当たり前の日常は当たり前ではない

2019年に開催された浜田市世界こども美術館「クルクルパラパラ 動くアートの秘密展」に向けて制作したインタラクティブ作品 Lights（あかり）。卓上のスイッチを入れるとランプが点灯し、続いて壁面に投影された暗く静まった夜景に明かりが徐々に点ります。

この作品は、2011年11月に開催された歌舞伎町アートサイトで展示した作品
「Spangles」を再構築した作品です。2011年の震災当日はちょうど新宿ゴールデン街のNaguneというバーで個展を開催期間中でした。幸い会場に被害はなかったのですが、計画停電の情報が錯綜する中、街の明かりも人も少なくなったゴールデン街のバーで、会場を訪れてくれた方にLEDとボタン電池で作った小さな明かりを配っていたのを思い出します。
その後11月に開催される歌舞伎町アートサイトに向けて、何を創るか頭を悩ませていた中で、新宿の夜景について思いを巡らし、8つの街角にあかりを灯す作品を制作しました。このときのバージョンは、息を吹きかけることでガラスの容器に入ったグリッターを舞い上がらせ、街に光を灯すという形式でしたが、浜田市世界こども美術館で展示する際、デバイスを刷新し、デスクライトを点灯する形へとリメイクしました。

デスクライトは、一見ただの白熱灯に見えますか、点灯する度に色が変化します。また、夜空に現れる月も1カ所だけ場面設定を変えてあります。当時、この作品を制作する中で、ここではないどこかに住むことになるのかもしれないという思いをひっそりと表現したものでした。そして、当たり前の日常は当たり前ではない、そういうことを考えながら制作した作品でした。

※写真は過去の展示風景です。
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あさのこうへい「あそぶミュージアム 旅する光の世界」
2020年09月01日(火)〜2020年10月18日(日)
http://www.earthplaza.jp/event/20200901asano/