『装甲騎兵ボトムズ IV クエント編』 作者:高橋良輔
終戦間際の作戦で、キリコ・キュービーがフィアナと遭遇したあの直後から、絶えず彼を追い、監視してきた男ジャン・ポール・ロッチナ。
彼は言った。
「お前はパーフェクト・ソルジャーだ。確証が得たいか? 行け、クエント星へ。そこに、お前の全てがある」
いよいよシリーズ最終巻である。
テレビシリーズの41話から52話までを描く本書では、パーフェクト・ソルジャーをも凌ぐほどの力を見せたキリコ自身の謎に迫る。
ロッチナに与えられた小型艇で向かった辺境の惑星クエント。
三千年に亘って、アストラギウス銀河全域に精強な傭兵を送り出してきた星。また、この星で採取できるクエント素子を用いた金属探知機は、高い索敵能力を誇る名高い物であった。
しかし、降り立ったキリコが眼にしたクエントは、単なる未開の星でしかなかった。砂漠と谷しかないこの星で、民は文明に見捨てられたかの様に、極めて原始的に生きていたのだった。
ここに自分にとっての何があるというのだ。
谷の底のクエント人の村でキリコが耳にしたのは、古からの言い伝えだった。
三千年前に神が現れた。そして民びとに、神の手によって生まれ変わり、星々を支配せよと宣言したという。
「お前は、手を加えらた民かもしれん」
村の者はキリコを指してそう言った、
更に深い地の底に己のルーツを求めたキリコが遭遇したのは、谷の奥底に姿を隠した超文明の末端であった。
そこで宇宙の支配者を名乗る存在の“意志”と接触し、キリコは、過去のクエントの超文明の歴史を知る。
三千年間、アストラギウス銀河の戦争の歴史を陰で操っていた神とは?
そして、神はキリコになにを呼びかけるのか?
前作『太陽の牙ダグラム』の主人公クリン・カシムは少年の純粋さを以てゲリラに身を投じ、コンバットアーマー ダグラムを駆ったが、主人公然とした熱血漢でもなく、また、視聴者から自己主張が弱い頼りない主人公と評価されがちであった。
高橋良輔監督にしてみれば、十代の少年なのだから、そりゃそうでしょうよ、というところであったのだが、まぁ、それならば次回作の主人公は強いワンマンヒーローにしてやろうじゃないかと着想したのがキリコ・キュービーであった。
何者の支配も拒む男。
そのキリコだからこそ、この銀河の絶対支配者としての座への誘いに応じるのか。
「俺の最後の戦いが始まるんだ。粉々に吹き飛ぶか、あるいは神の座につくかの」全てを得るか、地獄に落ちるか。
もう止められる者はいない。
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