『アニメ監督で・・・いいのかな? ダグラム、ボトムズから読み解くメカとの付き合い方』 作者:高橋良輔
『太陽の牙ダグラム』は、『機動戦士ガンダム』のヒット、と言うより、『ガンプラ』ブームの煽りを受けて作られた。当時の日本サンライズ(現:サンライズ)は、スポンサーのおもちゃが売れるTVアニメを作ることこそが命題だったのだが、ガンダムの富野由悠季監督以外にも話を作れる演出屋は誰かいないか? ということで呼び出しを食らったのが、高橋良輔監督だった。
既に主役ロボットであるダグラムのデザインが決まっていた段階で、作・演出を依頼された高橋監督は、自身初のロボット物のキャラや舞台設定、ストーリー作りを進めた。
結果、『太陽の牙ダグラム』は、お話に政治を持ち込んだり、おっさんばかりが大量に登場して物語を進める「会議室アニメ」などと揶揄されつつも、ミリタリー色の強いメカデザイン群が受けたのか、ジオラマ志向のプラモファンにもてはやされたのか、プラモデルがバカ売れして放送も延長、全75話もの大作となった。
取り敢えず、おもちゃさえ売れれば何をやってもいい。そんな幸せな時代に於いて、次作では、顔の代わりに三連レンズ、まん丸頭で「スコタコ」とあだ名されたスコープドッグという量産機がメインメカという風変わりな作品『装甲騎兵ボトムズ』が制作され、その後も、『機甲界ガリアン』、『蒼き流星SPTレイズナー』など、ロボット物の原作監督としてのキャリアと評価を得ていくこととなる。
しかし、リアルロボット物の人気にも陰りが差す。レイズナーの後、10年余りをロボット物以外の作品作りに精を出すが、やがて、『勇者王ガオガイガー』、『ガサラキ』、『装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズ』など、またぞろロボット物へとの関わりが増えていった。
本書は、「メカとの付き合い」というものをメインテーマに、これまで掲げた作品毎に章を分け、それぞれどの様なモチーフからメカの設定、性格、ディティールなどを考えたのかを述べている。
勿論、メカ、つまりロボットを魅力的なものに観せる為には、その背景となる作品世界の構築も必要であり、結局ロボットと全然関係なさそうな話もあれこれと語られる訳で、高橋監督の作品制作への姿勢の全般が窺えるのだ。
「試行錯誤の顛末、思考の空回りやらが書き散らかされいる。ただ改めて、やはり充実した月日であったなと思う。それはやはり”つくる”という毎日であったからだろう。かつて我が師・手塚治虫が入社一年足らずの右も左もわからぬあたしらに向かって、「あんたもつくりてなんですから!」と一再ならず容赦ない叱咤の言葉を投げつけてくれた、あの公平さ、あの優しさ、あの厳しさに支えられたのは間違いない」
高橋良輔監督のアニメ制作のキャリアは、虫プロから始まったのだが、まえがきで書かれたこの言葉が監督のものづくりに対する根源なのであろう。
巻末には、監督と作品を共にした、メカニックデザイナー 大河原邦男、出渕裕のスペシャルインタビューも寄せられているが、高橋良輔監督について二人が共通して語っている言葉があった。
「人たらし」である。
良く耳にする話なのだが、どうやら高橋監督というのは、自分では何もしないのに、いつの間にか周りがみんな乗せられて頑張ってくれる。そして、出来上がった作品には何故か上手いことに、しっかりと「高橋良輔」色が出ていると言う。
稀代の人たらし高橋監督の仕事。出来れば、一作でも作品をご覧になってから読んでみていただきたい。
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