『資本市場とリスク管理』 作者: 藤井健司
本書では、金融・資本市場の成り立ち、金融仲介機能や、ドライバーであるデリバリティブ取引、証券化市場などを詳細に解説する。
一方で、リスク管理にも注視し、リスク管理標準としてのVaR(バリュー・アット・リスク)、バーゼル規制、ストレステストといった、それぞれの手法に於ける利点と共に、各々の限界についても解説している。
更には、21世紀に入ってから新たにクローズアップされたリスクとして、地球温暖化、脱炭素社会に向けた取り組みを取り上げ、これに対する金融・資本市場の役割についてにも言及する。
また、近年では、新型コロナ禍の影響として「現金への殺到」が起きたこと、ウクライナ侵攻による地政学リスクが発生した思ってもいなかった現象の表れ、2023年春には、かつてのサブプライム問題やリーマンショックともまた異なるシリコンバレー銀行を始めとする米国地銀の経営破綻、スイスのクレディ・スイス銀行の経営不安に伴うUBS銀行による救済合併などといった予想外な金融危機が起こっている。
リスク管理方法は、金融・資本市場が始まって以来、有事に際して都度見直されてきているにもかかわらず、金融商品だけの要因だけではなく、例えばSNSの発展といった様な時代性の変化と共にリスク自体も変化して実現化されてきているのである。
本書は、新たなリスクが広がっていくことを理解したい方にお薦め。なかなか珍しい専門性の高い一冊である。
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