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朝の失敗

今朝は散々な日の始まりだつた。

朝は低血圧で頭がフラフラするので、起き上がった後、数分じっとする。それで少しふらつきはマシになる。しかし、立ち上がった瞬間バランスを崩し床に倒れ込む。

お酒はきらいで、飲まないのに、まるで、二日酔いの状態である。

隣に眠っていた、和が、

「母さんまた、転んだの?一度病院に行った方がいいよ。」

何故か優しい言葉をかけてきた。まだ6時、いつもなら、何度も声を張り上げても起きないのに。カレンダーをみると

ハッとする。

三者面談…

すっかり忘れていた。娘の進路を決める大切な日。

「三者面談だったのね。今日は、仕事休ませて貰うわ。」

和は、首を横に振る。

「来なくていいよ。私の進路はもう決まってるから。」

ずっと看護師を目ざしていた。。保育園のお友達が、亡くなって10年.。

うちは夫は、居ない。

夫は、商社マンで、忙しく、私は看護師だった。行き違いの生活。娘が生まれ、仕事をやめろ!と言われた。しかし、私はその時看護師に誇りを持っていた。

いつもそれで口喧嘩が絶えず、そのうち、夫は、離婚届けを置いて出ていった。


「もう進路決めてるのは知ってるけど、大丈夫?」

「大丈夫だよ。それよりも母さんか心配だよ。」

「それにしても、今日は、早起きね。あんた、実は緊張してるんじゃない?」

「そりゃ、少しはね。でも、もう推薦で入れるって先生に太鼓判押されてるからさ。」

居間に行くと、

小学生低学年で、亡くなってしまったエリカちゃんと、どこかの公園で並んで写した写真が飾られている。

手に写真立てを取った瞬間、また、バランスを崩しかける。和が、驚き、写真立てを、捕まえた。

「私のお守りなんだから。これだけは割らないでよ。」胸に写真立てを抱え込む。


お弁当箱に昨日の夕飯に作った肉じゃがと、冷凍コロッケとプチトマトを詰める。色取りよし

その後、食パンとコーヒーで、忙しく朝食を終え、

弁当箱をハンカチで包む。

そこでまた、ふぁーと倒れかかり。

「母さん疲れてるよ。」和に支えられ居間のソファーに座った。

「もう年なんだから、無理しないで!」涙目の和。

「更年期かもね。年には勝てないわ。」

「仕事行くつもり?」

「もちろん!」

「さっきは、三者面談あるから、休ませて貰うって言ってたじゃん。」

「そりゃ、大切な、娘だからさ、でも、行かなくていいってなったら、本来の仕事しないとね。」

和は、制服に着替えて、登校の準備を始めた。

弁当箱をカバンに入れる。

「母さんも、用意しなきゃ!」時計は7時半を回ったところ娘の成長に目を細める。

( あんたなら大丈夫だね。)心の中で呟いた。

「じゃ、いってきまーす。母さんも、くれぐれも転ばないようにね。昨日の雨で階段が濡れてるからさ。」

玄関のドアが閉まる。


私も、そろそろ出かける時間だ。

写真の娘に「ありがとう。」とつぶやき、外に出ると遠い山の上に虹がかかっていた。

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今はまだ修行中の身ですが、いつの日か本にしたいという夢を持っています。まだまだ未熟な文章ですがサポートして頂けたら嬉しいです。