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クリームソーダは飲めない。

息子はクリームソーダが好きだ。
私もわりと好きだ、と思う。
わりと好きだと思うが、飲まない。
いや、飲めない。

これには理由がある。

十代の頃、担任の先生がホームルームの時間に詩を読んでくれたことがあるのだ。

それが「クリームソーダの詩」というタイトルだった。
作者はその学校の卒業生で、在校中の作品だという。

私は同じ年頃の人がこんなにも人の心を打つ作品を作れるんだということに驚き、そして詩の内容にもグッときた。
(グッときた…という表現は本当は適切でないのだけど…)

だから本当はかなり正確にその詩を覚えている。

でも他人の作品を勝手に掲載するのは良くないことだから、一部を要約する。

作者が幼い頃、身の回りの「大きな物」ばかりが消えて、代わりに作者とその母は「小さな住まい」へと移った。
母は働きに出るようになり、給料日になると作者を外食に連れ出し、ハンバーグを食べさせてくれた。
母自身はあまりお腹が空いてないから…とクリームソーダを飲んでいた。
そして今(作者がこの詩を書いている時点で)は、母は外食に行っても作者と同じものを食べるようになった。

私の記憶の中の「クリームソーダの詩」の一部を要約

ヘタな小説を読むよりも、ずっとずっと心に響く詩だった。
どうかすると、著名な作家の作品よりも。

先生は一度しか読んでくれなかったけれど、30年以上経った今でも、その衝撃は薄れることがない。

たぶん私の中の一番大切な文芸作品だと思う。

私の中でこの詩が大きすぎて、クリームソーダが飲めない。

自らが母になってからはよりいっそう。



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