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だらだら過ごす受験生の考察

高校入試の各種試験が随分と近づいて参りました。理想的にも思える姿で熱心に準備に励む学生がいる一方で、昨年の今頃と大きく変わらない様子の学生もいることが現状です。その差は何から生まれるのか?
個々の人間性を否定しない形で書き綴っていきます。

沖縄県の高校入試の現状

学生ら個々の価値観の前提条件として、沖縄県の高校入試における全体像を把握しておく必要があります。少子化の進みが遅いと言われる沖縄県でもじわりじわりと毎年の受験者数は減少する傾向にあります。合わせて、学生らやそのご家族のニーズにも変化が生まれています。それは過去に比べて、県内外の大学進学希望者数が増加していることです。

そのため、志望高校を考える際には大学進学の見通しを重要な指標とする場合が多く、中堅普通科高校以上は校門前に大学進学実績を掲示するなどしてしのぎを削っているようです。一方で、上記の記事中にもある通り、全国平均と比較すると大学進学割合が依然として低いことも事実であり、早期の段階で大学進学の選択肢を持たない学生やご家庭があることも揺るぎない現状です。

そのような、ある種の二極化と呼べる未来への展望に対し、高校入試の実数値は明確にそれを表しています。大学進学への見込みが強い学校への希望者は約1.2倍と常に人気を集める現状があるが、その反面、実業系高校(工業高校、商業高校など)の多くは1倍以下の入試倍率が続き、競争が発生していないことを表しています。これらの事実をベースに以下の考察へと続けていきます。

親の願いと子供の価値観

私は進学塾の塾長ですから、多くの保護者様と日々接する機会があります。言葉になる部分とそうでない部分を皆様がお持ちだという点は承知した上で、やはり"人並みに入試に向き合い、合格と成長を得てほしい"と考えることは至極当然なことだと思っています。一方でタイトルにもあります通り、全受験生がその期待通りの行動を起こすとは限りません。睡眠時間等を削りながら志望高校に向けて猛烈に準備する学生がいると同時に、昨年の今頃と塾内での様子に限っては大きな変化を感じない学生がいることも事実です。
その差の1つに上記に示した高校入試の実情が見え隠れします。

ここで扱う"受験生"という言葉は中学3年生を指し、年齢は14~15歳です。子供とも言えず、大人とも言い切れない、そんな年代でしょうか。これは私の希望的観測にすぎないかもませんが、そんな彼らも数字や現状をある程度正確に把握する能力はもうすでに持ち合わせているようです。その理由は、12月を迎えてだらだらと過ごしてしまう学生の多くが志望する学校は1倍以下の実業系高校だからです。もちろんそれは「鶏が先か、卵が先か」という問いになっている可能性もありますが、私は彼らの志望校の実情が彼らの油断を招く原因になっていると感じています。

合否の実情

では、1倍以下の高校は不合格にならないのでしょうか?ここで1倍以下が続いている高校の1つから推薦入試の出願(参加)基準について触れてみます。高校側から学生らへ提示する参加条件は以下の内容です。

アおよびイの項目に該当することが学生らに求められる条件です。ほとんどの場合で条件をクリアするための努力は不要だと感じられる文言です。一方で、地域で人気の進学校の推薦入試に対する条件が以下です。

学業成績(4以上)に加えて、欠席の程度も選考材料になると明記されています。これを3年間で達成するためには、相応な努力が求められることは明らかです。

上記のような差異に加えて、先に紹介した高校は私の知る限り不合格になるケースはない一方で、後に紹介した高校は推薦入試だけでも2倍以上の倍率を有する人気校です。志望高校に応じて、想像以上に大きな合格へのハードルの高さが違うことをご理解いただけたと思います。

どうして受験に対し学習意欲が沸かないか?

いよいよここで確信のだらだらしてしまう理由について考えます。その結論は「学生らが自身に必要な行動を肌感覚や実情報として理解しているから」と私は考えます。高偏差値かつ高人気(沖縄県ではこの2つは殆どの場合で共存します)な学校への進学を希望する学生から次第に受験準備への準備を本格化し、自身を律し、合格へ向けて歩み始めます。一方で、合格に向けて競争のない学校(1倍以下の倍率)への進学を希望する学生は受験1ヶ月前程度でも大人らの目からは緊張感は感じられず、ついやきもきとしてしまうものです。

しかしながら、その態度の先に不合格があるのか?という観点はまた別で、入念な準備なしに合格できている現状があります。少子化による学生減少は、実業系高校への合格障壁の低さという形で現れ、その学校を志望する学生らから準備の必要性を奪っています。同時に、入試への準備が不要である一方で、彼らなりの実社会で必要なコミュニケーション(SNSやオンラインゲームを通じてなど)は過去と比べ随分と変容し、我々世代からは理解することも覗き見ることも難しい存在となっています。その差に保護者はつい苛立ちを覚えてしまうことでしょう。ですが、入念な準備なしに合格できる学校への受験に向けて「高校受験は人生に1度きりだ」というような理由から馬車馬のように準備に励めと命ずる事の方が本質や現実からずれているように私は感じます。適切な準備と確かな結果、それは常に等価交換であり、彼らなりに必要な行動を選択し、実行しているのだと私は信じたい。

受験産業に10年以上携わり、毎年受験指導の現場に率先して立ち、今年も目前の学生らと合格に向けてともに並走する立場にある私から、あえて1つだけ厳しくも聞こえる意見を述べさせていただくならば、志望校を選択した時点でその先の行動は決していたのかもしれません。

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