(2023年6月追記) ニューヨーク州弁護士登録手続について (各種試験、書類、手続)
NY Bar Examに合格したら、今度は弁護士登録の手続がやってきます。最近、ようやくニューヨーク州弁護士登録の手続がひと段落したので(まだ終わっていないので、ちょくちょく追記しようと思いますが)、体験をまとめようと思います。
今年のニューヨーク(というかマンハッタン)は信じられないくらい暖冬で、「ニューヨークの冬は寒いよ!」という話を聞いて買った防寒具があんまり活躍していません。。
ちなみに、ヘッダーの写真はマンハッタンのチェルシーマーケット。アメリカにしては珍しく(?)、たくさんのレストランが並んでおり、思ったより面白かったです。
2023年4月:裁判所から連絡が来たので追記
2023年6月:宣誓式 (Virtual Oath Ceremony) をしたので追記
ニューヨーク州司法試験に関する私の他の記事はこちら。
まずは……
まずは増田先生のブログ記事を熟読しましょう。私がこれに付け加えることはほぼなく、この記事もあくまでも増田先生の記事の補足的な位置づけになると思います。というか、この記事の目的の半分以上は、増田先生の記事を紹介するところにあります。
合格しておくべき試験
ニューヨーク州弁護士になるためには、7月末に受験する「司法試験」(UBE)に合格するだけでは足りません。司法試験が一番難しいので、実質的にはこれに合格したらほぼクリアみたいなものではありますが、他に2つ、試験に合格する必要があります。MPREと、NYLEです。
(1) MPRE - 弁護士倫理
MPRE (Multistate Professional Responsibility Examination) とは、選択式の弁護士倫理の試験です。ロースクール在学中から受験でき、私の観測する限り、大体のLLM生が在学中に受験して合格しています。年3回各地で開催されており、2時間60問の択一試験で、試験会場で会場のパソコンをカチカチクリックする形で行います。
例年、Barbriをはじめとした司法試験予備校がロースクール生向けにMPRE対策教材を無料で配っていますし、ある程度日本での知識も使えるので、そこまで合格することは難しくないと思います。注意すべき点は、各州で合格点が異なること。私がUBEを受けた2022年は、ニューヨーク州の合格点が85点、カリフォルニア州の合格点は86点でした。
(2) NYLC & NYLE - ニューヨーク州法の試験
ニューヨーク州は、弁護士登録要件として、ニューヨーク州法の内容について、①ビデオ講義 (NYLC: New York Law Course) を視聴したうえで、②択一試験 (NYLE: New York Law Exam) に合格することを課しています。司法試験(UBE)が各州共通の試験なので、ニューヨーク州法の内容を習得させるためですね。なお、NYLEは年4回開催されており、NYLCはその受験日の1カ月前までに修了しておかないといけないことに注意が必要です。
NYLEは司法試験(UBE)と同じ受験用のソフトウェア(ExamSoft)を使って、在宅でリモート受験します。オープンブックとされており、NYLCでダウンロードできるCourse Materialを見ながら解けるため、合格は難しくはない、とされています。司法試験委員会は「オープンブックだけど調べる時間なんてないからちゃんと勉強しろよ!」と脅してきましたが、Course Materialを読んでどこに何が書いてあるかわかっていれば、結構時間は余ります。笑
NYLC/NYLEもロースクール在学中から受講・受験が可能なため、在学中に終わらせてしまう人も多いです。しかし、個人的には、7月の司法試験(UBE)受験後にNYLEを受験することをおすすめします。というのも、NYLC/NYLEは、受験者に「一般的なアメリカ法」の知見があることを前提にしているからです。Course Materialでは、法律の専門用語が説明なく出てきたり、「この論点について、ニューヨーク州は〇〇説を採用している」というだけの記載が散見されたりします。もし司法試験の勉強前にこれを読んでいたら、ちんぷんかんぷんだっただろうなと思います。
私は、7月に司法試験(UBE)を受験した後、8月の夏休みにゆっくりNYLCを視聴し(ほぼ流していただけですが……)、9月にNYLEを受験しました。 司法試験受験直後で知識がまだ残っていたので、かなり効率的に解けたかなという印象です。
やるべきこと
試験に合格した後、弁護士登録のためにすることは、書類を集めてそれを提出する、につきます。公式サイトはこちら。
必要書類
必要書類は、以下のとおり(公式のチェックリストはこちら)。なお、提出後、裁判所からGovernment-Issued IDの提出を求められました。これは要件になかった書類で、外国人だから特に要求されたものなのかもしれません。
Notice of Certification (合格通知書)
Application for Admission Questionnaire (申請書)
Two Affidavits of Good Moral Character (推薦状的なもの)
Employment Affidavits or Letters (雇用元からの推薦状的なもの)
Certificates of Good Standing and Grievance Letters (懲戒されていないことの証明書)+Skill Competency and Professional Values Affidavit
Pro Bono Affidavit(s) (プロボノ要件50時間の証明書)
Law School Certificate(s) (卒業証明書)
Government-Issued ID (政府発行IDのコピー)
申請先・提出先
ニューヨーク州では、申請者の住所地によって、書類の申請先のDepartmentが異なり、申請方法等細かなところが異なるので注意しましょう。自分の申請先は、Bar Exam合格時に送られてくるNotice of Certificationに書いてあります。
申請先は1st Departmentから4th Departmentまであり、私は1stでした(マンハッタンに住んでいるからだと思います)。1st Departmentの公式サイトはこちらで、私の場合、全書類がポータルサイトのオンライン申請(したがって全書類はPDFでよい)、宣誓式もオンライン、というアレンジでした。
(1) Notice of Certification (合格通知書)
Bar Examに合格すると試験委員会からメールアドレス宛に送られてくる合格通知書です。合格日までに、MPREとNYLEを受験・合格していない場合、"Notice of Certification" ではなく、"Passed Not Certified Notice" が送られます。弁護士登録に使えるのはNotice of Certificationだけです。
(2) Application for Admission Questionnaire (申請書)
増田先生の記事に付け加えるところはありません。僕は日本の事務所を退職した扱いとしました。公証 (notarization) が必要なので注意(2022-2023年の申請だと、公証が必要な書類はこれとSkill Competency Affidavit、プロボノ証明書だけでした(Skill Competency Affidavitへの公証は米国内に住んでいたら不要かと思っていたのですが勘違いだったようで、後から再提出を求められました。)。
(3) Two Affidavits of Good Moral Character (推薦状的なもの)
人脈が求められるやつ。2通=2名から取得する必要がありますが、
・雇用証明の記入者
・現在の勤務先の関係者
・血縁者、配偶者
・他の弁護士登録申請者
・ロースクール(日本の法学部含む)教授or職員
はダメとされています。あと、申請者と2年以上知り合いである必要があるらしい。"reputable persons"である必要があるらしい。結構縛りが厳しいぞ? 僕は、アメリカの友人+日本から一緒に留学した友人(Bar Examは未受験)に書いてもらいました。
(4) Employment Affidavits or Letters (雇用元からの推薦状的なもの)
過去勤務したことがある勤務先にサインしてもらう必要がある文書です。これ、21歳以降or過去10年間の勤務先全てから取得しなければならないので、場合によってはかなり面倒です。頑張りましょう。増田先生の記事によれば、昔は公証が必要だったらしいですが、今は単純に記入者のサイン(電子署名含む)でOKです。
(5) Certificates of Good Standing and Grievance Letters (懲戒されていないことの証明書) + "Skill Competency and Professional Values" Affidavit
日本の弁護士の場合、日弁連と所属弁護士会からそれぞれ所属証明(懲戒されていないことの証明)を英文で取得します。留学準備でも取得したもので、ここでも使うので、やり方はメモっておきましょう。注意点として、発行60日以内でなければなりません。これがなかなか曲者で、必要書類がそろって申請できるであろう日から逆算して弁護士会に申請するようにしましょう。
これに関連して、申請要件として、"Skill Competency and Professional Values Requirement"を満たす必要があります。この満たす方法は5つあるのですが、LLM生は通常Pathway 5=日本で弁護士として1年以上の勤務経験あり、を使います。上記所属証明を提出すれば、このSkill Competency証明にもなりますのであまり問題はないでしょう。なお、Pathway 1 (ロースクールが証明してくれる方法) もいけそうに思えますが、多くのロースクールは、JD生に対してのみこの証明を行っているようです。先に記載しましたが、公証 (notarization) が必要です。
(6) Pro Bono Affidavit(s) (プロボノ要件50時間の証明書)
50時間のプロボノ、これもまた曲者です。こちらについては、とある先生のブログ記事に詳しいのでご参照。これに関しては公証 (notarization) が必要です。
僕は、幸いにも、研修先の法律事務所からプロボノ案件を複数紹介してもらうことができましたが、弁護士資格を有さない人向けのプロボノ案件がそこまで多くはないこともあって、50時間をクリアしたのは新年明けて2月になってからでした。一応、外部団体が一般的に募集しているプロボノ案件への応募、みたいな方法もありますが(オンラインオペレーターなど)、僕の場合、そのような団体は応募を締め切っていることがほとんどで、結局うまくいきませんでした。ということで、ロースクール在学中にプロボノをやってしまうことも十分に検討に値する選択肢だと思います。
(7) Law School Certificate(s) (卒業証明書)
LLMの出願時や、NY Bar Exam受験資格申請時にも出したやつですが、今回は、指定フォームに学校のサインをしてもらう形で、少しやり方は異なるはずです。日本の法学部・ロースクール・司法研修所いずれからも(もちろんアメリカのロースクールからも)取得する必要があります。僕の場合(1st Department)、各学校から指定のメールアドレス宛にEメールで直送してもらう必要がありました。(僕のお願いの仕方が悪かったのか、最初、日本からは郵送されていたようで、1st Departmentから「Eメールで送りなおしてくれ」と言われました)
(8) 弁護士登録費用の支払い
New York State Unified Court Systemというところで、BOLE IDを使ってアカウントを作成して、$375の登録費用を支払う必要があります。お忘れなきよう。
(9) オリエンテーション講義の視聴
申請後、ビデオ講義を見る必要があります。NYLCみたいな感じですね。講義中に一瞬だけ表示されるコードをフォームに記入して、修了の扱いとします。
(10) 宣誓式 (Oath Ceremony) への出席
1st Departmentの宣誓式はVirtual Oath Ceremonyで、Teamsで行われました。私の場合、2月に必要書類を提出し、4月にGovernment-Issued IDの提出を求められ、6月に宣誓式が行われる、というスケジュールでした。先輩方のブログ等を見ても、提出から宣誓式まで4カ月ほど見ておくべき、と思っていたのですが、私の場合も4カ月でした。
宣誓式に関しては特筆すべきことはなく、裁判所からの指示どおりにすればよいと思います。私の場合、宣誓式には50名弱の候補者が出席してTeamsで行われました。公開裁判ルールの下で、宣誓式は裁判所ページとYoutubeでライブ配信されます (!?) 。流れは、①出席確認②注意事項説明③宣誓④判事からの言葉⑤質疑応答⑥解散で、全体で30分強でした。
おわりに
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