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『小が大に勝つ兵法の実践』 作者: 中條高徳

戦前生まれの著者は、将校を目指していた陸軍士官学校在学中に第二次世界大戦の終戦を迎えた。
終戦した途端に日本軍部を非難し始めた世間に、価値観を失ってしまった著者は世捨て人の様になるが、やがて立ち直り就学、そして大日本麦酒株式会社に入社した。
米国の方針である財閥解体のあおりを受け、過度経済力集中排除法の為、会社は朝日麦酒株式会社と日本麦酒株式会社に分割、これが後のアサヒビールとサッポロビールだ。

分割後の二社は、キリンビールの台頭により凋落の道を辿る。シェアは逆転し、ラガーでなければビールではない、と言う市場が形成された。
さらに、販売網を拡げたいと泣きついてきたサントリービールに軒を貸したアサヒは、恩を仇で返されることとなる。

市場シェア率が10%を割り、「夕日ビール」と揶揄されるなか、営業本部長の著者は改革を進める。
まず、大規模なマーケットリサーチにより、或るキーワードに辿り着いた。
「コクがあって、キレがある」
コンセプトが固まった。
さらに、ビールは生であるべきだ、と言う信念を掲げ、周囲の懸念の眼をよそに、アサヒ生ビールの新発売と販売店へのアピールを始め、徐々に好評を得る。
そして1987年。遂にアサヒスーパードライが誕生する。
ドライ戦争の幕開けだ。

本書のなかで、著者は、巨大なシェアを占有する敵に対していかに挑んだのかを語っていくと同時に、高級指揮官としてどうあるべきかと言うことと、孫子、クラウゼウィッツやP・F・ドラッカーなどを例に挙げ、兵法の活用について説く。
リーダーに必要なものとは。
強い集団になるための秘訣とは。
決心のタイミングとは、その伝え方は。
商売を成功させる率を高めるには。

無骨な男の武勇譚としても面白い。


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