のタイトル通り、
ほんとうにデータサイエンスを、
そして技術書という枠組みすらを、
無駄遣いし尽くした、挑戦的な意欲作である。

自室にオフィス空間を実装した話は、以下からも読める。
篠田君のことがほっとけなくなったら、ぜひ本も読んでみてね。

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※1・・・「アホ」とは、筆者と篠田君が大学時代を共にした、関西圏における誉め言葉である

※2・・・書籍『データサイエンスの無駄遣い』の中で、LINEの返信がない理由を、言語の形態素分析をもとに原因追究している。なお、追究したことで、自身に問題があることにうっすら気づいたようだが、コードに多量のページを割いているのに対し、反省の言葉は見落としそうになるくらい軽い。

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