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[奥深い]アクアリウムの種類をまとめてみた

アクアリウムは自分が行っているスタイルが一般的だと思いがちだが、実は沢山の種類がある。

そこで今回は、私が認識している限りでアクアリウムのスタイルを全て解説してみようと思う。参考にしてくれると嬉しい。

*言葉の定義が厳密に定められていないものもあり、説明は正確性に欠けます。
*全てのアクアリウムがこれらに分類されるわけではなく、複数の要素を兼ね備えたものも存在します。

ベアタンク

低床を敷かず、基本的には水槽と器具のみで運営する極めてシンプルなアクアリウム方式。

ベタなどコレクション性のある生体、金魚や古代魚など水を汚しやすい生体などに用いられる。トリートメント用の水槽もこれにあたる。

生体が極めて見やすく、生体メインで楽しみたいという人にとってはそれだけでもメリットだが、他にも高いメンテナンス性を誇ることも特徴。

基本的には水替えとフィルターの掃除だけで維持できる。

ただし、極めて単調な景観であり、アクアリウムのポテンシャルを十分に発揮できないのはデメリットか(例外として、陰性水草を活着させた石や流木、水草ポッド等をストック水槽的な扱いで入れることもある)。

ダッチアクアリウム

別名オランダ式水草水槽。歴史が古く、ヨーロッパでは主流のスタイルである。

水草育成を中心としたアクアリウムで、園芸的な要素が強い。

ガーデニングでいう「庭」が、ダッチアクアリウムでいう「水槽」である。

厳密なルールがあり複雑だが、主なものとしては以下の通り。

[多種多様な水草を使用すること]
ガーデニングでチューリップ一色なんてことはないように、多様性に富んだカラフルな水槽を作り出すことが要求される。

[種類ごとにまとめて植栽すること]
要するに寄せ植え。メリハリをつけることができる。

[階層ごとに分けて植栽すること]
前景~後景まで、背丈に合わせて植栽する。

[レイアウト素材は最小限に留めること]
基本的には1水槽1個。花壇にデカい石ころや流木が何個も置いてあることはないように、花壇の主役は花であり、ダッチアクアリウムの主役は水草なのである。

一見ルールが厳密でめんどくさそうだが、逆に言えばルールに則ればそれなりの水槽ができるということであり、意外と入門として楽しめるスタイルではないだろうか。

ワイルドアクアリウム

自然水景をそのまま水槽に"再現"するスタイル
川や湖沼をそのまま切り取ってきた、と言えば分かりやすいだろうか。

後述するネイチャーアクアリウムと混同しやすい(私も勘違いしていた時期がある)。

まずどのエリアの水景を再現するのか決め、徹底的に調べ上げる。水草や生体の種類もそうだが、水質、低床の状態、水流、石や流木の状態…など、出来る限り現地の情報を集め、水槽にそのまま再現する。

変態的な拘りが求められるため、どちらかと言えば玄人向けではある。やっていることは本格派のパルダリウムに近い。

再現する水景がエリア(南米、アフリカ、日淡など)ではなく、よりローカルな場所(利根川水系、アマゾン川の支流など)に限定された場合は、さらに「ビオトープアクアリウム」と呼ばれることもある。ある河川や湖沼に限定して、現地で採集した素材や生体のみを使用した日本淡水魚水槽はこのカテゴリーに分類される。

ネイチャーアクアリウム

日本が誇る巨匠、天野尚氏が提唱したスタイルで、自然の風景や生態系の美しさを水槽に"表現"する(ワイルドアクアリウムで使った"再現"と明確に区別)。

例えば、森林でみかけた倒木に生えるコケたちから、"時間の流れ"というインスピレーションを得て、流木にモスや陰性水草が活着している様子を水槽で表現したり、悠久に広がる草原から、ヘアーグラスや石でその美しさを表現したりする。

ワイルドアクアリウムとの違いは、別にそれらはそのまま"水景"を再現しているわけではないということ。IAPLCの入賞作品を見れば分かりやすいが、あのような水景は川で潜って見かけるものではない。

ジオラマ的な側面もあり、生体に対する理解のみならず、芸術的センスや自然への感性など、極めて高度な技術が求められる。初心者がいきなりこの領域に手を出すと挫折しやすい。

ジオラマレイアウト

何らかの建造物や風景をそのまま水槽に落とし込んだスタイル

ネイチャーアクアリウムと一部被る場合もあるが、基本的には人工物(オブジェクト)を積極的に用いているのが大きな特徴。
(こういうやつ↓)

水没都市、古代遺跡、港町の風景、お寺…など、テーマは人それぞれ。

人工物を用いないで表現する場合(山岳地帯など)は、ネイチャーアクアリウムとの共通集合になる。

マリンアクアリウム

海水域に生息する生物を育成するスタイル(極めてレアケースだが、汽水域を扱う場合もある)。

大抵の水族館はマリンアクアリウムを主軸に展示している。

多種多様な生物種がいるためレイアウトやコンセプトの幅が広いが、海水という慣れない水を扱うため難易度や費用はそれなりに高い。

また、塩分濃度やミネラル分を厳密に調整して、海水魚と淡水魚を同時に飼育する方法も一応存在する(好適環境水・あまりにもニッチ過ぎる為カテゴライズ不可)。

最近は技術革新もあってかマリンアクアリウム用品が様々開発されており、一度は挑戦してみても良いのではないだろうか。

ビオトープ

水槽ではなく、睡蓮鉢や発泡スチロール、はたまた池など、上から見ることを前提としたアクアリウムスタイル(一部ネオグラスエアのように横から見える商品もある)

本来のBio-topの意味合いで考えれば、ワイルドアクアリウムにカテゴライズされるのだろうが、昨今のスタイルの多様化からみるに、そうとも言えない状態である。

屋外に水を放置しグリーンウォーター化させた状態でメダカ飼育を楽しむのならばそれはベアタンク方式であると言えるし、太陽光の力を活かして水草をグングン育成させることに重きを置いているビオトープはダッチアクアリウムのような印象を受けることがある。

人によっては石組レイアウトのようにネイチャーアクアリウムの手法を取り入れているパターンもあり、分野を渡った方式であるといえるだろう。

トリミング後の余った水草をビオトープに突っ込んでおくと勝手に野暮な水景が出来上がるので、一家に一台用意しておくと何かと便利。

ボトルアクアリウム

金魚鉢のような、小さなボトルでアクアリウムを楽しむ方式。

近年は手軽さからか勢いがあり、各メーカーからボトルアクアリウム関連用品が発売されている。

レイアウトの考え方としてはネイチャーアクアリウムやダッチアクアリウムの要素が強いが、緻密な水質管理や環境変化そのものを楽しむ傾向があり、一般的な規格水槽を用いたアクアリウムとは一線を画している。

マリンアクアリウムも一応ボトルで行うことが可能。

アクアテラリウム

水中部分と陸上部分を同時に表現するスタイル。

アクアリウムの範疇を少しだけ脱線しているが、基本的には水中部分がメインであり、それを引き立てる形で陸上部分をレイアウトしている。

逆に、陸上部分がメインで、一部小さな池のような水場を設ける場合は、一般にテラリウム/パルダリウム*に該当する(この場合、基本的には陸棲の両生類やカニを飼育することを想定し、機能的に水場を設けているだけである)。

*水量によってアクアテラリウムとパルダリウムを区別することには議論の余地がある

水面から突き出た流木や岩の上に苔や観葉植物を植栽したり、水草が水面に到達し水上化したものをそのまま放置し、エコトーンのような情景を表現したりする。

その中でも、水槽の蓋を外し、水槽外にレイアウトを飛び出させたものを特に「オープンアクアリウム」と呼ぶ。
水槽という一種の「額縁」を超えて表現するため、迫力のあるレイアウトにすることが出来る。

放置水槽

あまり水槽に手を加えず、基本的には自然の赴くままに任せるスタイル

メンテナンスを怠った結果こうなってしまうこともあれば、積極的に放置する場合もある。

有茎草が繁茂する→光量が足りなくなり下草が枯れる→これまで端に追いやられていた陰性水草が優勢になる…といった植物の移り変わり(生態学では"遷移"と呼ばれる)や、謎の微生物の増殖など、予想できない変化が水槽の中で起こる。

ただ、当然メンテナンスを怠るというのは水槽崩壊のリスクも兼ね備えており、よく水槽を観察しながら行うことを推奨。

アクアポニックス

アクアリウムと水耕栽培を合わせた形式。

硝化サイクルのプロセスを利用し、野菜や花などを育てる。

アクアテラリウムに若干似ているが、こちらは陸上植物を外掛け式フィルターや専用容器に植えるなどが基本で、レイアウトに組み込むことはない(観賞用ではなく、明確に植物育成/水質浄化に重きを置いているため)。

通常のアクアリウムに取り入れてみると面白い。


とりあえず以上になる。

まとめてみると思っていたよりもボリューミーで、アクアリウムの可能性を感じた。

皆さんのアクアライフも充実しますように。

おわり

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