『思い出はいつまでも』
TwitterのDM画面。
ピコン。
「ユウコです。
ミサ、今日は偶然の再会ってヤツだったね。
カズも会いたいって言ってるよ❣️
ねー、ねー、3人でZoom飲みしない?😃」
転換。
Zoom飲み。
ミサ「ふぅーん。二人は付き合って七年か」
ユウコ「うん、そう。カズはどうせ良く覚えてないだろうけどね」
カズ「そんなこと無いですー」
ユウコ「ほんとかな」
ミサ「いいな、仲良しだね」
カズ「中学校からだから。仲良いっていうか、なんていうか」
ユウコ「でも、この前、ミサとバッタリ会ったのはビックリしたなー」
ミサ「中学以来なのに、すぐ分かるもんなんだね」
カズ「中学校かー。懐かしいな。ユウコにミサ、あとマキとか。女子五、六人くらいでいつも一緒につるんでたよな」
ユウコ「親友同士だかんね」
ミサ「ふふ・・・」
ユウコ「ミサんちって、急に引っ越しちゃったよね。ねえ。なんでだっけ」
ミサ、固まる。
カズ「・・・あれ?回線悪い?」
ユウコ「ミサー」
ミサ「・・・覚えてないんだ・・・」
ユウコ「ん・・・?」
ミサ「ごめん。なんか気持ち悪くなっちゃった・・・」
カズ「飲み過ぎたかな。またにする?今度はマキも誘っとくよ」
ミサ「うん。またね。ごめんね・・・」
ユウコ「こちらこそー。なんかごめんねー」
ミサ、退出。
カズ「大丈夫かな」
ユウコ「うーん」
画面、フェイドアウト。
画面、フェイドイン。ミサ、カズ。
カズ「ミサ、ミサさ」
ミサ「なあに?」
カズ「言わないよな?言わないでしょ?」
ミサ、微笑し、「大丈夫」
カズ「頼むよ。マジでさ・・・」
ユウコ in
ユウコ「あ、もう来てたんだ」
ミサ「うん」
カズ「マキは?来るって?」
ユウコ「マキ、なんか今大変らしくて」
ミサ「なんかあったの?」
ユウコ「二、三日前から、バイト先のコンビニに、変な奴らが来る様になったんだって」
カズ「どういうこと?」
ユウコ「なんか、SNSで、マキの顔を使ったエロいアイコラ画像が流されてるらしくて。それで、アタシに会いに来て。ここのコンビニに居るよ、って」
カズ「なんだそれ。気持ちわりーな」
ユウコ「キモい男がいっぱい来るんだって。ああ、やだ。ネットってこわ」
ミサ「ふふ」
カズ「ん?」
ユウコ「何?笑ってんの?」
ミサ「懐かしいなぁーと思って」
ユウコ「ええ?」
ミサ「あんたたちさぁ、毎日言ってくれてたよね。キモい、キモいって・・・!
ユウコ「え?」
ミサ「あたしは、あの頃いつも苦しかった・・・あんたたちは、デブ、キモい、臭いって、毎日毎日あたしをいじめてたでしょう!」
カズ「え・・・親友だったんだろ?いつも一緒だったじゃん・・・」
ミサ「へえ。男子からはそう見えてたんだ・・・。冗談でしょ!先生に、掃除をサボった子のことを言ったら、次の日から、チクリって!それからキモいって!物を隠されたり、もう毎日毎日!」
ユウコ「じゃ・・・あんたがマキのアイコラを・・・?」
ミサ「ネットって、すごいんだね。驚いちゃった」
ユウコ「ちょっと!なんの恨みがあって」
ミサ「恨みだらけだよ!」
カズ、ユウコ「・・・!」
ミサ「あんたたちのいじめのせいで、ウチまで引っ越して!なのに、ユウコ、あんた、そんなの全然覚えてないって・・・ふざけんな!」
ユウコ「あっ・・・」
ミサ「こっちはやっと・・・やっと七年経って、他人と普通に話せる様になって来たって言うのに、あんたとまた会った途端!昔がぶり返して、もう、たまんないんだよ!」
ユウコ「ミサ、ごめん・・・その・・・ごめんなさい・・・」
ミサ「・・・いいの。あたしもあんたに非道いことしたから」
ユウコ「?・・・え?」
ミサ、笑みを浮かべて、「カズくん。横浜、楽しかったね」
ユウコ、カズ「え・・・」
ミサ「みなとみらいのホテル代、随分高かったんでしょう?」
カズ、ユウコ、凍りつく。
ユウコ「・・・ちょっと・・・あんたたち・・・」
カズ「いや、あの、ユウコ・・・」
ミサ「うふふふふ」
ユウコ「・・・・・」
ユウコ、退出する。
カズ「あっ・・・」
ミサ「あはははははははははは(次第に病的に)」
カズ「何がおかしいんだよ!」
ミサ、笑いを引っ張っててたが、「はーぁ」と終える。
ミサ、冷淡に、無感動に、「面白くもなんともないわ。じゃあね」
カズ「おい!」
SE「ピコン」
ミサ、スマホの着信に反応し、操作する。
ミサ「えっ・・・?」
ミサのスマホ画面。TwitterのDM画面である。
「死ね」
ミサ「?!」
スマホ画面、TwitterのDM。
SE「ピコン」
「キモい」
SE「ピコン」
「臭い」
SE「ピコン」
「息してんじゃねえ」
SE「ピコン」
「頼むから死ね」
そこから連続。
SE「ピコン、ピコン、ピコン、ピコ、ピコ、ピコ、ピコ、ピコ・・・」
「キモい、キモい、キモい、キモい、キモい、キモい、キモい、キモい・・・」
驚愕のミサ、その、慄く目に素早いズームアップ。
ミサ「ひいいいいっ」
暗転。
スーパー「思い出はいつまでも」
終わり
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