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「プロジェクトリーダー実践教本」朝時雨読書感想記

来年から社会人になる。学生時代を振り返ってみると、リーダーをやっていたことが意外と多い。中学校で誰も手を挙げなかったのでとりあえず手を上げてみた環境美化委員の委員長決めから、高専に入ってプログラミングコンテストにリーダーとしてチームで参加したりといったことが思い返される。意外とリーダーになった経験があった私だが、リーダーという意味を深く考えたことがなかった。そもそもプロジェクトとはなんだろう?これだけリーダーをやっておきながらよくわかっていなかった。そこで私は「プロジェクトリーダー実践教本」という本を手にとった。

プロジェクトとリーダー

そもそもプロジェクトとはなんだろうか?この本では最初に「独自の目標を設定し、期限までに達成させる一連の活動」と表現していた。実際に来年から働く会社の人の話を聞いたプロジェクトの話でも、「大きい目標を設定して達成する活動」と表現していた。学校の授業では「目標達成のための有限の活動」と表現していた。プロジェクトには必ず終りがある。もちろん予定していた期間よりプロジェクトが伸びることはあるが、終わりがないわけではないと強調していた。

リーダーというのは、私の感覚では、進む方向を舵取りして、実際に進むように周りを引っ張る存在だ。本著では、「リーダーは誰でもなれる」と主張していた。リーダーに必要とされるリーダーシップは、みんなで行く旅行先を決めたり、提案したりすることなど、些細なことだ。自分の知識や技術をもとに、リーダーシップを発揮したいと思い、やりたいという思いがあれば誰でもリーダーになれるという。確かにリーダーシップ自体はある程度の勇気さえあれば発揮できると思う。リーダーでなくとも、リーダーシップを発揮することで、相手はこの人がプロジェクトに対して意欲的であると感じてもらえる可能性が高い。新卒1年目でも、こういったリーダーシップは積極的に発揮したいと思う。

リーダーに必要なもの

プログラミングコンテストに参加したとき、私はチームのリーダーだった。自分が持ち込んだアイデアを元に企画・開発・発表を行った。初めてのチームでのコンテスト参加だった。チームメンバーの学年はバラバラで、人間関係がうまくいくか不安だった。学生の間の貴重な時間を使うわけで、特にリーダーだった僕は責任を感じていた。リーダーに必要なものとして考えていたのは「人間関係」と「責任」だった。しかし本著ではそれ以前に必要なものがあると主張していた。それは「なんのためにリーダーを期待されているのか」、「なぜリーダーシップを取る必要があるのか」という考えである。私にはその視点が抜け落ちていた。そもそも学生で初めてこういったチームを組んでリーダーをやるわけだから、誰も完璧な指導や舵取りを期待していたわけではない。ただ当時の自分は責任を強く感じていたせいで、完璧を意識してしまっていた。「時間を奪ってはいけない」、「自分ができることはすべてやらなければならない」と考えて、実際にできたこととのギャップが大きくなるにつれて更に責任を感じていた。今思うともっと自分自身の考えていることをメンバーと共有して、全員で考えて決めるべきだったと思う。

リーダーシップを発揮するには

私はリーダーシップはその場その場で発揮するものと考えていた。意識しながらリーダーシップを発揮するのは大事だが、非常に疲れる。本著では、どのようにリーダーシップを発揮するか、事前に計画を持つことを勧めていた。たしかに、予め計画を決めておけば、ずっと意識して神経をすり減らすことはない。考えることが少しでも減れば、他のことを考える余裕が生まれる。計画をどうやって決めるかという話では、「5W1H」で設定する例が紹介されていた。

いろいろなリーダーシップの形

私がイメージしていた、憧れたリーダーというのは、メンバーの行動を把握し、適切な目標を与え、適切に指導できるトップダウン式のリーダーであった。そんなリーダー像があったからこそ、自分がリーダーになったとき、そのリーダー像を重ね合わせてしまい、うまくいかなかった。行動だけを真似するのではなく、「視点」を意識して見ることが重要だと感じた。リーダー像もとより、リーダーシップには色々な形がある。本著では以下の4つの形が紹介されていた。

①指示型: やることや行動を指示する。経験が浅くやる気が低い人に向く。
②支援型: 行動をある程度任せて支援する。タスクが明確なときに向く。
③参加型: やることを任せて参加する。部下に責任があるときに向く。
④達成志向型: 委任。タスクが曖昧でもモチベが非常に高いときに向く。

場合によってはこのリーダーシップを切り替えることが重要だと感じた。大前提として、とくに指示型のリーダーシップを発揮するためには、ある程度の知識や技術を身に着けておく必要がある。学生だけでチームを組んでリーダーを全うすることは非常に難しいことであると感じた。しかし、学生のうちに経験をしていることで、社会人になったときにその苦労や問題を知ってリーダーシップを取ることができるし、大きな失敗をしづらくなるような気がした。

チームの成長

チームは時間がたつにつれて変化が訪れる。本著では4つの期間に分けている。

①成立期: プロジェクトの初期。それぞれ独自の文化を持つ。
②動乱期: 独自の文化がぶつかり合う。議論が多くなる。
③遂行期: 互いの違いを理解する。生産力が上がる。
④解散期: プロジェクトの終わり。

動乱期に議論しあい互いを理解することは大事だ。ただしほんとにバラバラな文化を持つメンバーばかりだと動乱期の時間はかなり長くなるだろう。学生でコンテストに出たときは、ある程度チームを組む前からお互いのことを知っていたので動乱期は比較的短かった。会社では動乱期がどのくらいあるのかはわからないが、学生の時よりも苦戦しそうな気がする。

目的と目標

私は目標と目的の違いがいまいちわかっていなかった。目的と目標を意図して区別しようと思ったことがなかった。本著では、目的を「目指すべき方向性」、目標は「目的を達成するための具体的なもの」としている。目的は方向性なので数値などで判断しづらいものである。例えば、「この部署でNo.1になります」といったものだ。一方、目標は具体的な数値で判断できる。「○○までに廃棄量を20%削減する」といったものである。何らかの目指したい方向性(目的)があり、それに近づくために目標を設定するのである。私は学生になりたての頃、目標設定と題してブログを書いたことがある。「英語ができるようになる」「ゲームをつくれるようになる」など。これは今見ると目的に近い。具体的な目標がなかったため、この目的は達成できなかったのである。逆にコンテストに参加したときは、絶対的な締切が存在し、具体的な目標を建てる必要性があったため、作品を完成させることができたし、作品を作る過程で知識や技術を得ることができた。はじめは、「ものづくりができるようになりたい」といった曖昧な目的だったが、コンテスト参加を通じて目標が設定されてうまくことが進んだのだと思う。

目標と成果物をイメージさせる

プロジェクトをすすめる上で、目的を共有することは、当たり前に大事である。それに加えて、目標と成果物を共有することが何より大事だ。本著ではこの大切さをお絵かきゲームで説明していた。人に「ウサギをかいて」と言われたとする。絵心があるかどうかはわからないがだいたいみんな同じものがかけるだろう。次に「ロロホウをかいて」と言われたとする。おそらく殆どの人は困惑し、ひとりひとり違うものを書くだろう。成果物がイメージできない状態で、共同で作業をすることはとても大変だろう。最近だと、プロトタイプを用いてイメージを共有したり、共創を行うことで全員が同じ意識を持つことを目指したりする企業を見かける。時間はかかるが、こういったことを行うことで最終的には意識合わせにかかる時間が大幅に減らせるのだろう。実際にコンテストに向けてプロトタイピングをチームメンバーでやると、様々な考え方の違いがわかり非常に面白かった。

相手を知ってリーダーシップをとる

リーダーシップは状況に応じて切り替えることが大事だと思うと言ったが、果たしてどのように判断するのだろうか。本著では、コピタンスとコミットメントの2軸を基準として判断する方法が紹介されていた。

コピタンス: タスクに対しての知識や力量がある。
コミットメント: タスクに対しての責任感、思いがある。

判断するためには相手をよく知っておく必要があり、客観的に判断できる力が必要になってくると感じた。フレームワークを用いることで、判断しづらいこと、難しいことをある程度単純化して解決するのだと思った。フレームワーク使っているうちに、自分に合うように変えていったり、必要がなくなるものもあるのかもしれない。

要求事項の調整と目標

やりたいことはいくらでも出てくるものだ。考え始めるうちにあれやこれやと要求が増えていく。本著では、要求は「MUST」「SHOULD」「COULD」「WON'T」に分けて考えることが大事だと説明している。コンテストに向けたプロジェクトでは、優先順位を決めて対処していた。その中ではもちろん切り捨てた要求もある。また、要求がある仮定をもとにしている場合は、その仮定が正しいのか、実際に当事者に聞きに行ったこともあった。これは多くの発見があり、非常に有意義だった。

レポーティングの3大要素

プロジェクトでは、定期的にレポートを上司(私の場合は先生?)に提出する。ここでのレポーティングには重要な3要素があると本著は主張する。

現在: 計画と実績の差を正確に把握する
過去: ズレがなぜ発生したのか、原因を見つける
未来: ズレをどう修正していくのか

3要素を考えてしっかりと分けていないと、レポートを読む側の人間は実際の進捗がどこまで進んだのかが非常に分かりづらいと思うだろう。他人にわかりやすく伝えるためには、まず自分の中できっちり整理することが大事だ。

キックオフの大切さ

プロジェクトの始まりにキックオフミーティングをする。意識をあわせたり情報を共有したり、コミュニケーションのきっかけづくりをすることができる。本著ではキックオフで大事なこととして、「OPENNESSを忘れない」「自己紹介で情報が少ないときは質問をする」「メンバーへの期待と個人の目標の一致」が挙げられていた。とくに「メンバーへの期待と個人の目標の一致」は、今まで考えていなかったポイントだった。期待を伝えられた本人のモチベーションがあがるのと同時に、他の人は「この人はこんなことをするのか」といったことがわかる。ある作業をどんな人に頼めばいいのか、悩む時間が減りそうだ。

リーダーとメンバー

私がコンテストに参加したときのプロジェクトには、私よりも優秀な人がメンバーにいた。その人のおかげで、知識を学んだり、メンバー同士がコミュニケーションをよくとるようになった。リーダーが最も実力が高い人がなるべきというわけではないと思う。その人がリーダーになればよかったというより、その人がメンバーという立場だったからこそできたことが多かったという感じがした。リーダーは「やりくり」する力が必要になる。役割の違いを認識する必要がある。能力の高い人がメンバーにいるほうが、うまくいくことだってあるのだ。本著でも役割の違いを認識することが大事だと主張している。

終わりに

「プロジェクトリーダー実践教本」には、今まで私が経験して得た考え方と似たようなことが説明されていたり、私にはなかった視点からの考え方が説明されてい。今後すぐにリーダーになる機会はないと思うが、メンバーとしてどのようにリーダーシップとっていくのか、どのような目的と目標を持って行動していくのか、しっかりと考えて実行していきたい。

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