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ニューヨーク州司法試験(NY Bar Exam)の対策と感想(2022年7月受験)

去る2022年7月26日と27日に、ニューヨーク州司法試験を受けてきました。世間的には、某KK氏も受験(かつ合格)した試験だったので、例年よりも関心は高かったように思いますが、我々LLM受験生としても、コロナ後の初の7月のin person試験でした(コロナ中はオンライン試験)。この記事では、最新の情報を共有することを目的として、ゆるっと書いていこうと思います。
 カバー写真は受験後に見に行った自由の女神。あいにく曇りでした。

ニューヨーク州司法試験に関する私の他の記事はこちら。

結果

まずは結果から。私は夫婦でそろって受験したのですが、無事に二人とも合格することができました(本当に良かったです)。
 今年の出題は短答・論文ともに難しかった?ニッチだった?らしく、正直なところ得点にはそこまで意味がないようにも思いますが、私の得点は、論文 (MEE+MPT) が156点、短答 (MBE) が156点の、合計312点でした(400点満点中。小数点以下は切り捨て)。
合格点は266点なので、日本人としては満足のいく結果だったのではないかと思います。

まずは……

ニューヨーク州は、Uniform Bar Examination, "UBE"を司法試験として採用しています。一般的にニューヨーク州司法試験と言った場合これを指します(カリフォルニア州はこれに参加しておらず、同州の司法試験を受験される方は別の対策が必要になります)。
 まずは以下のとある弁護士先生のブログを熟読しましょう。一から百までこれに書いてあります。とある先生はコロナの状況下でオンライン受験でしたが、先生の分析は問題なく最新の試験にも当てはまりました。とある弁護士先生を信じろ。

ニューヨーク州司法試験の受験記① 【目次】|とある弁護士|note

試験の構成

試験は、400点満点で、短答と論文試験がそれぞれ200点ずつの配点となっています。

短答 - MBE: 50%

短答試験 (Multistate Bar Examination, "MBE") は、4択の択一問題を200問6時間で解く試験です(100問/3時間を2回やります)。出題範囲は7科目。単なる暗記ゲーですが、今年の問題は、普通のテキストの単純な暗記では解けないような問題が多く出ていたように感じました(見たことがない判例をもとにしたような問題が出たり、ラテン語の知らない専門用語が出たりしました。妻はロースクールでじっくり判例・学説を学んでいないLLM生にはどうしようもない問題だったと嘆いていました)。
 日程的には、2日目の午前3時間、午後3時間。200問は多い……。

論文 - MEE+MPT

論文試験は、Multistate Essay Examination ("MEE") とMultistate Practice Test ("MPT") の2種類の論文試験から構成されています。得点配分はMEEが全体の30%(120点)、MPTが全体の20%(80点)です。
 日程的には、1日目の午前3時間がMPT、午後3時間がMEE

MEE - いわゆる論文試験: 30%
MEEが、いわゆる論文試験です。出題範囲は15科目。多すぎるように見えますが、日本の司法試験とは法分野の区分が異なるので、一概に多すぎるとまではいえません。が、多いことに変わりはないですね。問題は全部で6問出題され、それを3時間で解くことになります。1問に30分しかかけられないので、日本の司法試験に比べると問題はかなりシンプルで、暗記の比重が大きい試験です。

MPT - アドリブ論文試験: 20%
MPTは、事前知識を必要としない論文試験です。イメージとしては二回試験に近いのかもしれません。問題を解くのに必要な事実、適用法令が全て与えられ、それを前提として、問題文の指示に従って実務的な文書を作成する試験です。全部で2問あり、それを3時間で解きます。LLM生の必修科目であるLRW (Legal Research & Writing) で習うことを実践する試験だなと感じました。事前知識不要ということは、つまり非ネイティブにはつらい試験だということになります。個人的には、教科書どおりのリーガルライティングが「正解」とされていたので、結構楽しい試験でした。

試験対策

試験対策情報は星の数ほどあるので、今更屋上屋を架すことはせず、私が参考にしたものを紹介しようかと思います。
 まずは、最初に書いたとおり、とある弁護士先生のブログ。ここに全て書いてあります。僕は試験勉強以外のことに頭を割くのが嫌だったので、とある先生の各週ごとの勉強の進捗をペースメーカーにして勉強していました。(ただ、とある先生の進捗速度と得点率はめちゃめちゃ早いし高いのでついていくのは正直無理でした……笑 とある先生はちょっとオーバーキル気味だと思います正直)

それ以外で参考になった、かつ新しい情報だと、Lawyer's INFOなどを運営されている岩崎先生ブログ記事があります。とある先生のブログがある種の理想形とすれば、岩崎先生の記事は地に足のついた、現実的なところを解説してくださっており、痒い所に手が届く内容だと思います。時間配分の意識とか、参考になりました。

あとは、日本人留学生の間で流通している、「受験者雑感」というファイルがあります。これは、先輩方のNY州司法試験の受験体験がたくさん(30人くらい?)まとまっているファイルで、参考になります。

受験会場

受験会場は、試験申込み後に、委員会から送られてくるメールから早い者勝ちで選択することになります(我々は6月9日にメールが来ました)。会場は以下の4つ。日本人受験生の多数派はバッファローで受験し、試験後にナイアガラの滝を見に行くのが通例(らしい)。我々は、マンハッタン内に住んでいたので、旅費とホテル代を浮かせるために、NY市内の会場に申し込むことにしました。夫婦で違う会場になったので、それぞれ以下紹介します。

NEW YORK CITY:
・Armory Track and Field Center
・Jacob K. Javits Convention Center

WESTCHESTER:
・New York State Judicial Institute and Pace
Law School
BUFFALO:
・Buffalo-Niagara Convention Center
ALBANY:
・Empire State Plaza Convention Center and
Albany Capital Center
adminからのメールより。一部レイアウト調整

持ち物レギュレーション

当日のレギュレーションはここにあります(PDF直リンク)。
(https://www.nybarexam.org/Docs/secpolicy.pdf)
携帯電話は持ってきてはいけないと書いてありますが、会場に持ち込まなければ持ってきていい(自己責任で荷物置場に置く)というだけで、持ってきている受験生は多かったです。
 詳しくは読んでいただければと思いますが、当日多かったトラブルは、「1日目のMPT/MEEにだけ持ち込み可能な黒/青ボールペンを2日目にもうっかり持ってきてしまったせいで会場に入れない」問題ですね(私もそうでした)。捨てるか外に放置している荷物に戻すかしないといけなくて、入場列に並び直すことになりました。

市内会場①: Armory Track and Field Center

マンハッタンの上の方、コロンビア大学やハーレム地区を超えたところにある陸上競技場です。妻がこの会場だったのですが、下の写真にある陸上競技のトラックの中(内側)にずらっと机を並べただけの会場だったらしく、割と暑かったし、かつ、街中にあるので外の音(クラクションやサイレンなど)がうるさかったそうです。

Google Mapの写真 (https://lh3.googleusercontent.com/p/AF1QipNenIQdfCVlZQHDp7fg6Ohttk17g6UotwY_Ao0o=s680-w680-h510)

市内会場②: Jacob K. Javits Convention Center

マンハッタンの南西、ハドソン川の近くにあるイベント会場(ビッグサイトみたいなやつ)です。私はここで受験しました。会場にはずらー---っと机が並んでいました。Armonyとは逆で、空調がガンガンに効いていて、かなり寒かったです(出身ロースクールのパーカーを着てちょうどよかったです)。騒音などは特に感じず、温度以外はかなり条件の良い会場だったと思います。

Javits Center入口から撮った写真。シャッターが閉まっている奥が試験会場です。きれいですね。

この会場は事前にお弁当の販売があるのですが、とても、とても高かったので私は注文せずに自宅からおにぎりを持っていきました笑

注意点として、Javits Centerの荷物置場はガチのオープンスペースで、会場の前の床にただ荷物を置くだけでした。大事なものは持ってこないが吉ですね(私はもう盗られたらしょうがないと思って携帯電話は持っていきました)。

荷物を置くスペースはここです(ここ!?)

感想

2か月前からの準備じゃ遅いですよ!!!!!!!!!!

この記事はこれを言うために書いたまであります。ほとんど?の先輩方は、ロースクール卒業後の2か月(スタンフォードなど一部大学はもっと短い)で詰め込んで試験を受けて合格されていますし、我々夫婦もそうでしたが、体感としてはかなりギリギリの綱渡りをしたと感じますし、精神的にもつらかったです。
 そもそも慣れないアメリカでの生活ですし、卒業後の環境の変化もあるでしょうし(例えば私たちの場合は、5月中旬にCAからNYに引っ越したので、5月中はあまり満足に勉強する環境が整っていませんでした。卒業後一度日本に帰国される方も多くいると思います。)、十分に勉強時間が取れることはなかなかないと思っておいた方がよいです。(あと個人的には、日本で司法試験を受けたころと比べ、勉強に集中できる時間がずっと短くなっていたことに驚きました。精神力の経年劣化を感じます。)

おわりに

他の記事と同じく、この記事も、私が受験したときに知りたかった情報を書いたつもりです。これから司法試験を受ける方の参考になれば幸いです!

記事監修: 妻

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