プレッシャーとカラオケ。
学生時代に、よく友人たちとカラオケに行った。
一緒に卒論やろう!と図書館に集まっては、しばらくすると誰かが「ねぇ、カラオケ行かない?」と言い出す。
反対する者などいないから、みんないそいそと資料を片づけて繁華街に向かった。
夏の終わりから秋にかけて何度もそんなことがあったのは、卒論を書かねばならないプレッシャーから逃れるためだ。
多い時は週に2~3回行った。
各自、大きな声で持ち歌を歌い、全力で逃避する。
私は当時ハマっていたアニメの主題歌(ガンダムW、エヴァンゲリオンなど)をよく歌ったし、自宅に有線がある友人Aは流行りの曲を歌いまくったし、友人Bはサークルでカラオケに行く時に備えて練習するのに余念がなかった。
みんなで3時間くらい歌って、そのあとは何かを成し遂げたような大きな達成感と共に解散した。
当初の目的はすっかり忘れて。
しかし冬の足音が聞こえてくると、さすがに逃げている場合ではないと悟った。
テーブルが大きくて作業がしやすい喫茶店に集まって、大人しく作業に専念するようになった。
卒論が仕上がった後は、もはやカラオケに行くことはなかった。
してみるとやはり、卒論のプレッシャーからの逃避だったに違いない。
なにしろ卒論のプレッシャーというのはものすごい。
40歳を過ぎてもなお、締切1か月前なのに卒論のテーマが決められなくて青ざめている…という夢をみたくらい。
今は平穏な暮らしをしているから、カラオケに逃避する必要もない。
カラオケは年に数回も行けば十分である。
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