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掌編『一九五三 東京』

掌編『一九五三 東京』
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一九五三 東京 | 浅野文月 | 小説 | 破滅派|オンライン文芸誌 (hametuha.com)

歴史に「もしも」は禁物である。しかし我々はもし過去がああであったならばと想像をしてしまう。この掌編はその一つの回答。
日本はアメリカと戦争をし、そして負けた。もし、負けもせず勝ちもせずにあの戦争が終わったらどうなっていたか……

(前書きのみ)

 一九四一年十一月にアメリカから通牒されたいわゆるハル・ノートをそのまま受け入れる事ができなかった日本政府は、アメリカと秘密裏の交渉の末、形の上だけ真珠湾攻撃をした後に早期講和条約を結ぶことを両国で決定をした。日本は大きな損害を出さずに国体と大日本帝国憲法を維持したまま日本としての第二次世界大戦は終結したように見えた。しかし停戦をした中華民国では革命が起こり共産党政権が樹立。不可侵条約を結んでいたソ連邦も一方的に満州国に進行してきた。日本政府は一九四三年に両国との交渉の末、共産中国には朝鮮と台湾を割譲し、日本は満州国の特権をソ連邦に渡した末、二国と友好関係を樹立した。日本はアメリカと共産中国、そしてソ連邦と微妙な平和関係を築き上げたが、三カ国の干渉を受けると共に共産主義と資本主義の緩衝地帯となり、不安定な政治状況となった。

 このような状況の中、華族である青年松浦睦は将来の日本を危惧し、他の青年華族や政治運動を行う平民と共に秘密結社を作り始めたところだった。

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